妹ちゃんとお母さんと――。
殆ど数日で、画材選びや配色、レイアウトや仮の絵本まではできた。元々あった感覚などが助けてくれたからだと思う。ストーリーを考えるのが長かったから、ここはすんなりといけた気がした。
しかし、そっからがいわゆるポ○モンの伝説ポケモンとの対決、コ○ン君の事件解決シーンだったんだ。
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「んーっと……」
指を組み、背伸びをすると同時に目がどんどん覚める。未だ薄型携帯から流れているのは、今はまっているアニメのOP曲。
大体のアニメはOP曲とED曲があり、アニメの最初に流れるOP曲はポップでテンションの上がりやすいものが多い。反対にED曲は、ゆったりとした曲が多いように感じる。
OP曲がポップなのは何となく理由がつく気がするけれど、ED曲は何でゆっくりした曲が多いのかな? 気になる。
そんなことを考えながらも、私はベッドから足を下ろした。十二月も後半となれば、寒さは半端じゃない。布団の上に乗せておいたカーディガンに手を通し、もこもこの靴下を履く。そして某笑顔動画から好きな曲を流した。
やっぱりテンポが速いとテンションが上がる! あと、イケボの人とか!!
携帯を再度見ると、表示は七時となっている。兄貴を起こすには早過ぎるかな。
曲の再生をやめて携帯をポケットに突っ込み、スリッパに足を入れた。スリッパは白のうさぎ。くりくりっとした目が私を見つめている。
うーん、やっぱりうさぎは可愛いねっ! 可愛いは正義だよ、やっぱり。
私が朝のテレビ番組を見ていると、兄貴がリビングへやってきた。目に出来ていた隈は取れていない。
絵本を描き出して兄貴は変わった。いや、変わってしまったと言った方が正しい。
最初の方はすらすらと進んでいたのだけれど、最近は納得のいく絵が描けないらしい。たまに紙を破る音が私の部屋に聞こえてくる。
「朝飯……」
兄貴はぶっきらぼうに呟くと、私が座っているソファーの一番端に腰をかけた。少し前より痩せた気がする。こう言う痩せ方は、嫌だ。
今のは「朝ご飯をつくって」と言う指示だ。いつもはお母さんがつくっているのだけれど、今日は仕事で早くから出て行くと昨日言っていた。そのとき、お母さんはいつもの笑顔で、
「いつも通り、お兄ちゃんと接しなさい。お兄ちゃんは今、変わろうとしているの。でもね、私たちの態度は変わっちゃいけないのよ?」
私は「何で?」と訊き返した。
「それはね?――」
驚いた。お母さんがそう考えていたことに驚いた。
それと同時に「そうしよう」と思った。お母さんに言われたからじゃない。
私がそうしたいと思ったから。
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妹がつくってくれた朝飯を食べ、また自分の部屋に戻る。こんな生活が何日も続いていた。
もう、『小学生以下限定、絵本祭り!』まで二週間をとっくに過ぎていた。
けれど良い絵は描けない。こんなに躍起になって描いても良い絵にならないの何てわかっていた。描いても描いても納得のいく絵にならない。
絵は努力がものを言う。今まで、努力をしたと言う感覚で絵を描いたことがなかったから、これは生まれもって感性が良かったのだろう。
しかしそれは少しの差だ。努力が足りなければ、努力をした奴には勝てない。
どうすればいいかわからない。勉強も適当にこなしてきた。別に点数が悪い訳でもなかったし、努力は程々にしただけだった。
「あー、そうか。努力してこなかったから、こうなったんだ」
しーんと静まる部屋の中に、俺の声は溶けていく。
現状は変わらない。
でも、変えなければ現状は変わらない。
けれど、現状を変えなければ俺は変われない。
もう、矛盾しているかもわからない。
俺はどうすればいいんだ……?
力のない手からカラン、と鉛筆が落ちた。