帰・永遠にしりとりしていたい!
私、三原カナは、特別な才能があるわけでもなければ特技があるわけでもない普通の女子高校生。
隣の席の島地くんのことが好きなんだけど、なんだかんだでまだ想いを伝えることはできていなくて、ありふれた友達みたいな関係を続けているんだ。
「そういえば、私たちって、いつから隣の席なんだっけ?」
「ごめん、思い出せない」
そ、そ、それって……もう始まりなんて思い出せないくらい、島地くんの人生には私が当たり前のように存在してるってことォ!?
……ちょっと照れちゃう。
「でも結構長い気はするよね、三原さんとの付き合い」
「うん!」
「しかもずっとしりとりしてる」
「生きがい!」
唐突に視線が重なる。
何だか恥ずかしくなって、慌てて目を逸らした。
でも彼は気にしていないみたい。
「しりとりする?」
「ぜひぜひ!」
窓枠が揺れるくらいやる気に満ちた声で返事をすれば、今日もまたしりとりが始まっていく。
「じゃあ私から……熱血!」
「つくね、かな」
「鼠色!」
「ロバ、かな」
「婆さん!」
勢いよく言ってから、後悔。
「終わったよ」
言われてしまって、顔が真っ赤になるような気分。
「ごめん……」
「もう一回始めればいいよ」
海の深いところまで沈み込みそうになっていた心が、かけてもらった言葉によって一気に天へと突き抜ける。
「そ、そうだよね!? いい!? よし、始める!!」
気を取り直して。
「哀愁!」
「馬、とか」
「麻婆豆腐!」
「二股、とか」
早速しりとり再開――!
「畳!」
「ミジンコ、だね」
「小判集め!」
「目玉、だね」
「マインドフルネス!」
「すみれ、とかはどうかな」
「レバー!」
「ババ抜き、とかはどうかな」
今度こそ失敗はしない。
せっかくの彼とのしりとりだ、あっさり終わらせる気はない。
いけるところまでいってみよう。
「気温の変化!」
「カバ、かな」
「もう婆さんの罠にははまらない……バンダナ!」
「夏日、かな」
「ビンタ禁止!」
「しまうま、とか」
「マスク!」
「熊に注意、とか」
始まりが思い出せなくても大丈夫。だってこの繋がりはその程度のことで揺らぐような甘いものじゃないもん。それに、もうあまり思い出せないってことは、それだけ自然な形でたくさんの時間を一緒に過ごしてきたってこと。だから悪いことじゃない、って、そう思うんだ。
「怖いよね熊……で、ええと、い、かぁ……居間!」
「舞妓さんの集まり、だね」
「りんごチップス!」
「すき焼き味のスナック菓子、だね」
「指揮官が真顔!」
「おじいさんだけど笑顔、かな」
「また、お……じゃあ、おにぎり!」
「理不尽ないちゃもんをつけてくる客、かな」
「悔しがる!」
「ルビーのアクセサリー、とかどうかな」
「うーん……じゃあ……リコッタチーズ!」
「ズッキーニ、とかどうかな」
「にぼし!」
私たちの関係、しりとりで紡がれていくこの繋がりには、終わりなんて来ないよ。
◆終わり◆




