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空島の雨と地上の作物  作者: nekorovin2501


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3/3

第3話 追手と秘密の能力

雨は容赦なく叩きつける。

俺たちは泥濘んだ道を駆け、畑の奥にある古い地下倉庫へ向かった。

ここは俺が一人で掘って作った隠し部屋だ。

表向きは「余った作物の貯蔵庫」だが、実際は俺の秘密の実験場でもある。

扉を開け、セラを中に入れる。

中は狭いが、木の棚に干し作物が並び、壁際に小さなベッド代わりの藁束がある。

魔力灯を一つ灯すと、薄暗い空間がぼんやりと照らされた。

「ここなら……しばらくは隠れられるはずだ」

俺は息を切らしながら言った。

セラは壁に寄りかかり、震える手で銀髪を掻き上げた。

「本当に……ありがとう、リク。

でも、追手は執念深い。私の魔力を追跡できる術を持っている」

その言葉通り、外の嵐はますます激しくなっていた。

雷が連続して落ち、まるで空全体が俺たちを探しているようだ。

俺はセラの隣に座り、静かに尋ねた。

「教えてくれ。

空島が天候を操っているって、本当なんだな?

地上の異常気象は、全部あいつらのせいか?」

セラは目を伏せ、ゆっくり頷いた。

「……本当よ。

空島――私たちは『ウィンドリア』と呼ぶ――では、古来より『天候調整院』という組織が、地上の気候を管理している。

戦争の後、地上が荒廃しないよう、雨を降らせたり、干ばつを防いだり……

でも、それは表向き。

実際は、地上の作物を意図的に制限して、依存関係を作っているの」

俺の胸に怒りが込み上げる。

「つまり……俺たちの村が苦しんでいるのは、意図的なものだってことか?」

セラは小さく首を振った。

「全部じゃない。

調整院の幹部たちは『均衡のため』って言うけど……最近は、もっと私利私欲が強い人も増えてる。

私みたいな下級調整士は、失敗したらすぐに処分される」

「だから、お前は落ちてきたのか」

「……そう。

儀式で魔力が暴走して、結界が破れた。

そのまま地上へ……

追手は、私が秘密を漏らすのを恐れてるの」

その時、倉庫の外で足音がした。

重い、複数人のもの。

「見つけたぞ……落ちこぼれのセラフィーナ」

低い、冷たい声。

男の声だ。

セラの体が硬直する。

俺は立ち上がり、扉に耳を寄せた。

外には、三人の影。

背中に薄い翼のような膜を持ち、手に青白く光る杖。

空島の追手だ。

「魔力の痕跡はここだ。

出てこい、セラフィーナ。

大人しく捕まれば、痛い目は見せない」

俺はセラに囁いた。

「ここにいろ。俺がなんとかする」

「だめよ! リクは関係ないのに……」

「関係あるさ。

お前を助けた時点で、俺も巻き込まれてる」

俺は深呼吸をし、【作物成長促進】の魔力を集中させた。

今まで隠していた、もう一つの応用技――

【植物操作】。

扉の外、畑に植えていた蔓作物が、俺の意志で動き出す。

地面から急激に伸び、追手たちの足を絡め取った。

「なっ、何だこれは!?」

「地上の植物が……!?」

混乱する追手たち。

俺はその隙に扉を開け、外へ飛び出した。

雨の中、三人の男が俺を睨む。

リーダー格の男が杖を構えた。

「地上のガキか……セラフィーナを匿うとは、命知らずだな」

俺は笑った。

「悪いな。

俺も、ただのガキじゃない」

そして、俺は初めて――本気で能力を解放した。

【作物成長促進・最大出力】

畑全体が震え、地面から巨大な蔓と根が爆発的に伸び上がる。

まるで生き物のように、追手たちを包囲した。

「な……これは魔法か!? 地上に、そんな力があるはずが……!」

リーダーが杖を振り、雷を落とそうとする。

だが、俺はさらに魔力を注ぎ込む。

蔓が杖を絡め、雷を逸らす。

さらに、近くの作物が実を膨らませ、爆発的に種を飛ばす。

種は空気中で小さな爆発を起こし、追手たちを怯ませた。

「くそっ……撤退だ!

こいつはただ者じゃない!」

三人は翼を広げ、空へ飛び上がろうとした。

だが、俺の蔓はすでに空を覆うほどに成長していた。

「逃がさない」

俺は最後の魔力を振り絞り、蔓を鞭のように振るった。

一本がリーダーの足を捉え、引きずり下ろす。

「ぐあっ!」

地面に叩きつけられた男は、動かなくなった。

残りの二人は慌てて逃げ去った。

嵐は徐々に収まり、雲の渦が解けていく。

俺は息を荒げ、膝をついた。

魔力の枯渇で、視界がぼやける。

「……リク!」

セラが倉庫から飛び出してくる。

彼女は俺を抱きかかえ、涙声で言った。

「すごい……あんな力、地上の人にあったなんて……」

俺は苦笑した。

「まだ、秘密だぞ。

村に知られたら、俺は終わりだ」

セラは頷き、俺の手に自分の手を重ねた。

「私も……秘密を守る。

でも、リク。

これからは、一緒に戦おう?

空島の真実を、地上に伝えるために」

俺は静かに頷いた。

「ああ。

まずは、この村を救うことからだ」

雨が止み、月が顔を出した。

空島の影が、遠くにぼんやりと浮かんでいる。

――次の一手は、俺たちが決める。

第3話 終わり

(次回、第4話 「村の危機と新たな仲間」)

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