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第37話 ああ、素晴らしき我が主様

「以上が、今回の裁判の顛末です。結果としてはロキシア様のお望みの通りになられたかと……」


 王国内務調査室の室長室で、部下が裁判の顛末を教えてくれる。

 殆ど想定通りに事が進んで嬉しい限りですけど、最後にライナスが暴走したのは最悪ですね。

 フィル様にもしもの事があったらと思うと、心臓が止まりそうになってしまいます。

 ……まあ、万が一の際もフィル様なら簡単に対応できるとは思っていましたが。

 

「ライナスはどこに幽閉していますか?」

「王都の地下牢です。衛兵隊と協力して厳重な警備を敷いています」

「わかりました。……それにしても、ライナスが暴走するのは余りにも想定外でした」


 もう少し理性があると思っていた。

 完全に私の読み違いですね。


「ですが、フィル様が華麗に解決なされました! 王都での評価も上々ですし、最高の結果ではないですか?」

「そうですね、今やこの国の英雄はライナスではなくフィル様と言っても過言ではありません」

「わたし、なんだか誇らしいです!」


 この子も同じ孤児院の子だから、フィル様が活躍して嬉しいんだろう。

 顔をほころばせて喜んでいる。

 ……普段なら内務調査室の人間が態度を顔に出すのは叱る所ですが、今日くらいはいいでしょう。


「ふむ……。もっと王都内に――いえ、国中にフィル様の活躍を広めるべきかもしれませんね」

「では、国中の吟遊詩人に今回の件をうたわせましょう」

「ええ、そのように手配してください。……出来るだけフィル様の活躍を派手に表現してくださいね」

「もちろん!」


 そう言って、あの子が部屋から出て行った。

 本当に、誇らしい事です。


 

 それにしても、早めに対処出来て本当に良かった。

 フィル様がライナスに狙われている情報を早めに掴んでおいた甲斐がありました。


 ……もしかしたらこういう事態を想定して私をフィル様のお側ではなく、王都に置いたのでしょうか?

 孤児たちの中で一番優秀であると何度も評価してくださった私を……。


 だとすれば側に置かれているリゼやノノ、ガイルよりも私の方が評価されているという事ですよね。

 ええ、そうですよね。

 であれば今後も全力で取り組ませていただきます。

 この命に代えても、フィル様の御身を守り外敵から排除するために……。

 

 ……いや、違う?

 まさか、フィル様はそれよりさらに上の……。

 王都どころか、国全体を支配するために……?

 だから、孤児院出身者を大量に王都の官僚組織に送り込んでいる?

 

 そう考えればフィル様の行動が全て理解できる。

王立騎士団の将軍であるルイーゼ様、教会の全てを掌握したカノン様、そして王都の官僚組織の中で民間人が採用されない財務系官僚の有力者サヴォイ家の長女レーナ様。

 全員、フィル様に命を捧げられる程に愛している……。

 フィル様が友諠を結んだ女性は全員……。

まさか、まさか……!

 フィル様は、この国そのものを欲している……?

 

 今回の裁判の件も、英雄であるライナスを追い落とすための……?

 

 で、でも! 

 もし私が気づいていなかったら……?

私のここまでの行動も全てフィル様の想定通りと言う事……?


寒気がするほどの恐ろしい智謀。

もしかしたら、私を救い出してくれたあの日から考えて行動していたのかもしれない……。

 ああ、素晴らしい!

 素晴らしいです!

 

 やはりフィル様こそ私の主にふさわしいです……!


 あの日……あの私を救い出してくれた日から今日までの出来事が、私の頭の中に蘇っていく。

 そのどれもが素晴らしく、甘美な記憶だった。


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