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第36話 因果応報だよね?

「俺の負け? お前何言ってんだ?」


 ため息交じりに話すライナス。

 うるさい、喋るな。

 今から後悔させてやるから、黙ってろ。


「【解除】」


 俺は【絶対凡人領域】を解除する。

 これで、どんなスキルでも使えるようになった。

 ……もちろん、相手もだけど。


「なんだよ詰まらないな、やっぱ諦めるのかよ」


 ライナスが再度スキルを発動させようとして、魔力を溜めている。

 だが、そのちょっとの時間が命取りだ。


「違う、お前はここで死ぬんだ。自分の罪によってな」

「ああ?」


 息を吸い、覚悟を決める。

 さあ、これで終わりだ!!!


「カノン様!!!!!」

「どうなっても知らないわよ!」


 俺の身体から、憎悪が溢れ出す。

 世界が憎い。

 全てが憎い。

 だが今、憎しみの対象は一つに絞られた。

 目の前の“父親”に。


「あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”」


 声が聞こえる。

 オゾマシイ赤ん坊の声。


「な、なんだ……? な、なんなんだよ!?」


 俺の身体に残された、“コトリバコ”が産んだ呪い。

 狂った女の堕とし子。

 カノンによって再び覚醒されたその呪いが、俺の血を介して身体に刺さった剣を伝いライナスに向かってにじり寄っていく。

 剣は黒く染まり、ライナスの手もどんどんと黒くなっていく。


「くそ、離せ!」

「はっ、死んでも嫌だね!!」


 この手だけはたとえ何があっても離さない。

 これが俺の唯一の勝機なんだ。


「あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ” あ”あ“あ”あ”ぁ”ぁ」


 赤ん坊の声がどんどんと大きくなる。


「なんで、なんでだよ!? なんで俺に呪いが……!」

「当然だろ? これはお前に対する呪いなんだから」

「ど、どういう意味だよ!」


 正直に言えば、これは賭けだった。

 この呪いを産んだ狂った女は、一体だれを一番恨んでいたのか。


 自分を壊した取り巻きの騎士?

 それとも呪いを祓おうとした俺たち?


 いや、違う。

 きっと本当に心の底から恨んでいたのは、自分を捨てたライナスなんじゃなかろうか?

 

 だから俺は、そこに賭けた。

 ライナスの加護は、あくまでも“全体攻撃の無効化”だ。

 カノンの呪いが効かないのは、呪いが自分を対象にしたものではなく世界を対象にしたものだからだ。


 だがこの呪いはライナスを対象にしている。

 ライナスを感じた瞬間、そう言った呪いに”変質“した。

 だから、この呪いだけはライナスにも効くのだ。


 本来ならば、俺に残ったこの呪いはカノンでも祓えない。

 でも剣を通して疑似的に呪いの対象者と繋がっている今ならば、カノンが呪いを刺激するだけでライナスを呪えるかもしれない。

 その考えは、どうやら正しかったようだ。


「この呪いはな、お前が遊んで捨てた女の憎悪が産んだんだよ。お前が話した“元の世界の知識”によって産まれたんだ」

「ふ、ふざけんな……!」

「残念ながら事実だ、報いを受けろくそ野郎」

「ぐ、ぐっ……!」


 ライナスが、苦しそうに呻く。


「ふざけるなよ……! 悪役貴族のお前はなぁ、俺にここで断罪されないとダメなんだよ! ここで俺が……! それこそがこの世界の歴史、この世界の正しい姿なんだ!!!」

「そうだな、その通りだ。俺もそう思ってずっと行動してた。でもな、それじゃあダメなんだよ。この世界はゲームじゃない、現実なんだ。それが未だにわからないお前にこの世界は救えない」

「な、なにを……! ぐはっ……」


 ライナスが余りの苦しみに膝をつく。

 それと同時に、俺の身体から“異物感”が消える。

 

「フィル・クーリッヒ、終わったわ」

「そうか、よかった」


 俺はライナスの腕から手を放す。

 ライナスも又、剣を放し苦しそうに床を這いずり回っている。


「ぐ、ぐぁぁあぁああ!? た、助け……!」

 

 ライナスは真っ黒に染まった血を吐きだしぐったりと倒れる。

 ……死んだのか?


「……フィル、歯を食いしばって」

「え?」

「……ふん!」

 

 い、痛っ!!!

 な、何事!?


「『ヒール』」


 リゼが俺に刺さった剣を抜き、治癒魔術をかけてくれる。

 ……そういえば刺さったままだったな。


「ありがとう、リゼ」

「……どういたしまして」


 リゼの頭を撫でると、いつものように静かに返事をしてくれる。


「これは……死んでるの?」


 レーナがライナスを見降ろして呟く。


「いいえ、まだ呪い共々生きてるわね。ボロボロだけど」

「……殺す?」

「駄目ね、殺せば“あれ”が王都のど真ん中で暴れだすわ」


 ……よくよく考えたらそうじゃん。

 ライナスを殺すのに必死過ぎてなんも考えてなかった……。


「確保しなさい!」


 ルイーゼが生き残った衛兵に指示を出す。

 まあ、取り敢えず身柄を拘束するしかないよなぁ……。


「フィル、ごめんね役に立たなくて」

「いやいや、ルイーゼと衛兵隊が時間を稼いでくれたからどうにかなったんだよ」

「ホント、フィルは優しいね」


 ルイーゼは笑みを浮かべて俺を見つめる。

 ……そう言えば、ルイーゼも俺の事好きなんだよな。

 ……というか、この場にいるみんな。


 やばい、想像もしてなかったからなんかどう反応すればいいのかわからん。


「それで、“それ“を確保してどうするの? 暴れだしたら旦那に任せるの? ……そんなの絶対に反対よ」

「安心してください、軍の保有する犯罪者用の手枷ならスキルだろうが魔術だろうか全部無効化できますので」


 ご都合主義アイテムきたー!

 あったなそんなの。

 原作でも出てきたわ。


「そう、ならいいけど」

「では、ボクは移送してきます。フィル、急いで病院に行ってね?」

「ああうん、そのつもりだよ」


 正直出血しすぎてもうふらふらだ。

 ギリギリ急所は避けられてたから内臓は傷ついてないはずだけど、それでももう限界に近い。


「ねえあなた、帰ったら色々しっかりお話しましょうね」

「そ、そうですね……」


 なんだろう、口調は優しいのに。

 なんというか、こう……浮気を問い詰められてるような感覚に。

 ……気のせいだよな?


「教会で最高の医療スタッフを用意するわ」

「助かります、カノン様」

「いいのよ、後でじっくりお話しましょう? ええ、2人きりでじっくりと」


 カノンが耳元で囁くように喋る。

 いやまじで、どうしよ……。


「……わたしは着いて行く。護衛は、いるでしょ?」

「ああ確かに、そうだね」


 戦えないし、護衛は必要だろう。


「ならあたしも、旦那の付き添いに」

「……絶対お客さんたくさんくると、思う」

「うっ、確かに……」


 こんな事件があったんだ。

 当然、たくさん人が押し寄せるのは想像に難くない。


「わかったわ、でもお見舞いには行くから」

「うん、待ってるよ。はなしは、そのとき、に……」


 駄目だ、もう意識が……。

 俺は体力の限界を迎え、静かに意識を手放した。


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