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第31話 レーナ⑧ 順風満帆異世界ライフ

 結婚式が終わり、王都拠点用の質素な屋敷で一人酒を飲む。

 静かで優雅なこういう時間って、なんか大人になった感じがしてかっこいいよね。


 この世界に転生してきてもう10年以上の月日が経った。

 ここまでの俺の動きはまさに完璧、計画通りと言えるだろう。

 【簒奪】で冒険者になった時用のスキルをいくつも溜めれたし、4つほど“切り札”として使える性能のスキルも持ってる。

 

 そして、色々不都合もあったけどルイーゼ、カノン、そしてレーナ。

 作中に登場するメインヒロイン達はみんな生かして、且つ作中と同じポジションに置くことが出来た。

 主人公君も順調に功績をあげてるみたいだし、順風満帆って感じ。

 

 ……まあ、正直レーナに対してテンションが上がり過ぎて格好つけすぎてるなーって思うこともあるけど。

 ……レーナと言うか、正直原作に出て来るメインヒロイン相手にはつい格好つけてしまうけど。

 でも大丈夫でしょ、レーナはライナスの事が好きなのは間違いないわけで。

 こんなぽっと出の悪役貴族を好きになるなんて、そんなのあり得ない。

 

 あの2人は子供のころから仲良しで、ライナスが死ぬ気で訓練して英雄になっていく過程を陰で支え、そんなライナスのひたむきなところにレーナが惚れていく。

 本当にいじらしくて最高に推せる2人なんだ。

 だから、俺がどれだけ格好つけようとこんな俺にレーナがNTRれるわけがないという確固たる自信がある。


 原作におけるレーナ√は本当に名作だから、全世界の人にやって欲しい。

 俺はレーナ編が好きすぎて発売されてから3ヵ月おきにプレイしてた。


 とにかく、俺が推しヒロインの前で格好つけすぎて若干痛いってこと以外なんの問題も無いわけだ。

 ……いやホント、最近侍女とか孤児院の子たちの視線が痛くてやばい。

 絶対ドン引きされてるよ……。


 ……この貴族生活が終わるのも、ちょっとだけ寂しいな。

 

 孤児院の件は、自分たちで生活を維持できるくらい菜園を大きくしたし貯金もある程度溜めたから問題ないと思う。

 ロキシアを始めとした優秀な子たちを王都の中央に送ることもできてるし、最悪そっち方面のバックアップもあるはずだからそこは問題ない。

  俺の誇りは、趣味で始めた孤児院がここまで大きくなったことと、子供たちを誰も殺さずにここまでこれたことだ。


リゼは俺が消えれば騎士団に入れるだろ、ルイーゼにも何かあったら頼むって言ってあるしそこ問題ない。


 カノンは……なんか原作より上手く教会を治めてるからなんの問題も無いだろ。

 

レーナは、目の前に推しヒロインが寝てるのに何も手を出せないのが本当に辛すぎるけどなんとか鉄の意思で耐え抜いたおかげもあってまだ傷物になってないし、問題なくライナスとくっつくだろう。


本当に全てうまく行っている。

俺なりに出来ることは全部やって頑張ったよな?

結婚式も終えて、後はもうライナスが動けば万事解決。

さてさて、明日も早いしそろそろ寝ますか。


「フィル様! フィル様!!」


 扉を叩く音と共に、叫び声にちかい大きさで俺を呼ぶ声が聞こえる。

 な、何事だ!?


「ど、どうした……って、ロキシア?」

「フィル様、ノノが……!」


 普段冷静なロキシアの顔が青くなり、汗がダラダラと流れている。

 どう考えても尋常じゃない事態だ。


「ノノがどうかしたのか?」

「王都警備隊が、血まみれで倒れているノノを発見したと……」

「な、なんだと!?」


 血まみれって、そんな……。


「ぶ、無事なのか?」

「……今の所、呼吸はまだあります」

「呼吸はって……」


 頼む、無事であってくれ。

 取り敢えず、今すぐノノの所に……。


 ――あれ、ちょっとまて。


「ロキシア、レーナはどうした?」

「……それが、行方不明との事です」

「な……!?」


 レーナが、拉致されたってことか!?

 いやいや待ってくれ、こんなイベント絶対に原作では起きてないぞ?

 な、何がどうなってるんだ……?


「治安部隊は動かせないのか?」


 ロキシアは王都内務省で治安部の部隊長をしている。

 ロキシアならすぐにでも犯人を捕まえられるかもしれない。


「既に動かしています……一応、目星もついてます」

「流石だな! で、その目星ってのは?」

「王都の西門付近にあるヘルメスト教会に不審な男が女を抱えて入っていったと……」

「じゃあそれで確定じゃないか」


 ここまでわかってるのか……。 

 王都警備隊の情報網、どうなってるんだ……?


「ただ、それ以降の消息は掴めていませんし、何より教会に警備隊が押し入るわけにも……」

「……それもそうだな。わかった、俺が向かう。後でカノン様に謝罪すれば多分どうにかなるだろ」

「そうですね、主にこのような危険なことをさせるのは嫌ですが、今回ばかりは……」

「ああ、我慢してくれ。もしかしたら俺たちへの襲撃はまだ続くかもしれない。リゼを残すからノノを頼む」

「かしこまりました」


 ……よし、方針は決まった。

 レーナを奪い、ノノを……俺の家族を傷つけるゴミに容赦はしない。

 必ず報いを受けさせてやる。

 地の果てまででも追いかけて、必ず殺す。


「ノノはその……助かるよな?」

「王都中の医療班に声をかけていますので……」

「頼む、どんな代価でも払う。なんとしても頼む」

「全力を尽くします」


 ああ、くそっ。

 ロキシアって本当に嘘がつけないよな。

 こんな状況でも、“必ず助かる”って言ってくれない。

 ……本当に予断を許さない状況なんだろうな。


 でも今は、俺がやれることをやるだけだ。

 悲観的な事は考えない。

 必ずレーナをを救い、犯人を殺す。

 今考えるのはそれだけでいい。




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