PROLOGUE:HIROSHIMA LOVE STORY
ちょうど10年まえかな。あの頃の私は高校生で無邪気だった。でも、そんな自分だったからこの物語は始まったのだと想う――
「猪木君?」
県外から来る親族を平和公園の噴水前で待っていた。
そこで私と同じように誰かを待っている彼と出くわした。
彼はやんちゃな格好でしゃがみこんでいた。私の声にハッとして上を向く。
「小野さん?」
「やっぱり! 猪木君だったね! 大きくなったね!」
「今も周りと比べて大きくなんかないけどな。どうしたの? こんなところで?」
「平和資料館をみたいって従姉の姉が県外から来るって約束をしていて」
「へぇ。相変わらず真面目だな」
「猪木君は?」
「え、その、なんていうか……彼女と待ち合わせ」
「へぇ! 彼女できたの!」
「まぁ、その、小野さんのオネェさんと同じで県外のコでさ、平和資料館を案内して欲しいって」
「そうなの! 奇遇ね! よかったらご一緒しない?」
「え? ああ、まぁ、メールして聞いてみるわ」
彼は岡山から来る彼女にメールした。するとそこで彼女が体調を崩してしまい、約束が流れてしまった事を確認した。何の偶然だろうか? 私の従姉もその昨晩、広島に来て食べた牡蠣にあたってしまって体調を崩した。宿泊中のホテルで療養していると連絡が。
「ははは……とことん偶然だな」
「あの、せっかくだから一緒に入ってみる?」
「え?」
そんなワケで私は彼と広島平和記念資料館に入館する事となった。彼とここに来るのは小学生以来? いや中学生の時もそんな機会があったかな? もっとも、彼と2人でというのはこれが初めてだった気がするけど。
私たちは小学校と中学校が一緒だった。近所っていう近所ではなかったけども、同じクラスになることが中学3年を除く7年連続で続いた。彼は小学生の頃から熱血球児で私はバレーに熱中していた。それは高校生になってからも同じようで、彼は甲子園を目指して頑張っていると話す。だけど何だろう。私の知る彼よりも目に映る彼は凄くおとなしい気がした。それでも私は「懐かしいね」と一方的に昔話で花を咲かせる。最初は真面目に第2次世界大戦があった事から原爆投下にまつわる話をしていたものだけど、途中から昔と今の自分たちを語り合うものになった。会話の主導権を握っているのはとっても無邪気だった私。
それから私は私のわがままで広島こども文化科学館へ彼と一緒に行った。
ずっとはしゃいでいた。無表情気味の彼もちょっと笑うように。
そのまま歩いて街にあるマックで食事を済まして別れることに。別れ際、彼とメールアドレスを交換する事にした。「彼女さんによろしくね」と私はさりげなく言ったけども、彼は「女子と遊んでいたなんて知ったら怒られる」と苦笑いして返す。
ああ、無理に付き合わせちゃったかなと思ったりもした。
次の日、送ったメールが届かないのだもん。
そんな10年まえの事を夢にみた。
目を覚ます。
もう家をでる時間か。
鏡のまえでちょっとキメポーズをして職場へ向かう。
この日また彼に出会うと知らずに――
∀・)劇団になろうフェスで恋愛作品を書きたいという事で書き始めました(笑)
∀・)主演が山田エヴァ万桜さん&江川傑です(笑)
∀・)お気軽に楽しんでください☆☆☆彡