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魔法授業と浄化

魔法授業の見学の為、演習場に向かう。普通科の魔法講師に挨拶をして、演習場の隅で見学させてもらう。


なんだ?この授業は。魔力の練り方も教えずに、いきなり魔法を行使させるとか。暴発したらどうするんだ?


「どうなさいました?」


「いえ。少し危険だな、と」


「あの講師はナハス(赤銅級)の冒険者なのです。他の科では、その、生徒に見下されてしまって」


さもありなん。


「あの、ドゥルーヴ様ですよね?手伝っていただけませんか?」


魔法講師に頼み込まれた。


「良いのか?それ」


「学長の許可なら出てます」


「いつの間に……」


仕方がないから、講師に回る。


「魔力の練りが出来ていない生徒を引き受けます。まずは選別して良いですか?」


「お願いします」


「臨時講師のドゥルーヴだ。良いか?今から胸の前にマジックボール(魔法球)を作って維持してくれ。出来なくても良い。後でちゃんと教えるから」


生徒達がワイワイ言いながら、マジックボール(魔法球)を作る。作れない生徒が8名、維持出来ないのが7名、維持出来ているのが11名か。マジックボール(魔法球)を作れない生徒と維持出来ない生徒を集めて、まずは座る。


「こちらの8人に聞きたい。何が難しいと感じた?」


まずは作れなかった生徒達だ。


「魔力が分からないっていうか」


「上手く集まらないです」


「出来ている気はするんだけど」


「まずは魔力を感じてみようか。8人は手を繋いで」


端の2人は俺と手を繋がせる。


「これから俺の右手から魔力を流す。それを左へ意識して持っていってくれ」


少しずつ魔力を流す。途中で詰まってしまった魔力管閉塞症の2人を除いて、全員が魔力を流す事に成功した。


魔力管閉塞症の2人の処置を行う。王女と同じ様に、魔力管を広げていく。処置が済むと、2人もマジックボール(魔法球)が作れるようになった。マジックボール(魔法球)を作る事を意識してもらう。維持は考えなくて良い。


「お待たせ。じゃあ、マジックボール(魔法球)を作ってくれ」


維持が難しい生徒達の方を向いて、1人1人を注意しながら見て回る。魔力を一定に流すのは案外難しい。このマジックボール(魔法球)の維持が魔力コントロールの良い訓練になる。


「よぉし。毎晩寝る前に魔力コントロールをしてくれ。魔力コントロールは全ての基本だ。もちろん、普通に魔法を使うのも良い。ただし、周りに気を付けてな」


笑い声が起きた。


「ドゥルーヴ様、ありがとうございました」


「様なんて付けなくても良いですよ」


「しかし、ドゥルーヴ様はプラチナム(白金級)で……」


「お気になさらず。貴方はいつも普通科を?」


「貴族科、淑女科、騎士科、魔導科なんて、とてもとても。分不相応です」


「そんな事はないと思いますが。あぁ、そうだ。先生もさっきの魔力コントロールを寝る前にやってみてください。楽しみが増えますよ」


「楽しみですか?」


「魔法を使う時の無駄な魔力消費が減ります」


「そんな効果が……」


昼を挟んで貴族科の魔法授業見学する。こちらの講師は元魔法省の職員。さすがに教え方が上手い。ただし、貴族科でも魔力コントロールは教えていなかった。自主的にやっている生徒は居るが。


「いかがですか?」


グレイス女史が聞く。


「さすがですね。俺も勉強になります。ところで、あの生徒達は?授業を受けていないのですか?」


数人の生徒が見学していた。


「彼らは、魔法適正無しと判定されてしまったのですよ」


「あぁ、そういう……」


サイモンもそうだったが、魔法適正が無くても魔法は使える。俺が魔物相手に使う魔弾もそうだし、キャンセル(魔法破壊)も無属性魔法だ。身体強化もそうだし、危険察知、気配察知も出来る。他にも色々とあるが、騎士は身体強化以外はほぼ使わないし、貴族の役に立つ魔法は少ない。危険察知、気配察知は有用だと思うんだが。


「彼らにも使える魔法があるのですか?」


「ありますが、貴族様は使わないでしょうね」


ピクッと授業に参加していない生徒が反応した。どうやら会話が聞こえていたようだ。


意外にも、というべきか、王子と王女は貴族科に居なかった。第4王子と第3王女だから違う科に行っているのか?第3王女は淑女科だろうか?


魔法の授業の見学を終えて、礼を言ってアカデミーを辞す。拠点に帰って各種ポーションをキャリーに依頼して、ハリアーに浄化している間の護衛を依頼しないと。アカデミー内だから危険は無いと思うが、土地も含めた家屋1軒分の浄化は時間がかかるし、集中しないといけないから無防備になる。


汽車で最寄り駅に着くと、ハリアーとキャリーに出迎えられた。


「引き受けたのか?」


「引き受けた。もう1つ、こっちは押し付けられたが」


「押し付けられた?何を?」


「家屋の浄化」


「神官に頼みゃ良いのに」


「金がかかるんだとさ」


「はぁ?」


「詳しい事は家で話す」


家に帰りながら、キャリーに各種ポーションを依頼して、ハリアーに浄化している間の護衛を頼む。


「任せて。魔力ポーションと通常の物で良いのね?」


「悪いな」


「代金は良いから、改良型のレポート、お願いね?」


「改良型?何の薬だ?」


「対魔物用の魔力減少液だとさ」


「あの恐ろしい薬、改良したのか」


以前の対魔物用魔力減少液は、命中しないと効果を発揮しなかった。効くのもスライムや低級魔物だけ。しかし自分にかかってしまった時の魔力が吸いとられる感覚には怖気(おぞけ)がした。


「以前のは役に立たなかったもの。改良したのよ」


「どの位の魔物に効くんだ?」


ダイアウルフ(狂狼)位までかしらね」


「当てる方が難しいじゃねぇか」


「だから改良したのよ。ドゥルーヴなら弓とかスリングショットで当てられるでしょ?」


「やってはみるが」



2日後、ハリアーとキャリーを伴って、アカデミーに行く。


「久しぶりね、その格好」


「滅多に着ないしな」


今日の俺の格好は、魔導師(ウィザード)の正式衣装。袖と裾の広いゆったりとした衣装だ。冒険者をしている時にこの衣装は動きにくいからな。


「お前が着ると、雰囲気がありすぎるんだが」


「そうか?」


アカデミーに着くと、グレイス女史が出迎えてくれた。


「きゃあ、グレイスさん!!」


「キャリー様、お元気そうですね」


俺とハリアーに入門許可の紙を渡しながら、キャリーとグレイス女史が抱き合う。キャリーはグレイス女史の友人枠だそうだ。


教員用の住居の方に向かう。浄化の現場近くには多数の学生が居た。


「師匠、これはどういう事ですか?」


「浄化の現場なんぞ、普段見られんからのぉ」


「だからといって、この人数は」


「光魔法を扱う者も居るからのぉ」


「見せてやりたい、という事ですか」


「駄目かの?」


「駄目ではありませんが」


ハリアーを見る。軽く頷かれた。


「仕方がありません。時間がありませんから、始めます」


いつもは使わないワンド()を、腰のマジックバッグ(魔法鞄)から取り出して、結界を解除する。集中して光魔法を発動する。居る。囚われた霊魂だ。せめて安らかに眠ってくれ。


家屋全体と、敷地全体に浄化を広げる。敷地の片隅にやけに霊魂が固まっている。そこに念入りに浄化をかけると囚われた霊魂が天に昇っていった。


「綺麗……」


誰かが呟いた声が聞こえた。


浄化を終えると集中力が切れてふらついた。


「大丈夫か?」


「ドゥルーヴ、ポーションよ」


「あぁ、ありがとう」


「相変わらずじゃの。少し休んでいくが良い」


「すみません、師匠」


住宅の中に入って、キャリーが埃避けの布を取ってくれたソファーに、倒れるように横になる。


「浄化ってそんなに疲れるの?」


「俺は神官じゃないから、そういった修行をしていないんだ。だから集中力が要るし、慣れていないから魔力消費も激しい」


「魔物討伐や盗賊退治に、光魔法はそんなに使わないもんな。せいぜい"ライト"位だ」


密やかなノックの音が聞こえた。


「誰だ?」


「私が出るわ」


キャリーが出ていく。何言かを交わした後、キャリーが連れてきたのは王子と王女だった。







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