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救児院

ギルドに着いて報告を行う。ついでにオークも納品しておいた。ボスは王子達に納品させる。


シャジャラ(木級)も混じってのブロンズ(青銅級)パーティーに、討伐させたんですか?」


受付嬢に非難の眼で見られた。あのボス部屋はブロンズ(青銅級)のみのパーティーか、ナハス(赤銅級)の混じったブロンズ(青銅級)パーティー以上が適正推奨だからな。


「多少の助言と手助けはしたが、ほぼ、彼らだけで討伐はしていたからな」


「ドゥルーヴさんとハリアーさんにかなり助けてもらいました」


「ドゥルーヴの防御魔法がなければ危なかったな」


(わたくし)はお役に立てなくて……」


「ハリアーさんの攻撃方法も凄かった。勉強させてもらった」


王子達に尊敬の眼差しを向けられる。


「ドゥルーヴ様とハリアー様が良ければいいんですけどね」


受付嬢が呆れたように言った。


「キャリーは?」


ハリアーが確認する。


「隣で調薬中ですね」


「なぁ、キャリーって誰だ?」


王子に聞かれた。


「ハリアーの彼女。調薬師をやっている。俺達がハオマを採取しに行ったのもキャリーの依頼だ」


「ドゥルーヴ、ちょっと行ってくる」


「ゆっくりしてこい」


ギルド併設の軽食コーナーに行く。王子達も着いてきた。


「万能薬って、どんな材料が要るんだ?」


王子が聞く。


「ハオマ、レッドドラゴンの鱗、水青石、フォコネール(雷風鳥)の卵、グラソンフレイム(氷炎石)を溶かした水。後は何種類かのハーブだな」


「レッドドラゴンの鱗!?」


「今回は倒してない。ストックしてあるからな」


果実水を渡す。躊躇(ためら)っているようなので解毒をかけておいた。


「解毒はかけておいた」


「ありがとうございます」


デヴィッドが言う。


「レッドドラゴンの鱗はストックしてあると仰いましたけど、倒されたんですか?」


「ハリアーと協力してな」


「先ほど果実水にかけた魔法は?」


「解毒しただけだ」


「解毒というと?」


「光魔法か水魔法だな」


「教えてくださいまし」


「今はダメだ。お姫さんはさっきのダンジョン(迷宮)で魔力を結構使っただろう?魔力が不足すると倒れるぞ?」


「魔力って増えないんですか?」


「増えるが、魔力コントロールはやっているか?」


「やっていますが」


「夜寝る前に、魔力を使いきれ。魔力コントロールをしながらだと効率がいい」


「もしかして、寝たら増える?」


「あぁ。ただし、体調が悪い時は無理をするな。絶対にだ」


みんな神妙に頷く。


「あの、オレでも魔法は使えるのか?」


サイモンが聞く。


「サイモンは魔法は使えないんだ」


「使えない?魔力は?」


黙って冒険者証を渡された。魔法適正は星1つ。


「魔法適正が星1つで、学年1位か。凄いな」


「でも、これ以上伸びないって、親父に言われた」


「サイモンは身体強化はかけてないのか?」


身体強化も魔法の1つだ。無魔法と言われていて、掛けた部位によって効果が異なる。


「やり方は教えてもらったんだが、理解が出来なかった」


「どう教えてもらった?」


「魔力を纏えって」


「そりゃ、分かりにくいよな。鎧は分かるな?魔力をコントロールして鎧をイメージするんだ」


「鎧をイメージ……」


「魔力が多ければ身体強化をしながら、属性魔法が使える」


「まずは魔力を増やす事からか」


「絶対に無理はするな。いいな?」


「「「はいっ」」」


「いい返事だ」


ハリアーが戻ってきた。王子達も迎えが来たようだ。


「ドゥルーヴ、ハリアー、世話になった。また会えるか?」


王子が言う。


「王城に来いって言うのじゃなけりゃ、いつでもいいぞ」


「ドゥルーヴ様、また色々教えてくださいまし」


「機会があればな」


王子達と別れる。


「いい子達だな」


「ちょっと向こう見ずだけどな」


家に帰る。ハリアーはキャリーが居るが、俺は独り暮らしだ。おかげで一通りの家事は出来るようになった。食事は買ってくる事が多いが。今日も屋台で串焼き肉(シシュ・ケバブ)を買ってきた。ラクと水と氷を用意して、夕食にする。アニスの癖のある独特な香りが口の中に広がりほんのり甘みとコクを感じる。アニスの独特な味は好き嫌いが別れるが、俺は好きだ。


ゆっくりとラクを飲みながら、串焼き肉(シシュ・ケバブ)を齧る。夕食を摂りながら魔導書を読んでいると、客が来た。


「ルー、帰ってたの?」


「リン、こんな遅くに脱け出してきたのか?ちゃんとシスター達には言ってきたんだろうな?」


「あ、ルーったら、また呑んでる」


さては言ってきていないな?


コイツはリン。以前、依頼で盗賊討伐をした際に拾った、盗賊に親を殺られた孤児だ。俺が面倒を見るわけにいかないから、救児院に預けたんだが、度々脱け出して、俺の家に来る。まだ10歳だがしっかりした女の子だ。救児院の近所で評判になる程度の美少女だが、何を気に入ったのか14歳も上の俺の彼女だと言い張っている。


「今日は帰れ」


()だ。ルーが私を彼女だって認めてくれたら帰る」


「俺は14も年下の彼女は要らない」


「えぇぇ~」


「送ってやるから帰れ」


「送ってくれるの?」


「1人で帰るつもりか?お勧めはしないな」


あの辺りは治安が悪い。ここまで1人で来たんだろうから今さらだが、知っていて放置するのは気が引ける。この辺でも夜間に女が1人で歩いていたら、暗がりに連れ込まれて、なんて事になりかねない。道路に魔光石が埋まっているのは、王城近くや貴族街だけだからな。


渋るリンを救児院に連れていく。ついでに屋台で差し入れの菓子を買っていく。リンの目が輝いた。


救児院に行くと、シスターに物凄く感謝された。差し入れの菓子を渡すと、ワラワラと子供達が集まってくる。


「菓子は明日以降にシスターに出してもらえ」


「ドゥルーヴさん、魔法を見せて?」


「魔法か。何が良いかな?」


男の子に人気なのは炎を使った荒々しい物、女の子に人気なのは光や水を使った繊細な物。しばらく考えて、幻影魔法を見せることにした。今は夜だし室内だから、幻影魔法は相性が良い。題材にしたのは言い伝えられている英雄物語。王子様がドラゴンに囚われたお姫様を救い出す定番の物語だ。王子様とお姫様の顔が、ダンジョン(迷宮)で出会った王子と王女になってしまったのは、それだけ印象に残っていたからだろう。


「ドゥルーヴさん、ありがとうございました」


ひとしきり子供達と遊んで帰ろうとすると、シスターに礼を言われた。


「リンを送ってきたついでだからな。それより困っている事はないか?」


「特には。気にかけていただき、ありがとうございます」


シスターの顔に浮かぶ憂いは気になるが、今出来ることはない。


家に帰って魔導書の続きを読む。この世界では本は貴重だ。俺の魔導書も師匠の魔導書を写した物や頂いた物ばかりだ。プラチナム(白金級)の冒険者だから多少の金はある。新しく買っても良いんだが、決断させる書物に出会った事がない。その点、王子達の通っているアカデミーには、貴重な魔導書も蔵書されている。俺も利用する資格はあるんだが、どうも足が向かない。


アカデミーは騎士科、魔導科、淑女科、貴族科、普通科に分かれている。騎士科、魔導科、淑女科は貴族が多い。貴族科は文字通り貴族しか居ない。淑女科も似たようなものだ。裕福な商会のお嬢様なんかも通っちゃいるが。反対に普通科はほぼ平民。騎士爵やエキュイエ(平貴族)と呼ばれる土地の有力者の子供は多少無理をして、騎士科、魔導科、淑女科に通うこともある。


俺は魔導科、ハリアーは騎士科の出身だ。共に首席で卒業している。魔法省からお誘いもかかったが、エキュイエ(平貴族)の息子と馬鹿にしてくる貴族がいたから、勧誘は蹴ってやった。ハリアーも似たようなものだ。


明日は休みの予定だから、急用が入らない限り、自由に過ごせる。実家に顔でも出すか。アカデミーに行っても良いんだが、勧誘がなぁ。





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