出会い
新作です。
毎日は更新できないかもしれませんが、2日に1度は更新したいと思います。
よろしくお願いします。
「きゃあぁぁ!!」
ダンジョンの脇道の最奥にいる時に聞こえた悲鳴。
「悲鳴だな」
「こっちは脇道だって言うのに。誰か迷い込んだか?」
「男の声も聞こえないか?」
「聞こえるな」
わぁー、だの、逃げろ!!だの、騒々しいったらありゃしない。やがて男が3人、女1人を守るようにして姿を見せた。こちらを視認したとたん、火魔法や風魔法が飛んでくる。ショボい魔法だったから打ち消してやったら、今度は剣で斬りかかってきた。
「物騒だな」
相棒のハリアーが冷静にいなす。
「何者だ!!」
「それはこっちのセリフ。この程度の実力でダンジョンに来ようなんて、ナメてんのか?」
「この程度だと!?」
「魔法もショボけりゃ、剣技もお粗末。おまけにお荷物を連れているとか」
「シ、ショボい……」
「お粗末だと!?」
「サイモン、ディビット、学年1位の実力を見せてやれ。遠慮は要らない」
「かしこまりました、ナイジェル様」
「学年1位ねぇ」
デヴィッドと呼ばれたヒョロガリが魔力を練り始める。サイモンと呼ばれたマッチョ君が剣を構えて走ってきた。
「ドゥルーヴ、任せた」
「あぁ。任せろ」
ハリアーが薬草採取に戻る。小さな魔弾をサイモンの肘と膝に撃ち込み、デヴィッドの魔法を打ち消す。
「ぐっ」
「はぁ?」
サイモンが膝を付き、デヴィッドは魔力が四散して呆然としている。
「何をした!?」
「別に?魔弾を撃ち込んだだけだ」
「来たわっ!!オークよっ!!」
「お前ら、どうやって入ってきた?」
「答える筋合いは無いっ!!」
「どうやってって怪しい魔法円があったから、それを消したら入ってこられたけど」
女が不思議そうに言う。
「消したのかよ。ありゃ、魔物避けだ。つまりオークが来たのはお前らの所為」
「うるさいっ!!何とかしろ」
「自分で対処するって発想は無いのかよ」
風魔法で4匹のオークの首を纏めて斬り飛ばす。
「ひっ」
「で?お前らは何者だ?」
「ナイジェル・アトキン・ハリスだ」
「私はフィオナ・エミリー・ハリスですわ」
「サイモン・クラーク」
「デヴィッド・レンショー」
「第4王子と第3王女と、騎士団長の息子と、魔法省長官の息子か」
王子と王女は双子だったっけ?
「お前達は何者なんだよ?」
「俺はドゥルーヴ、アイツがハリアー。どちらも冒険者だ」
「冒険者か。ランクは?」
「プラチナム」
冒険者のランクはワラク、シャジャラ、ブロンズ、ナハス、ザハブ、ファッデ、プラチナム、ミスリルと上がっていく。
「はぁぁ!?」
「五月蝿い」
ハリアーが戻ってきた。
「ハリアー、終わったか?」
「あぁ、やっと取れた。キャリーもややこしい依頼をしやがる」
「戻って良いか?コイツらが消した魔物避けの魔法円を戻してくる」
「消したのかよ。ちょっと見りゃ魔物避けだと分かるだろうに。なぁ?魔法省長官の息子」
「デヴィッド・レンショーです。名前で呼んでください」
「今日は王子と王女のお守りか?」
「お守りではありません。主君を守るのは当然でしょう?」
「そりゃ、主が主足る場合だけだ。後ろで怒鳴ってるだけの奴は主足り得ない。で?王女さんは?どうして着いてきたんだ?」
脇道への分かれ道で作業をする。奥からハリアー達の会話が聞こえていた。
「魔物退治を見たかったんですの」
「それで全員を危機に陥れてりゃ世話無いな」
「そんな言い方をしなくても……」
王女が泣き出したらしい。
「フィオナを泣かせるな」
「泣いてないぞ?嘘泣きだ」
「嘘泣き?!」
「気付いてなかったのか?おめでたい奴らだ」
「ハリアー、終わったぞ」
作業を終えて、ハリアーと合流する。
「対策は?」
「1度消されちまったからな。手持ちの聖金に刻んで埋めてきた」
「埋めてきた?と、いうか、手持ちの聖金って何ですか?」
「五月蝿い。ダンジョンで騒ぐな。魔物を誘き寄せたいのか?」
「そんな訳無いでしょう」
「なら騒ぐな」
通常の通路に戻って、ハリアーと2人で気配察知と危険察知を発動させる。
「ボス部屋に行くぞ」
「何故だ?」
「ボスを倒すと奥の部屋に転移陣が出るんだよ。それを使う」
「ボス討伐はお前達が主体でやるんだ」
「私も?」
「当然。お姫さんのスキルは?」
「フィオナは癒し手だ」
「ヒーラーか」
実力を見る為に腕を切る。
「何をするのです!?」
「癒してみろ」
「ここで?今?」
「止まった方がいいな。ハリアー、止まってくれ」
全員が止まったのを確認して、結界を張る。
「スゴい。こんな緻密な結界、見たことがありません」
ディビットが言う。
「ほら。これで良いだろう?」
「あのっ、私、まだ上手く出来なくて」
「ん?まぁ、とりあえずやってみな」
王女が魔力を練り始めるが、上手く出来ていない。
「お姫さん、ちょっと触って良いか?」
「始まったよ。ドゥルーヴのお節介が。ドゥルーヴ、やるなら休憩場所に行ってからにしてくれ」
「あぁ、安全地帯に行くか。ハリアー、まっすぐ100m行った右」
「了解」
安全地帯に着いて、王女の手を握る。傷は自分で治しておいた。
「じゃあ、お姫さん、少し魔力を流しすぞ。ちょっと熱い感じがするかもしれないが、心配はいらない」
「えっ、えっ?」
「大丈夫。ドゥルーヴはこういった事が得意だから」
魔力を流す。詰まっているな。魔力管閉塞症だ。
魔力の通る管を魔力管という。魔力管閉塞症は魔力管が細くなってしまい正常に魔力が流れなくなる症状だ。原因は不明だが、治療法はある。閉塞している魔力管を広げてやれば良い。
「なんだかポカポカしてきましたわ」
「じゃあ、やってみるか」
もう一度腕を切る。
「大丈夫。自分を信じろ」
「はいっ」
王女の額に汗が滲む。少しずつ時間をかけながら傷が塞がっていった。
「よくやった。成功だ」
「わ、私……」
「良かったな、フィオナ」
「少し休んだ方がいい。どうした?ディビット」
「ドゥルーヴさんって凄い魔導師?」
「ドゥルーヴは凄いぞ。全属性を扱える」
「全属性!?」
「それなりの努力はしてきたからな」
「僕に魔法について教えてください」
「魔法について?学年1位なんだろう?」
「駄目なんです。このままじゃ義兄様が父様の跡を継げない」
「どういうことだ?」
確か魔法省長官の息子は3人居たはずだが。
「レンショー家は特殊でな。実力至上主義なんだ」
「つまり、兄弟と跡取りの座を争っていると?」
「はい。どちらかと言えば、譲り合っているのですが」
「どちらも継ぎたくないと?」
「そうではなくて、義兄は義母の連れ子で、妙に遠慮しているというか、その……」
「仲は悪くないんだろう?」
「義兄は、僕と弟が正統な血統なんだから、僕が継ぐのが当たり前だと言っていて、でも、僕は研究に進みたいんです。義兄の方が僕より実力があるんです」
「それならドゥルーヴが兄ちゃんに教えたらどうだ?」
「義兄がそれを受けてくれるかどうか……」
「まぁいい。とりあえずダンジョンを出よう」
ボス部屋に着いて、討伐を行う。ボスはジェネラルオーク。俺とハリアーが助言をして、時には手助けしながら、なんとか倒しきった。
「そういえば、王子達の目的は?」
「力試しだ」
「まだまだだな」
「分かってる」
悔しそうに王子が言う。ダンジョンを出て、俺達はギルドに報告に行く。
「あの脇道は何だったんだ?」
王子に聞かれた。
「元からあったんだ。そこに居た魔物を掃除して、今はハオマの栽培をしている」
「ハオマだと?」
「知っているのか?」
「兄上に聞いた事があるんだ。珍しい植物で、万能薬の材料だと」
「珍しいのは珍しいな。魔力の豊富な土地でしか育たないし、育つまでに5年かかる」
「5年?長いのか?」
「使い物になるまで5年だ。その土地の養分を吸い付くすから連作は出来ない。あのダンジョンは全ての条件を満たしている上に、連作が出来るんだ」
「さっき、連作は出来ないって」
「あそこのダンジョンだけなんだよ。何故か毎年栽培できる。王宮とギルドには届けてあるし、納品もしている。ダンジョンは謎だらけだな」
「それでも貴重な薬草には違いない。栽培といっても15株だけだしな」
「少ないな」
「15株が限度なんだ」