暗いトンネルから抜け出せない時
悪い事というのは、これからも一生続いていくような気がする。
暗いトンネルの中、先に明かりが見えないとそこが出口のあるトンネルだとは思えない。
地中。
一生出られない土の中に生き埋めにされているような、そんな感覚になって、苦しい。
地上の、太陽が降り注ぐ楽しかったあの頃の事をもう思い出せなくなって、目の前は暗闇で何も見えず、手を出すとすぐに壁に当たり、鼻孔を土の匂いが占領した状態で身動き一つ取れない。
苦しい。
こんな苦しい思いが、しかもずっと続くなんて、そんなの嫌だ。そういう絶望的な気持ちになる。
気持ちが落ち込んで、鬱になって、そんな状態で、周りの元気な人たちが言う「もっと明るい事を考えよう」なんて、出来るはずが無い。色彩を認識出来なくなった目で、色鮮やかな世界が見れるわけがない。僕の世界は灰色で、それがずっと続いていく。お先真っ暗、なんて言葉、冗談でも何でも無くて、心を病んでしまったその人にとってはただの現実だ。
だけど、そんな状態でも、一つだけ覚えておかなくてはいけないのは、「世界は常に変化している」という事実だ。
刻々と変化している世界は、一瞬一瞬で切り取ってみるとそこには微々たる差しかなく、とても変化しているようには思えない。しかし、長い年月で見ると、確かに世界は変わっている。
つまり、僕はただ土の中で生き埋めになって、全くの変化無しに一生過すわけではないのだ。
世界は変わっていく。
もしかしたら、後三日もすれば助けが来るかもしれない。急な地震で地面が割れて、身体が地表に投げ出されるかもしれない。そうやって、明かりが、出口が見えて来るかもしれない。
もちろん、必ずしも変化が良い方向にだけ変わるとは限らない。もっと暗くて狭い場所に落ちてしまうかもしれない。地上が大洪水で水が流れ込んでくるかもしれない。
それでも、ただ土の中で生き埋めになっていた状況からは変わっている。
この先、どんな変化をするのか、それは誰にも分からない。
人生において、一番大切な事。それは生き続ける事だ。
別に僕は、「頑張っていればいつかは明るい未来が待っているのだ」とか言うつもりは無い。そんな風に考えると、思った通りにならなかった時に余計にしんどくなる。そうした希望による心の大きな上がり下がりは心が弱っていて余裕のない時には致命傷になりかねない。
そうじゃなくて、ただ生き続けて、そしてこの先に起こる変化を観察する。
もしもその時、その変化を楽しむ事が出来たらベストだ。
この先に起こる変化を、良いとか悪いとかに区別せず、全てを観察して楽しむ。どんな事があっても面白いと笑っていられる。だから人生は素晴らしいのだと胸をはって言える。そんな人間になれたら良いなと思う。