第七話 休日
皆さん、おはこんばんにちは!
初心者物書きクラウディです!
今回は、主人公の妹とちょっとした過去編となっております。
それと、しばらくは一日一回投稿としたいと思っております。(さすがに飛ばしすぎた)
それでは、本編どうぞ!
「ぐおおおおお!」
痛い。
全身のいたるところが痛い。
俺、白石優慈は、現在ベッドの上で激痛にもだえ苦しんでいた。
原因はそう、昨日起こったことだ。
帰っている途中、近所に住む鈴木のおっちゃんから、細井さんの飼い猫を探してきてほしいと言われ、見つけ出したと思ったら、なぜかいた怪異に襲われ、握りつぶされそうになったとき、火事場の馬鹿力でダウンさせ、さぁと止めといったときに、楓が乱入してきて、怪異を即死コンボで瞬殺。
俺は怒られ、最後にふざけてネタに走ったからか、腹パンを食らって気絶した。
その後、起きたらすべて元通りになっていた。
粉砕された床は、不自然なくらいに直っていて、怪異が突っ込んだ建物は、錆が浮いているところも完璧に元通りだった。
なんでも、楓と一緒に来ていたほかの隊員の方たちが直してくれていたらしい。
それを確認したら、起きるのを待っていた楓からのありがたい説教が飛んでくる。
やれ、一人で突っ走るなだの、異常事態が発生したら連絡しろだの、何度も聞いて、そして何度も直さなきゃいけないと思ったことだ。
だけど、どうしてもやらなきゃいけないと思って、体が勝手に動くんだよなぁ。
まぁ、その結果が昨日みたいな事につながったんだから、絶対に直さないと。
それに、師匠も言ってたしな。
『学ばない奴は、後できっと後悔する』って。
なら、今のこの時間は反省時間に使った方がいいのか?
…………。
……あー、やっぱ性に合わねえわ。
そもそも、俺が、あそこで油断して捕まっちまったから、あんなことになったわけで、気配を察知していれば、余裕をもって回避して反撃もできたはずなのだから、結局は俺が未熟な所為で死にかける目にあった。
なら、やっぱり強くならなくちゃいけないな。
よし、早速トレーニングを始めるか!
ベッドの上で考えていた俺は、トレーニングをしようと勢いよく起き上がった。
瞬間、全身に激痛が走る。
「アダダダダダ!」
ベッドから盛大にすっ転んで、床にたたきつけられる。
いってぇ―、やっぱり気合でどうこうなるもんじゃねぇか……。
怪異に締め上げられて、火事場の馬鹿力で脱出。
硬い甲殻で覆われた顔面を素手で粉砕したからか、治ったばかりの腕が、また悲鳴を上げている。
そして、楓からの腹パン。
これらが原因で、体に相当な疲労と損傷が蓄積されてしまっている。
普通なら、あの後動けなくなっているはずなのに、興奮していたからか痛みを忘れて活動していた。
そのまま、細井さんの家に雪子を届けて帰ることが出来た。
結局、無理をしたのは変わりないから、今こうして床に転がったまま動けなくなっているんだけどな。
「せ、せめて、腕立て伏せだけでも……」
「……お兄ちゃん、大丈夫?」
痛みと格闘していると、誰かから声をかけられる。
仰向けになっている俺をのぞき込むようにして、その姿が視界に入る。
長い金髪をツインテールにし、ピンクの水玉柄のパジャマを着ている。
その目は、宝石のように透き通った青色をしており、碧眼と呼ばれるものだ。
純日本人の両親から生まれた俺を、少女は兄と呼んでくる。
「おぉ、“光”。お兄ちゃんは大丈夫だぞ……」
「……嘘。お兄ちゃんはいつもだったらもっと元気だもん」
この少女は、“白石光”。
俺の“義理”の妹だ。
義理って言ったのは、見た目からも分かる通りに、俺達は本当の兄妹じゃない。
今から約一年前の、高校二年生の冬。
とある任務でヨーロッパに出向いた時だった。
そこからなんやかんやあって、現在は俺たちの家族になったわけだ。
「……お兄ちゃん。昨日、怪我して帰ってきたこと、まだ怒ってるから」
「……はい。ごめんなさい」
「……だめ。もう一回」
「……昨日は、多大なる心配をかけてしまい、申し訳ありません……」
「……うん、いいよ」
一先ずは許してくれたみたいだ。
……やっぱり、誰かが悲しむのは嫌だな。
そんなとき、くぅーっと腹の鳴る音が光と俺から聞こえた。
「……とりあえず、朝飯食うか」
「……賛成」
「よっこらせっと。うぉあ!」
立とうとしたら体勢が崩れてまた寝転がってしまう。
「……あー、光?起こしてくれるか?」
「……しょうがないなぁ、お兄ちゃんは」
まだ完全には治っておらず、立ち上がれない俺は、光に助けを求めた。
光は、倒れている俺に近づき、体をつかむと、
「……よいしょ」
軽い掛け声とともに持ち上げて立たせる。
「痛てて……、ありがとな光」
「……どういたしまして」
すかさず、俺に肩を貸して歩かせる光。
向かう先は一階のダイニングだ。
――――――――
「「ごちそうさまでした」」
テーブルを挟んで向かい合うように食事をしていた兄妹は、揃って感謝の言葉を言っていた。
その後は、二人仲良く台所に使った食器を持っていき洗い終える。
そして、居間を抜け廊下に出ると、身長の高い兄が、自分よりも背の低い妹の肩を借りて、階段を上っていく。
「……ねぇお兄ちゃん」
「ん?何だ?」
「……今日は何する?」
階段を上っている途中、妹が兄に向かって聞いてくる。
今日は何をするか、と。
兄はその質問に対し、しばらく悩んだ後、こう言った。
「何をするか……、俺はトレーニングをしようか――――」
「だめ。楓お姉ちゃんから、お兄ちゃんをあまり動かせるなって言われてる」
即答だった。
兄の体を鍛える発言を、言い切る前に止めさせる。
それを聞いて兄は、どこかあきらめたような表情で言う。
「だよなぁ……。んじゃ、今日は家の中でできることでもするか」
「…!じゃあ絵を描きたい!」
「そうだな、ってうおっ!」
兄が提案に納得すると、妹は自分よりも大きい兄を軽々と持ち上げて階段を駆け上がっていく。
その表情は、先ほどまでの変化に乏しい顔とは打って変わって、花が咲くような満面の笑みを浮かべている。
その様はまるで“天使”のようだ。
瞬く間に、二階へたどり着いた二人は廊下に面している、優慈という文字の書かれた看板の掛けられた扉を開けて、妹が持ち上げていた兄を下ろして部屋から出ていく。
その様子を見て、兄“優慈”は、
「……本当に変わったな、光は」
前は人形みたいだったのになぁ、そう続ける優慈はまぶしいものでも見たかのように目を細めてしみじみとつぶやいた。
――――約一年前。
優慈が異能にかかわる、この世界の裏側を知ってから約一年が過ぎた十二月。
この時、冬休みだった優慈は、楓に、最近メンバーに加入した鉄郎やヴェルト達とともに、上から降りてきた任務を果たすため、ヨーロッパに飛んでいた。
日本では見ることのなかった街並みや景色、その土地固有のものを探しに街中を探索していた時だった。
『……あなたは何者?……あの人たちと同じ“力”を持ってる』
『…質問で返すようだけど、君の方こそ何者?』
ファーストコンタクトは街中の薄暗い路地で起きた。
日中でありそこまで警戒していなかったとはいえ、異能力者の近くを以てしても話しかけられるまで築くことが出来ないという事実が優慈の警戒度を跳ね上げる。
『はぁ!?連れてきた!?』
『すまん……。どうしてもほっとけなく……』
その後、問答を繰り返し、少女は一年前から以前の記憶がなく、おそらく研究所らしき場所から逃げ出したと言ったことから、優慈はきな臭いものを感じながらも少女を保護することに決めた。
少女を連れ、仲間たちのもとへ向かった優慈を迎えたのは否定的な意見ばかりだった。
『優慈。その子を保護するというのは、あまりおすすめできません。その少女が私達に危害を加えないとは限りません』
『儂もじゃ。どこのもんかわからんもんを拾ってくるとは何を考えちょる。猫じゃないんじゃぞ』
『私も。話を聞く限り相手は組織的なやつらだよ。見つかった時のリスクが大きすぎる』
上から、ヴェルト、鉄郎、楓である。
彼らの意見はもっともだ
裏の人間では実力のある彼らでも、表ではまだ子供だ。
表の人間が、そのような非合法な実験をしているなら、子供である彼らは手出しができず、裏の人間であるならば、組織が結成できるほどの力を有していると判断しての意見だ。
しかし、それでもと優慈は言う。
『それでもだ!この子を放っておけばそいつらが来るかもしれない。子供を使って実験をするような奴らだ。何かをしたいんだろうことは分かってる。そしてそれは絶対に碌なもんじゃあないはずだ。だから頼む!俺に力を貸してくれ!』
土下座をしてまで頼み込む優慈。
その行動に難色を示していた仲間たちは次第に折れていき、
『はぁ……。分かったから顔を上げて。その子は優慈がちゃんと守ること。それを誓えるならこれにサインして』
『…!ありがとう!』
魔術的な誓約書を書かせることで事なきを得た。
その後、名前が無いと言われ、優慈が少女を“光”と呼び始め仲間内で定着しだす。
『……綺麗』
『うんうん。我ながらいい出来だね!』
『あの、なんで私も何ですか?』
他にも、来ている服が患者服だという問題しかない服装だったから服屋で急遽似合いそうな服を見繕ったり(なぜかヴェルトまで着せ替えられた)(男子勢は外で時間をつぶしていた)、
『……へくち』
『シィッ!』
『んが!?…な、んで、俺…?』
鉄郎の武器作成を見たり(くしゃみをした光の代わりに優慈が殴られたり)、
『……出来た』
『へぇ……。すげぇじゃん光。すまねぇなおっちゃん。使わせてもらって』
『はは、何、いいってことよ!こっちもいいもん見せてもらったしな!』
優慈と街中を探索していた時、年配の男性から道具を借りて出来上がった絵がまるで景色そのものを切り抜いて出来上がったかのような作品だったことに感心する。
その出来は、本職の人間が舌を巻くほどだった。
そんな日常が続いていく中、ある時、
『……お兄ちゃん』
『……へ?』
ふと、光が優慈のことを“お兄ちゃん”と呼び始める。
平穏な日常が続いていたある日。
恐れていたことが起きた。
『待ちやがれっ!テメェら光をどうするつもりだ!』
『知れたこと。我らの成す偉業のために為に彼女は必要な存在だからです』
光が逃げ出した組織の連中によって光が連れ去られてしまう。
『ねぇ、優慈。やられっ放しでいいの?』
『…ッ!いいわけないだろ!』
『なら、すぐ準備して。そいつらをぶっ飛ばしに行くよ』
『…!ああ!』
失意のどん底にいた優慈を楓が活を入れることで奮起する。
そして、本部からの援軍も加わり、光を取り戻すため、組織に襲撃をかけた。
『……タ、ス……ケ…………テ…』
『絶対に助け出してやるからな!待ってろよ光!』
組織の連中に改造されたのか、暴走している光と戦い、
『うっ、ひっぐ、お兄、ちゃん……!』
『おう、お兄ちゃんはここにいるからな』
一度は死にかけながらも、二人そろって何とか五体満足で生還した。
その後様々なことがあったが彼らは兄妹となった。
――――現在
光と初めて会ったとき、そして家族になってからのことを思い出していた優慈は感慨深げに呟く。
「本当にいろいろあったな。そして俺よく生きてるよな。まぁ、死ぬ気なんてさらさらねぇけどな」
「……一人で喋ってどうしたの?」
ドアの隙間から光が覗いている。
この時、優慈は自分が着替えていないことに気付く。
「あっ、わりぃ光。まだ着替えてなかったわ」
「……ふーん。待ってるから早く来て」
「分かったからそんな睨まないでくれ」
そう言って優慈は痛みの残る体を引きずって着替え始める。
一分ほどたっただろうか、優慈は部屋から出た。
来ている服は、黒の布地に青のラインが入った上下おそろいのジャージ。
光も優慈の着ているものとおそろいのものを着ている。
「……それじゃ、早く行こう!」
「分かった分かったから。そんなに引っ張らないで、痛たたたたたた……」
そう言って、優慈を引っ張っていく光の嬉しそうな姿。
髪の色、目の色も違う。
もっと言えば生まれた両親すら違う。
それでもそこにいるのは、紛れもなく兄妹であった。
だが、彼らの間にある絆の強さが、後に重大な事件を引き起こすことになろうとは、今の二人には知る由もなかった。
いかがでしたか?
主人公の義理の妹、光ちゃん(十二歳)が登場と主人公の休日を書きました。
最後にもある通り、この二人の関係性が後に重大な事件になるようにはしたいです。
ついでに言えば、光ちゃんも異能力者です。
今は制限をかけられていますが……。
今回はここまでにしておきます。
それでは、感想・評価をよろしくお願いします!