第二話 異能 入学
皆さん、おはこんばんにちは!
クラウディです!
今回は異能の説明と、ヒロインになるかもしれない子の登場回です!
拙いところがあるかもしれませんがどうぞ楽しんでみていってください!
この世界には、
魔法、呪術、超能力が存在し、
それらをひっくるめて、“異能”と呼んでいる。
んで、異能を使える人間は“異能力者”と呼ばれている。
もちろん俺もその一人だ。
自身の肉体や周囲の環境に対し、自身の肉体に存在する器官“魔導脈”を起動させることで発生するエネルギー“魔力”を肉体や魔法陣、または魔力の込められた道具である“魔道具”などといった触媒を用いることで力を発揮する。
魔力は魔導脈から生み出されるだけではなく、植物が多く存在する場所や特殊な環境などでは、それらから大量に魔力が生産されることもある。
これを利用して、自分一人では発動すらままならない、強力な魔術を限定的に行使したりもできる。
だけど、人によっては得意なことや苦手なことも存在する。
俺の場合は、“肉体の強化”、“五感の強化(視覚と聴覚)”、あとは“炎の放出”ぐらいしかできない。
それぞれを簡単に説明すると、“車を軽々と持ち上げられる筋力・銃弾が直撃しても傷ができないほど頑強な肉体”、“2.0以上の視力・集中すればデパートの中でも特定の人の会話が聞こえる聴力”、“道具を使えば空を飛べる”といったことが、今日高校生になる人間が使えるのだから恐ろしいもんだ。
だから、こういったものがテロリストなどの危険人物に渡らないように“裏側”の法で厳しく取り締まられている。
自分もさっき警察の会話を盗み聞くために異能を行使したが、まだ制限の範囲内なのでセーフだ。
しかし、今回の事件では人が殺されている。
制限どころか法すら破っている。
近いうちに上から任務が下るだろう。
自宅が近く、調査に向かいやすいからっていう理由で。
「はぁ……最悪だ」
せっかく高校生活の一日目だと気合を入れてたのに、寝坊した挙句、近くで事件が起きるとか。
何?今日の運勢最下位なのか?
そう思わずにはいられないほどの悪運に、計らずもため息が出てしまった。
「うおっと、そういや遅刻しそうになってたんだった」
そういって俺はその場を後にした。
そのあとは特に問題なく学校につくことができ、遅刻は回避できた。
――――――――――
「でっけぇな……」
愛車から降り、門の外から校舎を眺める。
遠くに見える三階建ての校舎は白く塗装されていて清潔感漂う建物になっている。
そんな建物が朝日を浴びて洗練されている様は言葉に表しずらい。
だが、この時ばかりは前に来た時よりも美しいと思った。
ほかの生徒はあまり見当たらないから、やはり遅れてしまったことを痛感してしまう。
「っと、急がないと」
愛車を押して門を通る。
門の両脇に植えられた大きな桜の花びらが舞い散る中を駆け抜けていき、自転車置き場に愛車を置く。
そして、生徒玄関まで走っていった。
生徒玄関前に、大きなパネルが置いてあるのが見える。
「えーっと何々……」
そこには、『新入生案内』と書かれていた。
内容は、
式までに指定された教室で待機するように。
それぞれの教室へは下にある表に記載されている。
「俺は……、一年三組か……」
確認したら下駄箱に移動し、靴を脱いでから持ってきていた上履きに履き替える。
あまり履いていない新品だからかちょっと違和感があって、何度か足踏みをして鳴らした。
教室は二回にあるから急いで階段を駆け上がる。
階段の踊り場を抜け、さぁ二階へ着くといったときに、曲がり角から誰かが現れた。
「きゃっ」
「うおっと」
勢いあまってその誰かとぶつかってしまう。
自分は鍛えていたから倒れることはなかったが、ぶつかった相手は違う。
驚いたような声を上げて体勢を崩し、後ろ向きに倒れそうになっている。
すかさず腕をつかんで倒れるのを阻止した。
「っと、大丈夫ですか?」
「あっ、はい…大丈夫です……」
「そうですか、怪我がなさそうで安心しました」
ぶつかってしまった相手にけがをさせることなく助けることができた。
手をつかんだまま相手の姿を見る。
声の高さと着ている制服から女子だということがわかった。
左目を隠している俗にメカクレと呼ばれる髪型、気弱そうな目つき、下がった眉、
そして、高身長の俺と比較して低い身長。
大体、百五十くらいか。
「あ、あのぉ、そろそろ手を放してもらえると……」
「え?あ、すいません!初対面の人の手を勝手にさわってしまって!」
「う、ううん。大丈夫、です……」
ジロジロとみてしまったり、手をつかみ続けてしまったみたいだ。
すぐさま彼女に謝罪する。
それに対し彼女は、こちらに気を遣ってか問題はないと言ってくれた。
危ねぇ……、初めて会った子から嫌われるところだった……。
「あ、あの!」
「えっ、あっはい、どうしましたか?」
内心ほっとしていると彼女から声をかけてきた。
どうしたんだろう……?
「えっと、その、名前を聞いてもいいですか……?」
「名前?白石優慈です。白い石で白石に、優しくて慈しみのあると書いて優慈って言います」
「優、慈……、優慈君かぁ……」
そういって彼女は、まるで大事なものを噛み締めるかのように俺の名前を復唱した。
友達がいなかったのかな?
いつまでも彼女呼びは失礼だと思ってこちらからも聞いてみる。
「あの、こっちもあなたの名前を聞いていいですか?」
「へ?あっ、わ、私の名前は……小夜静・・・。小さい夜に、静かって言います……」
「なるほど…、それじゃあ小夜さんって呼ばせてもらいますね」
「うん……、そ、それじゃあ私、教室に戻るから……またね……」
「こちらこそ、また今度」
そういって、彼女、小夜さんは足早に去っていった。
いやぁ、今日は不幸ばかりだと思ったけど、あんなかわいい子と会えるなんてちょっとツイてるなぁ俺。
ま、次会えるかどうかはわかってないんだけど……。
「イテッ」
「なぁに廊下の真ん中でにやけ面晒してんのよ」
その場で小夜さんのことを考えていたら誰かに後頭部を叩かれた。
叩かれた個所を手で抑えつつ振り返る。
そこには、
「なんだ“楓”か」
「なんだとは何よ。この天才美少女楓様に会えて嬉しいんじゃないの?」
「お生憎様、こっちは何度も見慣れているんです~」
そう言って話しかけてきたのは、約二年前にあの古びた社で大蜘蛛に殺されかけていた俺を助けてくれて、そして神祇省に所属してから心が折れそうになったり、死にかける目にあっても、ずっと隣で支えてくれた相棒である、“秋神楓”であった。
「あっそう、それで、ちょっと話したいことがあるのよ」
「話したいことって、公園の事件のことか?」
「そうそれ。全員で集まって話したかったけどどこかの誰かさんが遅れたせいでねぇ」
「いや、ほんとすまん」
楓がこっちを見ながら言ってきたので、すぐさま謝罪する。
気まずい空気を変えるために話題を出す。
「そ、そういやお嬢か鉄郎には話したのか?」
「……はぁ、あのねぇ、あの二人の性格からして来てはくれるんだろうけどこれからの三年間を棒に振らせるつもり?」
「……そうだった……!」
やっべ、地雷踏んだ。
そういやそうだったよ。
あの二人、方向性は違えどコミュ障だということは変わりなかった……!
ちょっと頭の中で整理する。
お嬢。本名“ヴェルト・ヴァイスハイト・マーキス・クルーガー”。
元ドイツの異能組織に所属していたいいとこのお嬢様で、今は俺たちのチームに入っている頼もしい仲間。
地元のドイツでは、家がいいとこだったせいか重圧もすごかったらしいし、やっぱそういう家に生まれたからか同年代の子が話しかけづらい雰囲気だったらしく、この年で友達と話したことがほとんどなかったらしい。
楓もいいとこの家に生まれたそうだけど、親や周りの人がいい人ばっかりで、お嬢とは周りの環境が大きく違ったみたいだ。
次、鉄郎。本名“匠鉄郎”
鉄郎も俺たちと同じく神祇省に所属していて、武装などを作ることを専門としている。
そんな彼を一言で表すと、『職人』。
もし、武装、特に刀を作っているときなんかに邪魔をしようものなら、異能で強化された鉄拳が飛んでくる。
まぁ、そこに目をつぶれば、仕事も早いし強いものが出来上がるから文句はねぇんだけどな。
そんな二人は、絵にかいたようなコミュ障だ。
ヴェルトは少なすぎる対人関係のせいで、何と言って話しかければいいのかわからないタイプ。
鉄郎は、そもそも他人には興味がないタイプ。
だから楓は、この三年間、ボッチのままじゃいけないと思ったから、今日は未だに二人と会ってないんだろう。
「すまん……」
「そもそも、二人のコミュ障を改善させるって言いだしたのは優慈でしょ」
「そうだったな……」
「だから、入学式が終わったらファミレスで事件のことを話すから」
「了解」
一旦会話を切り上げる。
「それで、優慈はどこのクラスになったの?」
「あぁ、俺は三組だけど」
「そう、私は二組だから隣同士だね」
「隣?三組の隣は普通四組じゃねぇのか?」
「はぁ……、ちゃんと見てないの?」
ため息交じりに呆れられた。
えっ、いや普通そうじゃなくて?
「あのねぇ、この学校では教室の並びはZ字じゃなくて、U字になってるのよ。ってか、教室の場所わかってる?」
「いや、知らん」
「はぁ……、案内してあげるからついてきて」
そう言って楓は歩き出す。
釈然としないまま俺はそのあとをついていく。
「ここが、二組。三組は左隣にあるから、もう迷わないでしょ」
「ありがとな楓」
「ん」
楓はひらひらと手を振ってから教室に入っていった。
中では女子のグループが楓に話しかけている。
流石、もう友達ができたのか。
俺も急がないと。
「……あっ」
「…どうも」
教室に入ってすぐ目に入った人がいる。
さっき別れたばかりの小夜さんが、俺の席の前にいた。
互いにあいさつを交わして、俺も席に着く。
まさかの同じクラスかよ。
とりあえず、背負っていたバックを机の横に掛ける。
周りを見渡すと、もうほとんどの生徒がグループ分けを終わらせていた。
あの間に割り込むのはさすがに難しい。
だから、小夜さんに話しかけようと思う。
「……ねぇ、小夜さん」
「ふぇ!?な、なんだ優慈君か……。そ、それで、何か用……?」
俺が話しかけると、小夜さんはビクッと驚いた後、こちらに振り向いて聞いてきた。
……そんなびっくりしなくても……。
内心ちょっと傷ついたけど、気を取り直して話を続ける。
「ちょっと世間話をしようかなって思って」
「う、うんそのくらいなら……。そ、それじゃあ何の話をするの……?」
「じゃあ、趣味の話とか。俺は漫画とかかな」
「あっ、わ、私もそうだよ……。えっと……特に最近話題の――――」
話始めた小夜さんはさっきまでの姿とはまるで別人のようだった。
そのあとも会話は続いていく。
そして、楽しい時間とは早く過ぎていくもので、黒板の上にあるスピーカーから時間を告げるチャイムが鳴った。
それに合わせて、談笑していたグループもそれぞれの席に戻っていく。
俺と小夜さんも会話を辞めて姿勢を正し前を向いた。
「皆さん席に、ついてますね。では、私の自己紹介をしようと思います」
しばらくすると、スーツを着た男性が入ってきて、話をし始める。
しかし、形式ばった挨拶に少しばかり飽きてしまった俺は、別のことを考える。
ってか小夜さんいい人すぎないか?
転びそうになったの助けただけだぞ?
つうか、なんで小夜さんからあいつらのにおいがするんだ?
……後で皆と集まった時に話しておくか。
それにしても、……もう二年か。
長かったようで短かった、そんな二年間だった。
母と父はこんな俺をずっと育ててくれた。
光はあの時、あって間もない俺たちを信じてくれた。
仲間や先輩たちには感謝しかない。
いろんな人が俺を助けてくれたんだ。
だからこそ今日からの高校生活頑張っていくぞ!
「ね、ねぇ優慈君……」
「ん?どうしたの小夜さん?」
「えっと、今から式が始まるから廊下に並んでって先生が……」
「おっと、ありがとう小夜さん」
やっべぇ、考え込んでて聞いてなかった。
小夜さんと一緒に廊下に出て、並んでいる人に聞いて自分たちの場所に並ぶ。
よし、今度こそ気合い入れていくぞぉーっ!
いかがでしたか?
主人公の能力と、プロローグで主人公(当時十三歳)を助けた子、そして何やら不穏な気配を漂わせている女の子が登場しました。
これが原因となり、新たな事件が……!
と、今回はここまでにしておきます。
それでは、感想・評価をよろしくお願いします!