プロローグ2 ■■■
現在時刻は深夜11時過ぎのまだ日付が変わっていない時間帯である。
ここはとある研究施設。
研究施設内は緊急事態を知らせるアラートが鳴り響いている。
ここから、この研究施設内で何かが起きたということが理解できるだろう。
場所を変えて、本来なら白いであろう通路は、赤く光るランプによって照らされており目が痛くなるような状況だ。
そんな時だった。
通路の曲がり角から二つの影が飛び出し、きれいなコーナリングで曲がったかと思えば、オリンピックに出られそうな速度で通路を疾走する。
さらにその後ろを無数の影が濁流のように角から現れ、その勢いのまま互いを押しつぶすようにして曲がり、そんなこと知ったことないといわんばかりに二つの影を追いかけ始める。
まるで後ろの影から逃げるようにして走る二つの影は、よく見ると人間だということがわかる。
そして、その片割れが凄まじい声で叫んでいた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、お嬢!! 術式解体まで後いくら!?」
『後五分かかります!』
「あと五分!?カップヌードルよりも長いのかよ!」
「うるさいよ!オープンチャンネル点けっ放しで騒がないでよ!ほら早く!黙って走って!おいつかれるよ!」
「そんなこと言われたって、やっちまったから叫ばないとやってられ、あっぶねぇ!」
叫んでいる片割れは話している途中に、後ろにいる無数の影の一つが攻撃してきたことで、危なげながらも回避して見せる。
その時、着ている服に付いていたフードが外れて素顔がわかるようになった。
手入れがされていないのか少しボサついた黒髪に鋭い目つき。
顔は美形といえるだろう。
その口元は、苦々しく食いしばっている。
着ている服は、作業服を黒一色に染めたような物で、耐久性はありそうだが、今は所々ボロボロになっており、ダメージ加工というには二重の意味でパンクすぎる状態になっている。
だが、それ以上に異質なのが、その腕に装着された黒い籠手のようなものである。
「オラァ!」
掛け声とともに放たれた裏拳は、近づいてきた影に直撃し、鈍い音と共に無数の影の中へと対象を弾き飛ばした。
しかし、それでも濁流のような勢いは止まらず、二人へと向かってくる。
「だぁっ、クソッ!あの野郎、最後に面倒なものを残していきやがって!」
「それは“優慈”が暴れて制御装置を壊したからでしょ!」
「それに関しちゃ本当にすまんと思ってる!」
『二人とも、チャンネルを開いたまま騒がないでください!死んでもいいんですか!?』
「すんません!」
「ごめんなさい!」
そう言って、彼らはここにいない誰かに話しかけるように、二人そろって謝った。
そんなことを言ってる間にも無数の影は追いかけてきている。
「こんな量の“キメラ”どこに隠してやがったんだよ!」
「多分、地下にただ広いだけの空間があってそこに押し込められていたんじゃないの!」
「なるほどねぇ、っと」
「というか、これ最初のほうに言ったよね!」
「すんません!あたまからとんでました!」
「じゃあ、ペナルティで今度奢ってよね!」
二人は軽口をたたきながら通路を駆けていく。
先ほどまであった焦りはもうなくなったみたいだ。
そうして、約束の五分が経過した。
突然だが、これを見ている者たちに聞く。
君たちは、空想を信じるか?
『二人とも!解体完了しました!健闘を祈ります!』
「ほら優慈、異能が使えるようになったんだからやるよ!」
「へっ、了解!」
人によってはつまらない、見飽きたと言われるような物語が展開されていく。
だけど、足を止めて見てほしい。
「「能力」」
これから始まる物語を見ていってほしい。
「「起動‼」」
その言葉とともに彼らは超人へと強化された。
「さぁて、いつも通りにやりますか!」
「あんまりでしゃばらないでよね!」
これより始まりますは、日常や非日常との間で、
「ぶっ飛べぇ!」
「燃えろぉ!」
時に困難に打ちのめされようとも、
「よし、いい感じって、うおっと!」
「ちゃんとまわりみてよね!」
前を向いて進む“人間”達の物語である。