プロローグ
初投稿です。よろしくお願いします。
お話的には一話というよりはプロローグです。
書き忘れや誤字などのミスが多かったので色々手直ししました。暖かく見守って頂ければ幸いです。
こんな話がある。
臓器移植をすると、提供した人物の性格や挙動が移植した人物に現れてしまうことがあると。
僕の右目には誰かが宿っている。
これは比喩でもなんでもなくそのままの意味だ。
まあ、説明をしよう。
そうだな、とりあえず僕がこんな状態に陥って一ヶ月になる。
その一ヶ月の中で分かった事を話していこう。
僕の右目は、僕の意思に関係なく動く。
見る、という方が正しいのかもしれない。
例えばの話だが、僕が好きな将棋の解説番組を見ているとする。
すると右目だけはなぜか勝手にテレビの横にある窓をぼーっと眺めるんだ。
恐らくだかこの番組に興味がないのだ。
僕の右目なんだがな。
あと、最近は、学校帰りに外を歩いていると小さな子供(特に女児)に視線が行きがちだ。
……勿論これは僕ではなく、右目の話だ。
僕にそんな趣味はない。
右目の誰かは子供に興味があるのだろうか。
とにかく幼い子供を見ると手当たり次第に見つめてしまうので、通報される日もそう遠くない未来かもしれない。
このように僕の右目には意思があるんじゃないかとさえ思えてくる。
だからといって、凄く困ってる、という訳ではない。
日常生活でも大半は右目と同じ動きをしているのだ。
問題なのはコイツ?が全く興味がないものを見ていると視線は逸れるし、興味のあるものが視界に入ると目線が釣られてしまう時もある。
この辺が非常に不便で仕方がない。
しかし目とは別にまぶたは閉じれるので、どうしても凝視しているものがあった場合には、しばらくまぶたを閉じると諦めて戻ってくれる。
気を付ければ不審に思われることはない。
さっき話に出した女児凝視もなんとかこれで凌いでいる。
がんばれ僕。
で、ここからが本題なのだが、僕はこの右目を治したい。どうしても必ず、だ。
凄く困っている訳ではないが、普通に不便だし、ちょっと気味が悪い。
なにより、この右目は親から授かった大事な右目だ。
霊だろうが妖怪だろうが、渡してやる道理はない。
しかし同時に、好奇心といった意味で『コイツ』がなんなのかを気になる。
なにより直感か、予感か、不意に胸騒ぎがする時がある。
はやく知らなければならない、そんな焦燥感に駆られるのだ。
僕は普通に高校生生活を送るなかでも常に、頭の片隅でこの右目のことを考えている。
考えてしまうのだ。
本来ならこんな奇妙な問題に悩まされることが異常なのだ。
恨めしい。
…まあはっきり言ってしまえば僕は交友関係が非常に狭いので、ぶっちゃけそこまでの影響はないのだか。。。
頭の片隅で、と言ったが最近に至ってはどうすればこの右目を治せるかについてにしか考えていない。
しかしどうにも解決の目処は立たないまま日常を送り、考える、悩む。そんな日々がずっと続いている。
それからぐだくだと、悩みを抱えながらも流れるように月日が経ったある日のことだった。
その日は色々なことがあり、思考を整理するために自分の部屋で過ごしていた。
何故そう思うのに至ったのかは今回は省くがら僕はコイツのヒントが自身の生まれ育った故郷へとあると確信したのだ。
近いうちに長期の休みがある。
そこでこの右目について調べるために帰郷をしようと意思を固めたとき。
そう、そんな時だった。
ふと、右目の視界が上下に強く揺れたような気がした。
僕の意思ではない。
そこから、今までの比ではないくらい、視線が彷徨った。
右に、右下に、下に、左に。
左上に。上に。また右に。
グルグルグルグルと、右目だけが円を描いた。
なんだ、なんだ、なんなのだ!
気持ちが悪かったので、急いでまぶたを閉じた。
しかし、まぶたの中でも同じように右目だけがグルグルと回っていた。
気持ちが悪い。
気持ち悪い。
やめてくれ。
おまえは、誰なんだ。どうして僕の右目にいる?
頭の中でそんな疑問を浮かべたらまた右目の視界が揺れた。
歪んだ。
むず痒くなって右のまぶたを擦ると、小さな水滴が人指し指に広がっていた。
目にゴミでも入ったのかと思った。
けどやっぱり違って、痛みはなかった。
束の間に思考が働く。そうか。
『コイツ』は泣いているんだ。
なぜ泣くんだ?こんな事は今までなかった。
さっきの意味のない視線ははじめてだった。
そう…なにかを訴えるかのようなこんなアピールは初めてだったんだ。
『コイツ』が何を考えているのか僕にはわからない。
だからこそ。
だからこそ僕は知らなければならないのか。
わかった。僕は自分の右目を取り戻したい。
その為にはまずコイツがなんなのかを知る必要がある。
どういう経緯でこんな形になったのか。
物事には必ず理由がある。
…なければ理不尽だ。
僕は自分の意思を再確認し、奮い立たせるかのように独り言を放った。
「絶対に、絶対に全てを解き明かして、この右目を治して見せる。頑張れ、涼介!」
ちなみに、涼介というのは僕の下の名前だ。
今にして思えばこの日から日常が変化していったと思う。
これから起こる出来事は僕が知らなければ後悔する、との思いが募って出来上がった物語だ。
そして先の話をするが、僕はやはり後悔することとなる。
こんなこと一生知らなきゃ良かったのに。と。
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