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物置に佇む美人な美人な幽霊さん

作者: あいあんめん

「物置の中に女の人の幽霊が見えるの…」


 ある日母にそう言われた。母はかなり霊力が強いらしく、幽霊やら何やらが見えてしまうらしい。


「優君、なんとか出来ないかしら?物置に居られると怖いのよ」


 なんとかって…んな無茶な。そもそも俺は幽霊が見えるのかすら怪しいのだが。


「私のお母さんもお婆ちゃんも見えるらしいのよ。多分私の血が入っていれば見えるとは思うけど…」


 なんてめんどくさい家系の子供になってしまったのだろう。


 取り敢えず物置に行ってみるとしよう。




 いた。普通にいた。見えた。物置開けたら女の幽霊が立っていた。怖い……がよく見ると美人さんか…?


 ツヤツヤとした黒髪ロング、うつくしい。つり目がちなパッチリとした目、うつくしい。普通に顔も小さいし美人さんだぞ?


 じっと観察していると徐々に幽霊さんの顔が赤くなってきた。照れてる?


 コミュニケーションはとれるのだろうか。


「こんにちは、僕は木下優といいます。あなたのお名前を教えていただけますか?」


 幽霊さんは首を横に振る。コミュニケーションは取れるらしい。しかし、教えてくれないのか…。


「教えてくれないのですか…」


 僕が悲しげに言うと慌てて幽霊さんは再び首を横に振った。


 教えてって言っても首を横に振るし、教えてくれないのかって言っても首を横に振る。教える気自体はあるのか…?


 あ、もしかして喋れなかったりするのかな。


「もしかして幽霊さんは声が出せないんですか」


 首を縦に振る。ああ、成程ただ喋れないだけだったのか。どうにかならないのだろうか。


 あ、そういえばこの人?この幽霊をどうにかしてこいと母に言われていたのだったな。んーしかし美人の幽霊だからな。普通に仲良くなりたいんだよなぁ。普段美人さんと会話する機会なんて滅多にないし。どうするべきか。


 要は物置に居られなきゃいいんだよな。ってことは場所さえ移せばいいってことだよな。いや、いいに決まってる。その方がみんな幸せさきっと。


 人目につかない場所となると、地下室や屋根裏とかかな。しかし、どちらも母さんちょくちょく出入りするしなぁ。母さんがあまり出入りしないで、尚且つ、俺と幽霊さんがコミュニケーションを取れる場所……。





 俺の部屋じゃね!?


 そうか、俺の部屋なら滅多に母さん入ってこないしな!それこそクローゼットの中にでも居てもらったらほぼバレないだろ!


「幽霊さん幽霊さん、物置から移動することって出来ますかね」


 幽霊は首を……縦に振った。


 うおおおおおおお!!!!


「じゃ、じゃあ物置から僕の部屋に来て貰えませんか!!変なことはしませんので!!」


 言い回しが変態みたいになってしまった。幽霊さんも疑うような目でこちらを見ている。失敗か…?いや、まだ諦めるな。伝家の宝刀力業だ!!


「と、とにかく着いてきてください!!物置に居られても困りますので!!」


 きっと幽霊さんは着いてくるだろう。俺は信じてるぞ。


 しかし、どうしよう家の中を移動する時母さんに見つかりでもしたら。幽霊は姿消せたり出来るのだろうか。


「幽霊さん幽霊さん、僕や僕の母はあなたの事が見えるのですが、なんかこう、上手くして目に映らないようにできますか?母に見つかるとまずいので」


 そう言うと幽霊は徐々に薄くなっていき、そして姿が見えなくなった。


 おお!よしこれなら母さんにバレずに部屋につれこめるぞ!!!ってか見えないようにできるなら部屋に連れていく必要がないのでは……。ま、まぁいいか。


「じゃ、その状態で僕に着いてきてください。部屋に着いたら『大丈夫ですよ』と言うのでそうしたらまた、僕にも姿が見えるようにしてくださいね」






 無事バレることなく部屋に到着した。途中母さんとすれ違ったが、特に変な様子をしていなかったのでバレてはいないだろう。


「幽霊さん、もう大丈夫ですよ」


 そう言うと幽霊は優の前へと姿を現した。


 おお!ちゃんと着いてきてくれててよかった。


「じゃあこれからは物置じゃなくてこの部屋で暮らすようにしてください」



 こうして、俺と幽霊さんとの内緒の生活が始まった。







 初日


「どうですか?ここでの生活は。不自由してないですか?何か不便なことがあったら教えてくださいね」


 幽霊は首を縦に振るとすぐ姿を消した。


 いつか、俺と幽霊さんが会話したり、遊んだりすることができる日が来るのだろうか……。




 十日目


 最近夜寝ていると物音がする。あ、幽霊さんとは毎日コミュニケーション取ってますよ。安心してください(?)


 しかし、この物音というか、なんというか、なんなんだろうかこの音は。まさか、幽霊さんの仕業か?いや、あの人は確か物触れなかった気がするしなぁ。んーまぁいつか解決するだろ。





 二十日目


「ああ、疲れたよお幽霊さん。学校疲れるよー。」


 寝転びながら甘えちゃう。喋れないけど甘えちゃう。


「ぁ…あぁ」


 ん!?慌てて幽霊さんの方を見ると、幽霊さんは口をパクパクさせていた。


「ゆ、幽霊さん!喋れるようになったの!?」


「ぅ…うぅ」


「なに?なんて言ったの?」


「うぅ…」


 さっきから、あぁとか、うぅとしか言ってくれない。


「喋れるようになったんじゃないの?」


 幽霊は首を縦に振った。


 声は出せるけど、ちゃんとは喋れないってことなのだろうか。


「じゃ、じゃあ俺と毎日練習しよ!毎日毎日喋れるようになるまで練習しよ!」


 こうして俺と幽霊さんの会話の特訓が始まった




 学校に行く前


「幽霊さん!行ってくるね!」

「う、うぅぅ」


 学校から帰ったあと


「幽霊さん!ただいま!」

「お、おあああ」


 雨が降った日も


「今日は雨だね。幽霊さんどんな天気が好き?」

「あ…はえおい」


 強風の日も


「今日は風強いね」

「う…うぅん」


 とにかく毎日毎日喋りかけた。




 幽霊さんと出会って一年ほど経った。その頃には幽霊さんはほとんど喋れるようになっていた。


「もう初めて会ってから一年経ったんだね」


「う、うん。初めて会ったのに急に部屋に連れ込むから、び、びっくりしたよ」


 所々つまづきながらもきちんと会話は成り立つようにね。



「あ、もう時間だ。じゃ、そろそろ学校行くね!」


「う、うん!気をつけてね」


 決めた。俺は今日幽霊さんに告白する!!もう一年だ!そろそろ大丈夫なはずだ!!


 おっと、そろそろほんとに間に合わなくなる。走んなきゃ厳しいか?急げ急げー!


 勢いよくドアを開け飛び出すと…


 キキーッ!!


 ドンッ!!!


 あっ…






「幽霊さん!これからはずっと一緒にいられるね!」


「えええええ!!!!」



 俺も幽霊になってしまった





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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです!笑わせていただきました! [気になる点] これは…、コメディーでは…? [一言] 幽霊さんは、何故物置に…。
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