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91話 ダンジョン

 レグリス王国より北にある荒野を駆ける一台の馬車。これに乗り合わせるのは冒険者ミェルと、ある一組の冒険者パーティー。


「協力してくれてありがとうね、ミェルちゃん」


 個人(ソロ)功績(スコア)序列(ランク)六位の女性冒険者ジーナがミェルの隣で微笑む。


「いえ、こちらこそ誘ってくれてありがとうございます」


「――噂には聞いてたが、本当に魔法杖(ステッキ)オンリーでクエストやってるんだな‥‥‥」

「同じ魔法士の俺としては、後学も兼ねてじっくりお手並み拝見したいね」


 向かい側に座る男性二人――ゴドムとヴェルン。彼らはジーナとパーティーを組んでおり、それぞれ個人(ソロ)功績(スコア)序列(ランク)十三位と十九位のAクラス冒険者である。


 レグリス王国の冒険者ギルドには現在七十以上のパーティーが登録されており、ジーナのパーティーは団体(チーム)功績(スコア)序列(ランク)八位のパーティーとして冒険者界隈で名が知られている。


「ジーナさん、"ダンジョン"って一体どういうところなんですか?」


「そうね‥‥‥、一言で言うなら"一攫千金の大チャンス"かしら?」


 数日前、冒険者ギルドにてジーナはミェルにとある相談(・・・・・)をした。その内容は"ダンジョンの攻略に協力してほしい"というものだった。


「一攫千金‥‥‥?」


「そう! ダンジョンっていうのは場所もタイミングも不規則で一定時間だけ出現する巨大な迷宮なんだけど、そこには色んな珍しいお宝があって、時には大金貨数百枚に代わるようなとんでもない秘宝が見つかることもあるの!!」


 目を輝かせてそう語るジーナを横目に、ゴドムが補足を加える。


「――ただし、ダンジョンには魔獣もウジャウジャ出現する。基本的に上級魔獣しか居ないと思った方が良い。さらに、ダンジョンの最奥には"守護魔獣"と呼ばれる強力な魔獣が待ち構えている」


 ゴドムの言葉に頷きながら、ヴェルンが続ける。


「そいつを討伐すればダンジョン踏破――攻略成功ってこと。まぁ守護魔獣ってのは言わば"ラスボス"だね。一攫千金なんて言っても、リスクはめちゃくちゃ高いのさ」


 二人の説明に聞き入っているミェルの視界に、ジーナがぴょこっと顔を覗かせた。


「そ・こ・で! 個人(ソロ)五位のミェルちゃんに協力をお願いしたって訳!!」


 ジーナは肩にかけた鞄の中から折り畳まれた地図を取り出し、四人の中央でそれを広げて見せた。


「出発前にも確認したけれど、今回ダンジョンが出現したのはクーゲラス森林のかなり奥の方。馬車は森林の入り口までだから、しばらく歩くことになるわね。‥‥‥ミェルちゃん、体力に自信は?」


「大丈夫だと思います! 頑張ります!」


「意気込みはバッチリみたいだな」


「寧ろ俺たちがへばらないように頑張らないとね」


 やる気に満ちたミェルの返事、それに微笑むゴドムとヴェルン。ジーナは一つ頷いた。


「"クーゲラス森林の最奥には魔王軍幹部が居る"という噂がある。今回のダンジョン攻略に関与してくる可能性も大いに考えられるわ。ミェルちゃんにとっては、ここが一番重要なところね」


「はい‥‥‥!!」


 普段、他人とクエストに行こうとしないミェルがジーナたちの頼みを受けた理由はここにあった。


 一年前の襲撃で攻めてきた魔王軍幹部は、勇者一党によって倒された。しかし冒険者界隈では、"森に新たな幹部が配置されたのではないか"とまことしやかに噂されていた。


 クーゲラス森林における魔王軍幹部の存在については勇者ユリウスにより事実だと判明しているが、この情報はまだ冒険者らへ伝わっていない。


「あくまで噂に過ぎないが、可能性があるってんならそれに賭けたくなるのが冒険者の性だよな」


「はい!」


 ゴドムの言葉にかく頷くミェルだが、その意欲は冒険者としてのそれではなく、復讐への強い執念によるもの。少しでも情報を得なければならない。


 その心をジーナたちに話すことはなく、やはり関わらせるつもりも毛頭ない。ことに臨めばジーナたちと別れて自分一人で戦おうと考えている。


「――皆さん、到着致しやした!」


 馬車が停まり、御者が呼びかけた。クーゲラス森林の入り口である。


 ジーナが握り拳を天に向けた。


「それじゃ、気合い入れていこう!!」

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