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1話 人間なのに魔王軍

ユニークスキルである《シールド》しか使えないめんどくさがりの主人公が魔王軍幹部として色々な災難に巻き込まれるお話です。

「あぁ、平和だな‥‥‥」


「それはあなたの頭の中だけです」


 広い居間に、明るすぎないシャンデリア。全体的に落ち着きのある暗めの色合いで、そこはとても静かである。大人一人が余裕で横たわることのできるソファーに、俺は悠然と寝転がっていた。


 対し、整ったメイド衣装で綺麗に立っている女性が二人。女性といっても人間じゃないんだけど‥‥‥。見た目は人間とほとんど変わらない。


 一人は黒のショートヘアでキリッと、真顔というよりか、少し怒っているのではないだろうかと思えるほどの表情で俺を見ている。


 もう一人は、金色のロングヘア。穏やかな笑顔で、しかしそれでも少しも姿勢を乱していない。そしてこっちも、俺を見ていた。


 せっかく人がくつろいでいるというのに、そんなまじまじと見つめられて、落ち着くものも落ち着かない。俺が何か悪いことをしたとでもいうのだろうか。平和であることをおいて他に良いことなどないだろうに。


「役目をお果たしください。見るに堪えません」


「じゃあ見なきゃいいだろう? まるで恋する乙女のように俺のことじーっと見つめちゃって」


「意味が分かりません。私は責務を全うしています」


 俺はため息をついた。まったく、ジョークの通じない従者(メイド)である。どこまで真面目ならこのようなコミュニケーションになるのだろうか。もしかしてコミュ障? なんてボケでもなさそうだ。


 ‥‥‥と、沈黙した空気が出来上がった。沈黙の中、俺は見つめられる。ただでさえ静かな空間なのだから勘弁して欲しいものだ。俺はジョークが得意な方だと自負しているが、この環境で俺のジョークスキルは何の役にも立たない。気まずいなぁ。――そんなことを思った矢先。


「まぁまぁ、侵入者が現れた訳じゃないのだから、そう怒らなくてもいいじゃない。休養は大切よ?」


 穏やかな従者(メイド)がキリッとした従者(メイド)を説得しようとしていた。‥‥‥ん? そういえば俺は、この従者(メイド)らの名前をまだ知らなかったな。


《「これは休養などではなく、ただ怠惰なだけです。質が下がってしまう‥‥‥」


「"セシリー"、あなたは真面目過ぎなの。ちゃんとやることはやっているのだから、問題はないわ」


「けれど"ティアナ"、このままではあのお方の気に障るかもしれないでしょう?」


 ――二人の話し合いはまだ続きますが、放送はこれで終了です。問題用紙を表向きにして、問題に取り組みなさい。》


[Q.話し合いをしていた二人の名前をそれぞれ答えなさい。]


[A.セシリー、ティアナ]


 なんと親切な問題だろうか! 俺が疑問に思ってから即座に答えが出揃ってしまうとは。こんな聞き取りのテストがあったなら、みんな仲良く満点を取れるだろうに。


「とにかく! 私は認めていません」


 空間が静かになった。どうやらセシリーが何か主張するようだ。俺は寝転がりながらも、耳だけそちらに向けていた。


「私は認めていません。あなたが‥‥‥、人間が魔王軍幹部を務めるなど!」


 ‥‥‥なるほど。それが不満だった訳か。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「あぁ、平和だな‥‥‥」 > >「それはあなたの頭の中だけです」   この冒頭面白いです。 [気になる点]   從者の名前知らないのコメディは笑えないです。   三年間一緒に仕事した…
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