Episode5 山は燃えているか
早矢「ここが炎上山ですか…」
カサンドラ「パーティー会場内に火山がそびえ立ってるって、一体何なの…!?」
フリーデリーケ「そう言えば、日本の忍術に『転所自在の術』というのがあるって聞いたけど?」
神無月「俺は『ゆで理論』だと思うが、どうか?」
ロウ「何にせよ、ここに主催者のヒントがあるんだろ?とっとと探してオサラバしようぜ。ここは砂漠より暑い」
???「よくぞ参った、勇者とその一行よ!」
全員「!?」
???「我は炎上山の門を預かる『阿形』!人呼んで『秋葉三尺坊大権現』こと秋羽なり!」
???「おなじく『云形』。“戦斎女”こと沙槻ともうします。おまちしておりました、とおのさま♥」
巡「秋羽さんに沙槻さん!?」
神無月「天狗神に“戦斎女”だと!先程の彭候といい、ラインナップがメチャクチャだな…!」
秋羽「勇者 十乃殿、貴方に恨みは無いが、これ以上進むならお覚悟ください」
沙槻「もしくは、わたしたちといっしょに「くりすます」のよるをたのしみませんか…?」
カサンドラ「ねぇ、あの二人が言ってる『阿形』と『云形』って何?」
神無月「日本の寺院の山門にある『仁王』の口の形を指すものだ。『阿』は宇宙の始まり『云』は終わりを示しているという…ふむ、では貴様らはここの門番ということか」
秋羽「いかにも。ここを通りたくば、我等を下していかれよ…!」
沙槻「では、だいいちもん、まいります」
全員「「「クイズかよ!?」」」
秋羽「知力勝負と言ってください」
沙槻「きょうは、くりすますです。りゅうけつざたは『ごきんせい』だとか」
カサンドラ「…ねぇ、あの娘、神道の巫女じゃなかった?」
沙槻「『いぶんかこうりゅう』は、たいせつですよ?」
秋羽「では続けます…“パンはパンでも、食べられないパンはなーんだ?”」
カサンドラ「そりゃあ勿論『フライパン』でしょ?」
秋羽・沙槻「!?」
カサンドラ「え?違うの?」
沙槻「いえ、せいかいです」
秋羽「な、なかなかやりますね…!」
カサンドラ「…あ、急に『残念臭』が漂ってきた」
沙槻「つづいてたいにもん!“うえはおおかじ、したはおおみず、なーんだ?”」
ロウ「『風呂』だろ」
秋羽「な、何と…!」
沙槻「おみごと!せいかいです…!」
早矢「…駄目です、見ていられません。辛すぎます」
巡「二人とも、後で泣くんだろーなー…」
秋羽「ぐぬぬ…では、最後の問題!」
沙槻「これはいままでのようにはいきませんよ?」
カサンドラ「あー、ハイハイ。どーぞ」
秋羽「“tan1°は有理数か”!?」
カサンドラ「何それエグい!」
フリーデリーケ「急にレベルが上がりましたよ!?」
神無月「\tan 1^\circ が有理数だと仮定する。加法定理より\tan 2^\circ = \tan (1^\circ + 1^\circ) = \frac{\tan 1^\circ + \tan 1^\circ}{1 - \tan 1^\circ \tan 1^\circ}
も有理数である。同様に\tan 3^\circ = \tan (2^\circ + 1^\circ) = \frac{\tan 2^\circ + \tan 1^\circ}{1 - \tan 2^\circ \tan 1^\circ}も有理数であり、 \tan 4^\circ = \tan (3^\circ + 1^\circ), \tan 5^\circ = \tan (4^\circ + 1^\circ),\cdots, \tan 60^\circ = \tan (59^\circ + 1^\circ) も有理数である。
しかし \tan 60^\circ = \sqrt 3 は有理数ではないため、冒頭の仮定に矛盾する。よって冒頭の仮定は誤りで、\tan 1^\circ は有理数ではない」
秋羽「な、何と…!」
沙槻「せ、せいかいです…!」
巡「ウソだ…」
ロウ「俺にはもはや呪文にしか聞こえん」
秋羽「見事です、勇者十乃」
沙槻「やくそくどおり、ここはおとおりください」
巡「その前に教えてください。お二人とも、この宴会の主催者が誰なのか、ご存じなんですか? 」
秋羽「無論です」
巡「教えてください!一体誰が何の目的で…!?」
秋羽「その答えは、この炎上山の頂きにあります」
沙槻「とおのさま、どうかごぶじで…」
神無月「…行くしかないようだな」
早矢「鬼が出るか、蛇が出るか…ですね」
カサンドラ「ここまで来たんだから、最後まで行ってやるわ」
フリーデリーケ「そうだね。皆で力を合わせれば、きっと…!」
巡「よし!では、行きましょう!」
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