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第八十二話  ギルド・トーナメント③ 『リゲルのやり過ぎ戦闘』

『えー、アクシデントがありましたが、トーナメントは何事もなく続きます』


 ギルド・トーナメント一回戦。

 衝撃のパンツ見えて快勝のテレジアが恥ずかしさで控室へ消えた後。司会の騎士イータが淡々と進める。


『続いての闘技は、優勝候補! リゲル選手の試合となります! ご存知、『青魔石事変』の功労者! 類まれなる『魔石』スキルの数々は、他の追随を許しません!』

「リゲル選手の最大の強みは、なんと言っても手数の多さだよね~。相手に応じて近接、中距離、遠距離、防御……様々な戦術を使い分けられる特性」

「多彩な攻撃を使い分け、勝利する。これこそリゲル選手の真骨頂。さあ! 初戦をどのようにして戦うのか! 一戦士として注目です!」


 壇上、リゲルが悠々としたした動作で佇立している。

 相対するは中年の巨漢だ。

 はりきれんばかりの筋肉と、手に持つ鉄球。それらが威圧的な印象の益荒男である。


『対戦相手は『ランク黒銀』! 《漆黒鉄球》の異名を持つ、ベルド・ラージ選手! その巨体からから繰り出される鉄球は、圧巻の一言! 前回大会において、多数の選手を沈めてきました!』

『前回は、優勝したアーレス選手に負けちゃったけど、普通にこちらも注目選手だよね。鉄球と魔石使い……良い試合を期待しているよ~』

 

 観衆席では、多大な応援が飛び交っている。

 優勝候補のリゲルはもちろんのこと、相手のベルドも人気選手であるためだ。

 両者、壇上には軽い挨拶をすませる。そして得物を構え、試合の準備は万端。

 いよいよ、司会のイータ達が宣言を上げる寸前で――。


「あ、ちょっといいかな?」


 リゲルが、おもむろに切り出した。


「僕はこの試合、一つの条件のもと戦おうと思う」

『はい?』



「――戦闘中に、『右腕を使わない』そして『左脚も使わない』――そういう事でどうかな?」



 一瞬。

 観衆席がその宣言に静まり返った。

 当然だ。そんな宣言聞いたこともない。

 数秒後、トーナメント会場を爆発的な熱狂が渦巻いた。


「えええ!? 本当かよ!?」

「ベルド相手にハンデ戦だと? さすがはリゲル選手だ!」

「いや、余裕の発言だねー。これはやばいね、やばい!」


 そして控室では。


〈うわあ……〉

「うわあ……」

「リゲルさん、また……」


 メアとマルコ、そしてテレジアが呆れた声を出していた。

 当然である。先日の模擬戦の再来。あのときリゲルはマルコとテレジアを相手にハンデ戦をした。

 片足に片腕。

 その戦いを知っている側としては、もはや苦笑して見守るしかない。


『な、なんとーっ! リゲル選手、まさかのハンデ戦です! しかも、有力選手のベルド選手相手に、『片足と片腕を使用禁止』! これは、じつに大胆な宣言だーっ!」

『ベルド選手は、受けないわけにはいかないよねぇ。準優勝候補のプライドもあるけど、普通に見世物の試合だし。……それにしても大胆なことするなぁ、リゲル選手』


 観衆席は、大いに盛り上がっている。

 当然だ、優勝候補のリゲルが、まさかの宣言を行ったのだから。相手のベルドも、一瞬しかめ面をしたが拒否はしない。

 ハンデ戦のもと、試合は行われることに移っていく。


『さあ! では、会場も温まったところで、闘技――開始ですっ!』


 イータが宣言を上げる。

 瞬間――リゲルは『魔石』を放り投げた。

 現れたのは、巨大なる鬼人。

 第四迷宮《樹海》で出現する、全身を多数の花で覆われた奇怪な巨人である。


 多種多様な『花』が体に生えている奇怪な外観。

 その、異様な全身に魔力が宿る。大きく振りかぶられた豪腕が、振り抜かれると――。


「種族名、《フラワーゴーレム》。全身が特殊な花で覆われたゴーレムの魔石だよ。まあ『ランク四』の中級なんだけど、相手に『状態異常』を引き起こせる花の効力がある。だから初見ではまず勝てないだろうね」


 轟音。


『き、き、決まったーっ!? なんとベルド選手、ただの一撃で昏倒してしまいました! 傍目にはゴーレムからの一撃を受けただけに思われましたが、これは圧巻です!』


 観衆席は静まり返っていた。

 またしても一撃での決着。壇上、ベルドがゴーレムの拳を受け、伸びていた。

 その様子を見て、司会の騎士レーミンがつぶやく。


『たしか、《フラワーゴーレム》って、全身から毒、麻痺、催眠とかの『花粉』を出すゴーレムだよね? 対策がないと、何も出来ずに終わるという……。うわあ、これはベルド選手、相性が悪かったね……』


 レーミンの解説には道場すら含まれていた。

 最初、リゲルはベルドの左側に『ただの石ころ』を投げ放ち、そちらに意識誘導。


 その間に、本命の《フラワーゴーレム》の魔石を投げ、攻撃した。


 状態異常を引き起こされたベルドは豪腕をぶち当てられるしかない。

 言葉にすればただそれだけの、ワンサイドゲーム。瞬殺。快勝。


「いや、いいんだけど……」


 控室で、マルコ達がつぶやく。


「これから先、リゲルさん、同じことしそう……」


 テレジアがつぶやく。


「それって、ハンデ戦を?」

「うん……あの人、割と盛り上げるの好きそうだから……」


 以前、ハンデ戦でボロボロに『のされた』テレジアは、乾いた笑みをこぼすしかない。


「確かに……あの人、やりそうだわ……」


 そしてそれが出来る実力も備えている。


〈でもリゲルさん凄い! さすがだよね!〉


 それを、無邪気そうにメアが褒め称えている。

 トーナメントは続く。優勝候補の独壇場に、熱狂で包まれながら。

 


お読み頂き、ありがとうございます。

次回の更新は2週間後、12月19日になります。


追記:このエピソードを投稿した直後、いつもより評価やブックマークを頂き、喜びを感じております。

こういうリゲルもアリかな、とと考えて執筆したエピソードなのですが、予想より評価をいただけて嬉しいです。

物語は佳境に移っていくので、今後も楽しんで頂ければ嬉しいです。

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