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第八十話   ギルド・トーナメント

『さて! やってまいしました《ギルド・トーナメント》! 類まれなる資質を持った強者たちが血湧き肉躍る! 栄光の舞台! 決戦を制するのは果たして誰か!? 司会はわたくし、二級騎士イータと!』

『世界の美少女、二級騎士のレーミンがお送りしまーす!』


 都市ギエルダ、ギルド中央支部、大広場。

 高らかに歓声が飛び交っていた。会場に詰めかけた観衆たちは熱狂状態で、さらに鼓笛隊、合唱隊、奇術師が多様なパフォーマンスを行っている。

 華やかに場を彩る彼らに混じり、司会の騎士に声を送る者もいた。


『さて、熱烈な歓迎! まずはこの大会の趣旨を説明しましょう! ――総勢百名を超える選手たちの中で、武技を競い合う大トーナメント! 栄誉を頂くのは誰か!? ちなみに優勝賞品は、なんと騎士レーミンちゃんのキッスと、副賞は『霊剣リーダル』! これは最高ですね。氷を発生させる名剣と、美女の接吻! 正直、わたくしはレーミンちゃんのキスよりも剣の方が欲しいわけですが……さて選手の皆様はどちら目当てで参加したのでしょう!?』

『一言多いよ~。ま、選手の皆さんには頑張ってもらいたいですね。私、戦う人って大好きなんです。剣を、槍を、弓を、魔術を駆使して戦う、崇高にして苛烈な戦士たち! 汗が迸り、意地と意地がぶつかり合う! 選手の皆さんも観衆の方々も、揃って楽しんでくださいねー!』


 おおおお、とまた大歓声が上がる。

 司会進行の片割れ、レーミンは人気のギルド騎士。

 淡いクリーム色のゆるふわヘアはもとい、その柔和な目元や起伏に飛んだ体つきは見るものを魅了していく。

 主に男性観衆が、(それと稀に女性観衆)が、高い歓声でもって迎える。


『さあ盛り上がってまいりました! では早速、優勝候補の紹介からいきましょう! 今回、ギルド・トーナメントにおいて、人気を集めるのはこの五名! まずは――街の闘技大会の覇者! 《水龍の剣豪》ことアーレス・マグダビス選手です! 《探索者》ランク・『ゴールド』にして凄まじい水撃はあまりにも有名! ギルドや市民の間で人気は絶頂! 今大会の優勝候補と言って過言ではないでしょう!』


 続いて、相方のレーミンが別の選手を紹介する。


『はーい、お次に紹介するのは、《撲殺幼女》ことミリア・マウちゃんです。わずか十一歳ながら、あまりにも有名な年少探索者! 得物はトゲ付きメイス! 迷宮で数々の魔物を撃ち殺した実力者は最凶だー! 先日、希少種三体を倒し見事ランク『黒銀ブラックシルバー』に上がったのは記憶に新しいですね~。可愛いけど強い! こちらも優勝候補の一角です!』


 うおおおおおっ、と先ほどとは違う歓声が轟いていく。

 壇上、紹介されてぺこりと頭を下げるのはまだ幼い少女だ。

 その右手にはトゲだらけのメイスを持っており、返り血が物騒な姿を醸し出す。


 あどけない笑顔で手を振る姿は、観衆たちを魅了していった。


『いやー、凄い歓声ですね。会場が音でひび割れてます。さあ続いて三人目! 《武器帝王》こと、ガルグ・ロブロス選手です! わずか半年でギルド《二等騎士》にまで上り詰めた大型新人! その多様な武器さばきは、他者の追随を許さない! ソード、ランス、シミター、ハンマー、ブーメラン、ソードシールド、一体いくつ武器を持っているのか!? ぶっちゃけ後輩だけどそのうち等級が抜かれそうで個人的に悔しい選手です!』


 あはは! と軽い笑い声があちこちで飛び交った。紹介されたのはまだ若い男性の騎士だ。

 柔和だが意志の強そうな顔立ち。精悍なため女性からの声援が多い。


「精一杯頑張ります。よろしくお願いします」


 礼儀正しい物腰し、観衆がさらに熱狂する。


『さて、続いては可憐な少女の優勝候補者! 《幽霊少女ゴースト》の、メア・レストールちゃんの紹介です! レストール家の令嬢である彼女はなんと! 実家において幽霊として復活、『青魔石事変』では大活躍! 街の復興作業でも大いに貢献してくれました~。様々な物を《浮遊術》で運ぶ姿は、必見! お世話になった人も多いですよね~。幽霊だけど強い! 六本の《宝剣》を操る、可憐で精強な優勝候補で~す!』

〈みんなー、よろしくね! 頑張るよ!〉


 メアが笑顔で手を振ると、男性、女性共に大きな歓声が上がった。

 それも当然で、彼女はギエルダの街の復興で大きな成果を出しているためだ。

 石材、材木、瓦礫の撤去、輸送……様々な分野で活躍する彼女は、ちょっとした街のアイドルだ。

 この歓声も嵐のように迸っていく。


『続いては最後の優勝候補! 言わずとしれた『青魔石事変』の《英雄》! 魔石を操り、騒動の黒幕を打ち倒した若き巨星! 《魔石使い》こと、リゲル選手の紹介です!』


 これまでで最大の歓声が、会場を揺るがした。

 柔和だが整った顔立ち、筋肉も必要以上に存在せず、無駄なのない肉体と言った印象。落ち着いた風情は歴戦の勇士を思わせた。


『彼は凄いよね~。仲間を率い、《第八迷宮》の深くにまで侵入。そこで『青魔石事変』の《黒幕》を打ち倒したんだって。攻撃、防御、幻惑、様々な戦術を得意をするオールラウンダー! まさに戦闘の鬼神と言っても過言じゃないよね!』

『リゲル選手は、探索者のランクこそ《黒銀ブラックシルバー》ですが、実力は間違いなくゴールド以上! そして栄えあるギルドの『特権探索者』でもある優秀な人材です! 今、最も注目すべき選手でしょう!』


 盛大に賛辞され、壇上に紹介された少年へと司会の騎士が近づく。


「さてリゲル選手。ちなみに、噂では『彼女持ち』と一部では有名ですが、家では一緒に住んでいるとか!? 羨ましい! 実際のところ、どうなんですか?』


 リゲルは苦笑して答えた。


『……あー、えー。ノーコメントで』


 ブーイングが観衆席で走る。

 精霊少女ミュリーと確かに同じ屋敷で住んではいるが答えると修羅場になりそうだ。


『うーん、何とも硬派なコメント! ですがそこが英雄の魅力なのでしょう! さあ! 優勝候補の紹介も終わりまして、トーナメントはいよいよ開幕です! 皆様、ご期待してお待ち下さい!』

『トーナメントにはギャンブルもあるので皆さん楽んでくださいね~!』


 司会の二人が笑顔で締めくくる。

 会場は、まさに大歓声。熱狂的な声が止まらない。鼓笛隊や合唱隊も演技に熱が入り、まさに最高潮といったところだった。


 

 ――控室にて。リゲルは仲間と共に、あまりの熱狂に苦笑していた。


「……まさかこれほど大規模だとは思わなかったよ。凄まじい盛り上がりだ」


 ハイリールだーのマルコが緊張した表情で語る。


「ほ、本当に凄いですね。僕、今からでも棄権しましょうか……」

〈ねー、いいじゃない、楽しもうよ!〉


 傍らで浮いていたメアが笑顔でそう語り、空中でふわふわ浮かぶ。


〈そうすれば皆元気になれるよ! 街の復興祝いだもの、みんな楽しもうよ!〉

「はは、そうだね。せっかくの大会だ、楽しもう」


 リゲルがあまりのメアの明るさn笑う。

 そのさらに背後では、テレジアも頷いていた。


「そうね。あたしも楽しみだわ。リゲルさんやメアばかりにいい格好はさせない。一選手として、存分に力を振るってあげる」


 メアもテレジアも、気力は十分だ。


 特にテレジアは先日、軽くリゲルにあしらわれたリベンジに燃えているのだろう。

 その瞳には確かな気迫が感じられた。


「うん、その意気だ。闘技中は頑張ろう」


 リゲルは柔和な笑顔で応じる。

 騎士からの要請があったため、今回『ランク五』以上の魔石は使う気はない。


 他の優勝候補の面々も同じだ。

 本気の戦闘ではなく、これは見栄え重視の戦いを行うのが前提。


 もちろん、それでも苛烈な戦いになることは確実だ。優勝候補の筆頭たちはもちろん、その他の選手も皆《探索者》か《ギルド騎士》。つまり戦闘のプロ。その戦意が沸き立たぬわけはない。


「みんな、全力で楽しもう。そして街の人々に見せてあげよう。僕らの、戦闘技術と、強さを」

〈うん!〉「もちろん」「当然だわ」


 メアが、マルコが、テレジアが応和する。

 リゲルは逸る気持ちを抑えた。


 控室の向こう、闘技用のフィールドが整えられている外。そこでは、ますますの熱狂ぶりだ。

 この空気がたまらない。

 ――最善を尽くそう。リゲルはこの熱にあやかり、そう思っていた。

 


 

『さてまずは一回戦! サウル・エッド選手と、リーン・ピナ選手の闘技です!』

『サウル選手の特徴は、なんと言っても《黄砂》の魔術だよねー。無数の砂を操って、遠・中・近……どの位置からでも攻撃が出来る。変幻自在の攻撃だから防御も回避も難しい、まさに一流探索者に相応しい魔術だと思うよ~』

『その通り! じつは昨年、ギルド二級騎士数名に勝った事でも有名です』


 実況の最中。輝く砂の乱舞が、闘技場を舞う。

 捻り、うねり、雪崩のごとく迫る砂、砂、砂の嵐。

 猛烈なる砂の壁を、闘技相手の少女が懸命に避ける。右から大量の砂、左からも大量の砂。まさに砂地獄の中で――しかし華麗に少女は回避していく。


『おおっとっ! 対して闘技相手、リーン選手は見事な回避です! 何を隠そう彼女は《付与術師》! 風をまとわりつかせ、巧みにかわすのが十八番! サウル選手の砂も、華麗に回避、回避、回避ぃ! 瀑布の如く迫る砂を、紙一重でかわす姿は幻想的の一言です!』

『本人のルックスも相まって、観衆席では大いに盛り上がってるよね~』


 応援の観衆席には力が入る。


「リーンちゃん、頑張ってーっ!」

「応援してる、行け、行け、サウスの野郎なんてやっつけろ!」

「その華やかなスカートが眩しい! やれっ!」

『サウル選手が主に少数で探索を行う探索者に対して、リーン選手は大人数でのパーティが日常! そのために知り合いも多く、多くの熱烈なコールが湧き上がってます!』

『なんでも巷では、彼女のファンクラブなるものがあるんだって。おっかけ、もとい、ストーカーまがいの事をしていることもあるとか。いやー、人気者は辛いね』


 実況のさなか、怒涛の勢いの砂を、少女は華麗にかわす。

 その動き、まるで優雅なカワセミかハサブサのよう。

 近さ強さと同時に繊細さも兼ね備えた、魅せるための回避行動。


 すでに『風』の付与のみならず、『脚力』、『浮力』も《付与》で強化させている。

 自らの体に新たな『力』を付与させ、さらに風の勢いを二倍、四倍と、増加させていく。


『おおーっと! ここに来てサウル選手、猛攻に陰りが見えたぁ! さすがのランク黒銀の探索者も、無尽蔵に砂を操るのは難しいと見た! 右から砂、左から砂、未だその攻めは健在、しかしその勢いが傍目にも判るほど減じていっているーっ!』

『サウル選手の難点は、砂を操る難しさだよね。《黄砂》の魔術は一見、変幻自在で攻防も一体、攻めるも守るも自由な攻撃。けれど、膨大な砂を制御するのが難しい。だから、リーン選手はサウル選手を疲弊させるため、まず付与魔術で《風》を身に着け、そして回避しつつ時間稼ぎをする戦術ですね』


 その解説通りの展開だった。

 サウルは最初の数分こそ膨大な砂を操っていたが、やがて疲弊。

 見る間に、相手へ襲わせる砂の量が少なく、遅く、雑になっていく。


 業を煮やしたサウルが、砂で巨大なハンマーを創り上げる。しかし身の丈五メートルを越えるそれも、リーンの巧みな空中浮遊で回避される。

 その圧倒的優雅に飛ぶ様は。

 まるで伝承の《妖精》の如し――。


『ああ!? ついにサウル選手、砂の勢いが大幅に減じたーっ! ここぞとばかりにリーン選手、畳み掛ける! 細剣を構えつつ猛攻、サウル選手は砂で盾を創るのが精一杯です!』

『リーン選手、絶えずヒットアンドアウェイで少しづつ守りを削りにいってるよー。こうなるとサウル選手は為す術ないね。蝶のように舞い、蜂のように刺す――まさにリーン選手の十八番の光景だね』


 穿つ、穿つ、穿つ――リーンが滑空しながら細剣を奔らせる。

 相手のサウルは目で追うのもやっとだ。かろうじて気配から位置を特定、『砂』の盾で直撃を防ぐが――それもジリ貧。


『あ、あーっ! ついに、サウル選手の肩に一撃が入ったーっ! 体勢を崩すサウル選手! そこへ疾風怒濤、リーン選手が斬りかかるーっ!』


 もはや、勝敗は決した。

 誰もがそう思ったはずだ。

 観客も、司会も、そして相手のリーンも。


 ――だからこそ、リーンの背後、足元に迫った砂の鞭を、誰も認識出来なかった。


「あっ!?」


 不意に、リーンの足元に砂の鞭が絡みついた。そのまま砂の鞭は質量を持った普通の鞭の如く回転、勢いに負けリーンの体勢が崩れる。

 リーンは風で剥がそうとするも間に合わない。

 サウルが笑った。それは捕食者の笑みだ。耐えて耐えて待った――獰猛な肉食獣の笑み――。


『ああーっ!? なんと! サウル選手が奇襲で仕掛けた砂の鞭が、リーン選手を捕縛っ! そのまま振り回し、体勢を崩しておおおっ!? 薙ぎ払いだ、叩きつけだーっ、一気呵成にサウル選手、攻めるーっ!』

『うわ、すご……』


 砂の鞭で相手の足を捕縛したサウルはそれをぶん回す。

 闘技場の床へ向け一度、二度、強烈な勢いと共に振り下ろし。

 リーンは咄嗟に風で勢いを減じるが、間に合わない。細剣が吹き飛び全身が打たれ、意識が遠くなり、そして――。


『ああーっ!? リーン選手、失神です! 失神! 絶え間ない叩きおろしに、ついに屈服、意識を手放してしまったーっ!』

『うわぁ、これは技ありの一戦だったね。サウル選手、疲弊と見せかけて、じつは奇襲の手を忍び込ませていたかー。これは凄い。見事、意識誘導に絡めた見事な試合だったね』


 そこで闘技の終了。サウルの戦術勝ちで幕を下ろした。

 リーンが気絶した事により、相手のサウルの勝利が確定。

 観衆は悲喜こもごもだ。


「嘘だろ!? リーンちゃんが負けちまったっ!」

「くそ、くそぉ、サウルの奴、あんな姑息な手を!?」

「いやー、見ごたえあった、サウルの作戦勝ちだな!」

「さすがサウル、魅せてくれる」


 観衆席の到るところで、寸評が交わされる。

 闘技場と観衆席の間には、魔術による『障壁』がある。

 観衆に闘技者の攻撃が及ばないための配慮だ。


 しかし、同時に観衆席からの物投げ入れも防ぐ役割もあり、文句を垂れたリーン応援者の中には、帽子やら石やらベルトやら、様々なものが闘技場へ投げられた。


「ふう、なんとか勝ったか」


 その、障壁に阻まれ届かない物品を見つつ、サウルは諸手を上げる。


『強い、旨い、勝者――サウル選手っ! いやー、栄えある第一試合でした、見事、勝利を飾ったのは、ランク黒銀、《黄砂の魔術師》の異名を取る――サウル・エッド選手でした!』

『はい! それではギャンブルの掛け金配当は後ほど付与されまーす。お楽しみに。そして続く第二試合と第三試合、いずれも強者ばかりですので、観客の皆様、期待して待ってくださいねーっ!』


 司会の二人が場を盛り上げる。観衆席が、わっと熱狂した。

 ギルド・トーナメント、第一試合。初戦は策士の砂使いの勝利で幕を閉じた。

 

 

「いや、見事だったね」


 その試合ぶりを控室から眺めていたリゲルが呟いた。


「はじめの猛攻といい、劣勢の演技といい、見事だ。僕もいつか手合わせ願いたいな」


 魔術の鏡で鑑賞している傍ら、メアも感心して声を弾ませる。


〈あれ、負けてるフリしてたの? 凄いね、熱演だった!〉


 貴族令嬢ゆえ、こういった催しは初めて見るのだろう。その瞳には好奇がありありと伺える。


「ちなみに今の闘技、『鑑賞点』というのも採点されていたらしいわ」


 同じく観ていたテレジアが語る。


〈鑑賞点?〉

「ええ、闘技場の横、審査員がいる辺り。『七五点』てあるでしょ? あれ、今の闘技の『見栄えの良さ』らしいわ」

〈あ、本当だ?〉


 見れば、先程戦った闘技場のすぐ傍ら、審査員のそばに金属おプレートがある。

 そこには大きく『75』の数字と書かれており、誰もが客観的に得点が判る様になっていた。


〈ということは、さっきの戦い、けっこう凄かったってこと?〉

「そうね。砂の攻撃と風の回避による闘技、見た目にも派手だったし。お互い簡単には終わらなかった。まさに観衆を楽しませるために行われた、闘技だったってこと」

〈なるほど、すごいねー〉


 今回のギルド・トーナメントは都市の復興の祝いだ。そのため、様々なルールがある。


 選手各自に渡されたルール状には、その詳細も書かれている。

『一、武具には安全措置として加減の魔術が加えられており、致死量の攻撃は自動キャンセルさせる』

『一、闘技場の外で出れば一発敗北』


 その他、明らかに時間稼ぎとなる戦い方は認めない――など。

 なお、鑑賞点が最大で一定以上超えた選手には、追加の景品も付与されるとあった。


〈これは俄然、やる気出てきたよ!〉

「はは、メアさん派手な攻撃方法だから、きっと点数も高いよ」


 マルコもルール状の羊皮紙をを読みながら笑う。

 メアの《宝剣》は華麗な武器の代名詞だ。きっと、鮮烈な戦闘になるだろう。

 リゲルが話をまとめていく。


「そうだね。……さて、次は二回戦の番だ。その後はメアだよね? そろそろ準備に入ったら?」

〈うん、頑張ってくるね!〉


 メア空中でくるくる周り、笑顔で語る。

 続く二回戦の後は、いよいよ彼女の出番だ。

 優勝候補の一角として、奮戦をしよう――そんな、気概が彼女からは発せられていた。

 


 

『さあ、やってまいりました第三試合! 続いては優勝候補、メア・レストール嬢の入場です!』

『有名なレストール家の息女。彼女は、《宝剣》による華麗な攻撃が有名ですね。それでいて、可憐なゴースト少女。いやー、人気あるよね、今も凄い歓声! やっぱり街での復興活動、そして容姿の華麗さも相まって、すでに観衆席は大盛り上がり!』

「メ・ア・ちゃん!」「メ・ア・ちゃん!」「メ・ア・ちゃん!」


 そんなラブコールが響き渡っている。

 仮に事前の人気投票をした場合、彼女が首位を取るのでは、といった勢いだ。

 闘技場、壇上ではメアがふわふわと浮かんで笑顔を浮かべていた。


〈みんあー、がんばるよー!〉


 声援がさらに大盛りあがりになっていく。


『――さて、闘技相手は《烈影》のシン・アッガーハ選手! 忍びの集団、《黒衣の骸》に所属する、隠密行動に長けたアサシン! その類まれな身体能力は天下一品! 事前情報では火遁、水遁、その他様々な忍術スキルを使います! 今回はどんな武技が出るのかーっ!?』


 メアの相対者、黒尽くめの痩身男が、静かに前に出る。


「ふっ、お初にお目にかかる。メア嬢、レストール家の噂は俺も聞いている。互いに杭のない、良き闘技をしよう」

〈うん! 全力で行くよ!〉


 二人が所定の位置につく。司会が間を溜める。


 観衆の緊張が、にわかに膨れ上がった。

 方や宝剣使いの幽霊令嬢、方や忍びの里のアサシン。その勝負の行方は――。


『闘技、第三試合、開始ですっ!』


「さあ、我が忍びの術受けよ! 『アサシンを極めし者』と謳われたこの――」

〈行け、烈剣クロノス、天剣ウラノス!〉


 ドドドドドドッ! と。

 瞬速で迫った《宝剣》が、雷のように迸った。


 黒尽くめのシンが無様にぶっ飛ぶ。

 そのまま場外まで飛んでいく。

 一瞬だった。

 まさに一瞬で勝負は終わりを迎えていた。


『ああーっ!? なんとシン選手、前口上を語っているうちに、あっけなく終わってしまったーっ!? ……え。ルールでは場外になった選手は、一発でアウトです』

『なのでシン選手、今回何も見せ場がないまま終わりました。うわあ……これはひどい』

〈やった、勝ったよー!〉


 絶句する司会陣とは裏腹に、メアが笑顔で手を振る。

 観衆席では歓声が飛び交っていた。

 そして悲鳴も。


「くそおおお! シンのバカ野郎! 賭け金たんぱり乗せてたのに!」

「一瞬で負けやがって! 掛け金返せアホやろーっ!」

「さすがメアちゃんだ、可愛い、強い、そこに痺れるぅ!」

「メ・ア・ちゃん!」

「メ・ア・ちゃん!」


 メアへの応援コールとシンへの罵声が止まらない。

 トーナメント第一回戦、第三試合――それはあっけなく終了した。



 控室で、リゲルは苦笑いするしかない。


「あはは……まあメアらしいけど」


 ちなみに、メアの初戦の鑑賞点は『78点』。

 瞬殺だったが、華麗だったための高得点判定だろう。


 

 そして次はいよいよ――マルコとテレジアの対決に移る。

 


お読み頂き、ありがとうございます。

次の更新は2週間後、11月21日になります。

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