第七十五話 怪盗パンツ伯爵
「え? 下着泥棒?」
とある夕日の傾く屋敷の中。
魔石使いのリゲルは、突然伝えられた珍報に首を傾げた。
〈そうみたい。なんでも、ここから三地区行った先で盗難が多発してるんだって。それも『下着泥棒』! 犯人は未だ不明、今は衛兵さんの三割を費やして対策中だけど捕まらないらしいよ〉
「そ、そうなんだ……」
宙をふわふわと浮きながら言う幽霊少女メアの言葉に、リゲルは何とも言えない顔を返す。
下着泥棒。あんな『青魔石事変』のような事があった後に、よくもそんな事を行う輩がいるものだ。
いや、ある意味普通の、犯罪が起こった事で平常に移りつつある、という事かもしれない。
「それで――」
精霊の少女、『白のミュリー』が、補足して語っていく。
「犯人は必ず犯行予告をして盗みを働くらしいです。それでも捕まらないあたり……相当な手足れみたいですね。衛兵さんたちも、相当苦慮しているようです」
「そうなんだ」
「はい、ギルドのレベッカさんも、少なくない被害に頭を悩ませているみたいです」
『桃のミュリー』も説明を付け足す。
最近は白と桃、二人のミュリーに囲まれて会話がするのは日常だ。
テレジア辺りからは「両手に花でいいわね」なんて言われる。
そう言われると少し、もやもやするのだが……それはさておき。
「なるほど、探索者にも被害がいっているのか……それはまた、難儀な事だね」
リゲルは同情の声を返す。
――下着泥棒。
それは、世の女性にとって切実な問題だろう。
ある日突然、お気に入りの下着が盗まれる。あるいは使いやすい下着が失われる。
単純に、見知らぬ相手に奪われる不気味さもある。嫌悪感ある犯罪。
そういったものとは無縁である女性はいないだろう。
今のところ、この屋敷の中では被害は出ていない。
メアは幽霊なので無理だが――それでも、二人のミュリー、テレジアには大問題だ。
すでに被害に遭った女性は災難だろうな、と思いつつ、リゲルは言った。
「それで? 僕にその話を振ってきたということは、何か話があるんだよね? その下着泥棒絡みで?」
〈うん、他でもない、リゲルさんに関わる問題なの。切実で、重大なんだよ〉
「へえ……?」
メアが、珍しく深刻な顔で言う。
まさか、今度はミュリーが関わる問題なのだろうか?
ならば無視は出来ないな。
そう、リゲルは思いかけ――。
〈――じつは、犯行予告が、リゲルさん宛てに届いたの!〉
「……え? いや、なんだって?」
リゲルは目を瞬かせた。
気のせいだろうか。
いま『男』の自分宛てに『下着泥棒』の予告がきたとかすごいこと言われたような……。
急いでメアが《浮遊術》で差し出した羊皮紙を受け取る。
黒いインクで、荒々しく書かれた文字――それをリゲルは読んでみると。
【今宵、貴様のパンツを盗みにいく。覚悟しておけリゲル。 貴様の下着は、我輩のものだ。 怪盗パンツ伯爵より】
「いやいやいやちょっと待って!?」
リゲルは悲鳴を上げながら立ち上がる。
その反動で、飲んでいた紅茶がテーブルにこぼれた。
「何コレ!? 怪盗とか名乗っているのも怪しいし、伯爵何やってんの!? あとわざわざ本当に予告状出さないでよ! そして何より――」
リゲルはわなわなと震える。
「なぜよりによって僕の下着なんだ!?」
メアは顔をそむけた。
もちろん二人のミュリーも恥ずかしそうにして、目を合わせないようにしている。
〈いや、その、リゲルさん。あの……リゲルさんって、たまにちょくちょく活躍してるよね? この前の『レーアス』への捜索とか。『青魔石事変』の事とか。だから、その噂が広がって、街では割と評判が良くなって〉
「うん、それは判る」
「街ではリゲルさんのファン団体とか、応援集団とか、いくつか出来たらしいです」
「うん、まあそれも判る」
「だから、リゲルさんに興味持つ人が多くなったんです。その中で、『下着』を盗みたい人も現れたのではないかと」
「ごめんそこは判らない!」
リゲルの叫びに、桃のミュリーが補足する。
「最近では『リゲルさんの寝顔撮ろうよ愛好会』っていうディープなファンクラブも出来ていて……」
「いやいやいや平和すぎるでしょ!? どんだけこの都市は復興したの!? ――いや、それ自体はいいんだよ。ある意味平和な証だし。でも、これは駄目だ! ――そもそも何故、僕のパンツなんだ!? 気味が悪いよっ!? ああああ、鳥肌立ってきた……っ!」
思わず腕を押さえ小さく震えだすリゲル。
彼は探索者として相当に強いが、それでも怖いものは怖い。
何せ先程世の女性の安寧を憂いたが、自分に災難が回るとは……まさか下着泥棒の当事者になったらこれほど寒気がするとは。
正直、どこか他人事だと思っていたと、認識が甘かったとリゲルは猛省する。
「そ、それよりどうしようか……。盗むの、今宵とか書いてあるんだけど……」
リゲルは死んだ魚のような目で少女たちに問いかける。
〈そ、そうなんだよね。今夜だから対策立てようにも時間が〉
「すでに五時を回りましたし、今から衛兵さんに通達して守ってもらうとか……?」
「その程度で足りるかな? でもうーん……しかし」
相手は幾度も下着を盗み通した百戦錬磨の怪盗。というか下着ドロである。
数々の防備を掻い潜り、獲物を取得した強者、というかキワモノ。
そんな相手を前に、今から衛兵を呼びつけ、それだけで防げるとは思えない。
「そもそもこの怪盗……パンツ伯爵だっけ……? なんで僕のパンツを……? というか男性の下着ばかり盗んできたの? もしかしてホモなの? ゲイなの?」
〈……えっとね、噂では筋肉モリモリのマッチョ男らしいよ〉
「ええ……」
「たまに男性の衛兵さんに追われると、『ハグ』して『キス』して逃げるとか」
「待って!? それはさすがに嘘でしょ!?」
「あとね、あまりの勢いに屈して、ホモに目覚め、『なあ、ヤラないか?』と伝染してしまう人もいるとか」
「うあああああやめてやめて! 怖すぎる!」
変態だった。どうしようもなくまごうことなき変態だった。
筋肉もりもりのホモが!
僕の下着を盗んで(たぶん)クンカクンカする!?
おまけに、男が追うと襲われるなど、そんな光景、想像するだけでおぞましい!
「ど、どうにかして防ごう! メア、護衛の騎士たちを呼んできて!」
〈うん、わかった!〉
「ミュリー達は『祈り』で僕の能力を底上げして! いざとなれば僕が引っ捕らえる!」
「わ、わかりました……っ」「任せてください!」
三人の美少女が急いで動き出す。
正直、神聖なミュリー達の祈りの『加護』を、こんなことで使うのは忍びない。
だが背に腹は代えられない。
リゲルは何としても『怪盗パンツ伯爵』なる人物を捕らえるつもりだった。
そして夜――。
「諸君! 僕の下着を盗まんとする不届き者を捕らえる聖戦だ! 今宵、僕の下着を狙うのは、法の網を掻い潜って盗んできた強者! しかし、僕の拠点でそんな事はさせない! 愚行者は滅ぼす! 蛮行は繰り返させない! 戦え! 戦うんだ、僕の下着のために!」
「「「おおお、おおっ!」」」
あまりの困惑ぶりにちょっとテンションが狂い気味のリゲルが中庭で演説する。
眼の前には護衛のギルド騎士や応援の衛兵たち数十名がおり、合わせて応和する。
「絶対に賊を捕らえてみせます!」
「我ら男にとって窮地だからな!」「恩人に借りを返すチャンスです!」
士気高い騎士や傭兵たち。
彼らに向かい、リゲルが大仰に腕を振って叫ぶ。
「奴は変態だ! しかし男性の下着を奪うという不届きも、今宵で終わり! 僕の下着に手をかけかけたこと、後悔させてあげよう!」
「「おお、おお、おおお」」
「こんな事態でも、雄々しく叫ぶリゲルさん素敵です」
白のミュリーと桃のミュリーがうっとりと呟いた。
「あの声、あの仕草、どれを取っても様になります」
「楽興にこそ奮起する姿勢、さすがリゲルさんです」
〈いやあ……そんな呑気な心境じゃないと思うなぁ、あたしは〉
中庭の様子を自室から眺めてちょっとうっとりするミュリー二人とは裏腹に、横で『六宝剣』を構えつつ呟くメア。
メアには、いざというとき『六宝剣』で怪盗をぶちのめす役割を頼んである。
たかが怪盗相手に大袈裟とも思われるが、念には念だ。
急所さえ外せば後は尋問なりなんなりする予定である。
リゲルが大声を張り上げた。
「さあ奮い立て! 同志たちよ! 決戦は近い! 己の責務のために、励んでほしい!」
「おおおおっ!」
「リゲルさんのために!」「「おおおっ、おおおお――っ!」」」
そうして、夜闇が舞い降りる屋敷の中庭で、雄々しき蛮声が木霊した。
激烈なる、パンツ騒動の始まりだった。
数分後。
「さあ来るがいいよ賊めが!」
リゲルは《マッドカメリオン》の魔石で『透明化』して屋敷に潜んでいた。
彼の狙いは、『怪盗』が下着を盗んだ瞬間に突撃して確保することである。
大きなベランダの外には現在、リゲルの『パンツ』が干してある。
これ見よがしに三つ、どれも洗ったばかりだ。
それらを餌に、怪盗を捕らえようという算段。
もちろん、中庭や屋敷の中など、各所には衛兵やギルド騎士も配置してある。
しかし相手は強敵、万一護りが突破された場合も有り得る。そんな事態のため、リゲル自ら確保しようという計画。
『こちら第一班、異常なし』
『同じく、北門には異常なし』
『西口やその周囲にも異常はありません』
《遠話》が可能な、ピアス型の『魔術具』から各衛兵やギルド騎士たちの報告がリゲルに届く。
『南門にも異常はありませんな』
〈東南の花畑の辺りもないよ。……今夜はもう来ないかもしれないね〉
「いや、各自油断はするな。賊は必ず来るはずだ!」
情報によれば、『怪盗パンツ伯爵』は一度油断させ、他者の緊張が緩んだ隙を狙うのが常道らしい。
衛兵の中にまぎれていたり、庭師に化けていたり、執事に扮していたり……その巧妙な手口の持ち主はまさしく驚異。
油断する事はあり得なかった。
「さあ、来るがいい……今宵、君の蛮行に終止符を打ってあげよう……」
ベランダの見える部屋の片隅で、『透明化』しながらリゲルは呟いた。
そして三時間後。
すでに時刻は深夜二時半、そろそろ眠気が緊張の薄れる時間帯。
だが賊はまだ現れない。
未だ、奴は来ないのか……? それとも、今日は来ない……?
そう、リゲルが思いかけた、その時。
――カーテンが、わずかに揺れた。
しかも三つ干してあるパンツのうち、一つが勝手に動いているではないか!
その間、わずか0・3秒の出来事!
「(――早い!? 奴も《透明》の魔術を使うのか!? だが甘いな! 僕には魔石とミュリーの『加護』がある!)」
《隠蔽》や《透明》など、リゲルは『魔石』によって使い慣れている。
さらに、今はミュリー達の『加護』で速力は六倍だ。
《ケルピー》の魔石で脚力を、そして《ハーピー》の魔石で追い風状態を、さらにはミュリーの《加護》で準備万端。
かつて、《迷宮》で戦った《ロードオブミミック改》の戦闘並みの速度で迫る。
「はあああっ!」
時間にしてわずか0・一秒、その間にカーテンの近くにより、さらに今まさにパンツを盗まれんとした『怪盗』の手を、リゲルは捕らえる。
「うあ!?」
視えない悲鳴が、眼の前の空間から上がった。
怪盗の悲鳴だ。
リゲルは《解除》の力を持つ魔石で対処。相手の『透明化』が、剥がれていく。
徐々に鮮明になる相手の姿。
そして、顕になる怪盗の姿に――。
リゲルは、驚愕した。
「え、あ、子供!?」
リゲルが捕らえたのは、まだ年端もいかぬ『子供』だった。
年齢にして、六歳になるかどうかの男児である。
意外にも小さすぎる怪盗の正体。思わず、リゲルは目をしばたたかせる。
「うう、捕まっちゃったよぉ」
「え、き、君が怪盗パンツ伯爵の正体……? そんな馬鹿な……もっと大きな男を想像していたんだけど……」
情報によれば、怪盗は筋肉マッスルな男だったはず。それが誤報で、まさか本当は小さな男の子だったとは……。
意外過ぎる真実に、リゲルの掴む手がわずかに緩む。
「き、君が本当に……悪名高き、『怪盗パンツ伯爵』なのかい?」
「う、うん……」
意外にも彼は正直に答えた。
念の為、《真贋》の力の『魔石』でその言葉が真実か調べてみる。
確かに彼が犯人らしい。虚偽ならば魔石がそう反応するはず。
それがないということは、目の前の『男の子』が、怪盗パンツ伯爵なのだろう。
「どうして、こんなことを……?」
男の子の手を掴みながら、リゲルは問いかける。
「じつは、僕の家は『貧乏』で……それで、お金が必要なの。だから強い探索者のパンツなら、『好事家』が高く買ってくれるから……」
「好事家……」
リゲルは呻いた。
なるほど、『有名人』の所有物なら高く買う物好きはいつの世もいるだろう。
それの収集を『彼』が行っていたということだ。
この場合、『好事家』とは男の下着で興奮する変態どもである。
街には女の下着には一切興味を示さず、『男の』下着にしか興奮しない変態。
そうした『客』のために、男の子は盗みを繰り返したと言うのだ。
何という――ろくでもない、真実だろう。この子はただお金に困っているゆえ、盗みを働いたのだ。
「そ、そうか……大変だったね。そんなことをしてまで」
こんな小さな男の子なのに……。
やむをえぬ事情でそうなったのだろう。思わず、同情の声をかけるリゲル。
「うん……家が貧乏なのは本当に苦しい……いつも僕は捕まる恐怖と戦ってきたんだ」
切実そうに、そう語る男の子。
その様子はいかにも純朴で、可哀想な様子。
「ま、まあ事情はわかった。けれど盗みはいけないことだ。今から衛兵たちのところに行くからね。そうして罪を償い、反省を促すんだ」
辛いだろうが、罪は罪だ。
そう言って、ぐいと男の子を引っ張ろうとするリゲル。
しかし何だろう、何か嫌な予感がリゲルにはした。
思わず、振り返ろうとしたその瞬間。
「ふふはは! 掛かったな! 愚か者め、貴様なんぞに捕まらぬよ!」
男の子の声が高らかに響いた。
いや、『男の子』の声というか、途中から野太い声に変わっていた。
それどころかさらには腕は太く丸太のように『肥大化』し、さらには胴体も脚も膨れ上がり、何から何まで『巨大化』していく。
ズオオ、ズオオ、ズオオ……ッ! と。
その背丈、じつに二メートル半オーバー。
気づけば男の子は完全に、『筋肉マッスル』なる『巨漢』となっていた。
それは、まるで巨大なゴリラの如き大男が、リゲルを見下ろしていく。
「え? え、えええ!?」
「フハハハハハ! これぞ我が正体! 油断したな探索者! 貴様のパンツ、貰い受ける!」
そう言い、敏捷な獣のごとく跳び、リゲルの拘束を弾く男。
パンツ伯爵は、即座に干してある下着に手をかけた。そしてベランダの端を掴み、その場から逃れようとする。
「さ、させるかっ!」
リゲルは絶叫した。
怪盗パンツ伯爵の正体がじつは小さな男の子であり、それどころかそれは魔術の《偽装》で相手を油断させ、相手が気が緩んだところを下着を盗んで去る! ――という驚愕の事実など吹き飛んだ。
「君は、僕を騙した上、盗みを働く気か!」
「フハハハ! 油断する方が愚かよ! さらばだ探索者! 貴様の下着、心ゆくまで我輩が愛でてやろう! ――クンカクンカ!」
「やめて! やめろぉぉぉぉぉっ!」
巨体かつ俊敏な巨漢が夜風を切り裂き中庭を駆け抜ける。
絶叫し魔石をばら撒き、捕らえんとするリゲル。
他者の下着を奪う変態と魔石使い――
月が輝く夜の闇の中――彼らの譲れない戦いの幕が開かれた。
そして翌日。
〈……で? リゲルさん、捕まえたの?〉
騒動が収まり皆が集まった中庭の中央で、代表してメアが訪ねる。
「……ああ、うん……もちろん捕まえたよ……。そしてあいつを監獄送りにしたさ。でもあの戦いは、何というか思い出したくないね。色々とね……」
脱力してうなだれるリゲル。
あの後、リゲルは夜通し、怪盗パンツ伯爵を追いかけて魔石をぶっ放しまくった。
もちろん街の建物などには配慮した。
が、それでもかなり本気、彼なりに全力だった、
しかし相手も百戦錬磨の怪盗、一筋縄ではいかず、数時間に及ぶ逃走劇。
じつに五十八個もの魔石を奮った大騒動――これほどの相手はほぼいなかった。
「彼さ……《下着召喚》とかいう珍妙な魔術を使うんだよね。ランダムにこの街にある『パンツ』を召喚する、っていうおかしな魔術でさ……それで、脱ぎたての『パンツ』が僕に襲いかかってきて……」
〈うわあ……〉
加齢臭、香水、尿……その他口では言えない臭いのこびりついた下着まで。
怪盗パンツ伯爵は、街の人々のあらゆるパンツを召喚し、リゲルへ降り注がせた。
幼女のパンツ。
少女のパンツ。
淑女のパンツ。
熟女のパンツ。
まあ、それくらいならマシな方だろう。
だが問題は『思春期の少年』のパンツ、『中年男』のパンツ、『加齢臭』の老人パンツ、『お漏らし』やその他諸々……様々な『もの』が付いた下着の場合である。
正直、あれなら火炎や氷風の方がマシだった。
リゲルは思い知った。
この世には、《ロードオブミミック》や《ジェノサイドワイバーン》などより、よほど恐ろしいモノが存在するのだと。
「そ、それでもそんな相手を捕らえたリゲルさん、素敵です」
「そうですよ、わたしにとって誇りです」
頭上、中庭の見通せるベランダからミュリー達が褒めてくれる。
いや、嬉しいのだが。
ここでその賛辞は素直に喜べない。とうより逆効果だ。
死んだ魚のような目になるリゲル。当然のように、周りの衛兵やギルド騎士も同情の目である。
「ああ、疲れた……本当に疲れたよ……」
あの、パンツに次ぐパンツの攻撃はもう受けたくない。
悪夢のごとき数時間……もうあんな夜は二度と御免だと、思うリゲルであった。
数日後。
〈リゲルさんリゲルさん大変! 今度は『怪人パンツ・クイーン公爵』とか名乗る変態が――〉
「もうそういうのいいから! 僕に穏やかな夜を返してくれ! 嫌だからね、僕は絶対関わらないからね!」
リゲルの絶叫が響く。
彼の戦いは続く。
どこまでも、いつまでも。
お読みいただきましてありがとうございます。
読んで判る通り、バカ話です。シリアスを書いた反動と言いますが、毛色が違う話を書きたいと思い、入れてみました。
毛色が違いすぎるような気がしますが、災難の裏でこのような愉快な日常もリゲルの日々にはあると思って頂ければ。
リゲル的にはちっとも日常とは思いたくないでしょうが。
さて、次回の更新は二週間後、9月12日になります。
次回も楽しんで頂ければ幸いです。





