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第十五話  幽霊少女のチート宝剣

 悔しさがメアの内を駆け巡る。

 仲間となり、共に探索し、心を通わせた少年。彼に対し、何も貢献する事が出来なかった。

 二年半もの間自分を苦しめた《結界》を破り、優しくしてくれた彼。その期待に応えられないのが悔しい。


 リゲルとの、短くも濃密な記憶が浮かぶ。

 色鮮やかに彩られるのは楽しげに会話した彼の姿や、呆れた顔、笑った顔だ。

 どれも、大切な光景だった。父や母や使用人、かつて楽しかった時と同じ。いや。それ以上の素敵な思い出が幻影となっては消えていく。

 それは、もはや大切な光景だ。メアは、それらが失われるのに耐えられない。


 想像してしまう。

 彼の死の姿。彼が血に沈み、息絶え、手足をばらばらにされて倒れる姿。そんなものは嫌だ、嫌だ、嫌だ!

 もう父や母や使用人が死んだ時みたいなのは絶対に嫌だ。必ず、必ず彼を生還させると誓いながら、メアは涙すらこぼし、地上へ急ぐ。

 その途中――。


「え?」


 視界の片隅に、光るものを発見する。

 何だろうあれ、さっきまで、あんなものはなかったはず。

 導かれるようにそちらに寄っていくと、壁のように擬態していたドアの隙間から、光が漏れている。

 ――呼んでいる?

 なんとなく、メアは判った。

 それは懐かしい、『光』だった。

 そう、もうとてつもなく遠い昔に思える二年半前、確かあんな光を、どこかで見た記憶が――。


『メアよ』


 頭に直接響くような、厳格な声が、突如メアへ届いた。


〈え?〉

『メアよ、この声が聴こえてるということは、《結界》が消えたのか。――すまぬ。お前には、きちんとした別れも言い残す事ができなかった。父として、不甲斐ない私を許しておくれ』

〈その声……まさか……まさか!?〉


 懐かしさと同時に、『安心』をも届けてくれる声に、メアは泣きそうになった。

 それは、その声は――。


『メアよ。《錬金王》アーデルがこの屋敷を壊滅させることはもはや防げないだろう。ゆえに私は、この声がお前に届くのか、それすら判らぬがここに想いを残す。……願わくば、これがかの《錬金王》を倒す力となる事を』


 メアは、急ぎ声のする隠し扉を《浮遊術》で外した。分厚い壁が埃と共に引き離され、勢いづけてメアは、その扉の内へ入る。


 ――そこには、煌びやかな、『宝剣』が存在していた。

 それも一本だけではない。

 紅。蒼。黄。紫。橙。桃。黒。白。黄金。

 総数九本もの輝ける『宝剣』が、狭い部屋に、突き刺さっていた。


『それは我が『レストール家』の研究の結晶。数多の犠牲と実験を繰り返し創られたもの。これらはいずれも《迷宮》の魔物と希少金属を寄り集めて造りし『最強の宝剣』。錬金王を討ち、平和を取り戻すための力である』


 力強く、懐かしい声が部屋へと染み渡っていく。


『メアよ、この宝剣を扱える者にこれを託せ。そして必ずや我らの無念を晴らしてくれ。残すべき物が、こんな物騒な剣で済まない。メアよ、愛している。いつまでも、いつまでも――』


 声は、記録したものを再生させるだけなのか、一方的に語ってやがて消えてしまう。


 残るのは、父が屋敷の粋を集めて創った、最強なる『宝剣』。

 空間に、それら『九本の宝剣』の名が記される。すなわち――。

 烈剣クロノス。

 天剣ウラノス。

 魔剣ネメシス。

 酒剣バッカス。

 盗剣ヘルメス。

 愛剣ビーナス。

 冥剣ハーデス。

 災剣ケイオス。

 界剣コスモス。

 古の神話に語られし神々の名を借りた、至高の宝剣が暁の明かりのごとく光っている。


〈うん……わかったよ、お父様……〉


 声の主にメアは優しく語りかける。もう会えないけど。もう触れないけど。災厄を招いた《錬金王》は、この場にいないけれど。

 最後に素敵な贈り物を残してくれた父に、感謝の意を述べる。


〈これであたしは逃げなくてもいいんだね。お父様……でも、あたしは他人に力を預けるなんてしないよ! あたしは、あたしの手で大事な人を助ける!〉


 この宝剣を扱える者に託せ?

 否、そんな回りくどいことはしない。自分は今、力を必要としているのだから。全てを自分で使いこなしてみせるから。


〈見ててお父様、あたし、絶対に今度こそ守ってみせるよ。――大切な、人を〉


《浮遊術》で浮かした『九本の宝剣』。頼もしく、力強く輝くそれらを宙に円環状に並べながら、メアは叫んだ。


〈力がない仲間なんて仲間じゃない。だから今行くよ――待ってて、リゲルさん!〉

 

 

†   †



「くっ……」


 立て続けに振るわれた鉄球の余波で吹き飛び、リゲルは舌打ちした。

 状況は良くない。

 すでに魔石は三割を切り、刻一刻と終焉が迫っている。ただでさえ冴え渡る相手の攻撃はここにきてより苛烈になり、『まるで体に馴染んできた』ように怒涛の刺突、斬撃、打撃と、雨あられの攻撃を繰り広げてくる。

 一級探索者の姿と能力を、次々引き出して存分に振るう襲撃者。細剣の青年が《ストーンリザード》の鱗を細切れにしたかと思えば鉄球老人の打撃が辺りをなぎ払い、大戦斧の巨漢が盛大な打ち下ろしを放ったかと思えば女武闘家の格闘が宙を穿つ。

 リゲルが反撃に《ホブウルフ》、《コボルト》、《レイスソード》の魔石で斬撃の嵐を見舞うが当たらない。秒間数十もの斬撃は、盗賊少年となって超速で走る襲撃者にかすりもしなかった。

 

「ちっ」


 またも舌打ちしながらリゲルは《バンシー》、《マンドラゴラ》、《クライホーク》の魔石を解放する。物理攻撃ではなく『音』で相手を硬直させる算段だ。

 しかし駄目だ、相手は『細剣の二刀流青年』に変化すると、剣と剣と打ち鳴らして音を相殺してしまう。


 ――音攻撃への対処に慣れている!? それなら!


「毒撒け《ベノムアント》! 痺れさせろ《パラライズビー》! 眠りを誘え《マタンゴ》!」


 毒、麻痺、眠りの胞子や霧――各種状態異常の攻撃ばら撒くも相手は意にも介さない。

 相手の装備品には『状態異常耐性』が付与されており、毒などは効果がないのだ。


「(――第八迷宮《砂楼閣》への対策とはね。まずいな、どうする!?)」


 目眩ましに《ダースラット》の魔石を使い、黒い息吹ブレスを吐き出させるが時間稼ぎにもならない。

 相手の装備には『位置把握』の付与装備もあり、霧や閃光、砂煙といった目眩ましは意味がないのだ。


 相手は実力だけでなく装備も間違いなく一級品。

 状態異常も音攻撃も駄目、おまけに目眩ましも効かない。地の力でも負けている。

 しかもこの《砂楼閣》の迷宮内では、魔術が使えない。

 付与エンチャント魔術で己を強化できない状況はリゲルに無視出来ぬ焦りを呼ぶ。

 長く染み込んだ戦闘経験により反射でつい『付与エンチャント』しようとして、かき消される無情。頭で『魔術は無効』と判っていても、魔術に頼ろうとする自分に笑ってしまう。


 まさに必死。死神が背筋より笑っている幻想が浮かぶ。

 いや! 違う! まだ、まだだ!


「来いよ亡霊。紛い物にしかなれない君に、勝利はない」


 挑発は意味がある。相手には意識がある。ゆえに怒り、激情、そこにつけ入る隙はある。


「《オーガ》! 《トロール》! 《ストーンマン》! ――敵を、打ち潰せ!」


 第五迷宮《岩窟》の第十、及び第三十、第四十層の『階層主』の魔石を解放。膨大なる力を秘める、大盤振る舞いの攻撃。


 豪腕と巨体の猛威が襲撃者を押し潰し、轟音と振動が迷宮内を揺らす。

 辺りの砂が吹き飛び、一瞬で窪地と化した。

 さらにリゲルは第六十階層の『階層主』、《アンフィスバエナ》の魔石を解放。

 炎と氷の猛烈な息吹ブレスが、双頭の大蛇から放たれ襲撃者を呑み込んで行く。

 まだ攻撃は終わらない。


「追撃だ! 《ラミア》! 睡眠の霧! 麻痺毒の靄! 魅了チャームの――」


 だが、それは悪手だった。

 状態異常は効かない。それがたとえ五十階層に住まう『階層主』の攻撃でも、相手には通じないと。


 判っていたはずなのに。

 状態異常は装備で無効化されるのに。

 疲労による判断ミスだった。

 集中力が切れていた。

 《ラミア》の攻撃は弾かれる。

 取り返しはつかない。オーガの、トロールの、ストーンマンの拳が襲撃者の棘付き鉄球で粉々に粉砕される。

 さらに細剣の二刀流使いに変じた襲撃者が、剣圧で《アンフィスバエナ》のブレスをも吹き飛ばす。


「僕はなんて馬鹿だ!」


 もはや万事休すと言えるだろう。

 タイラントワームの魔石は使えない。

 威力があり過ぎてこの狭い通路では自殺行為。

 逃げるための魔石もなく、回復の薬草もない。


「こんな――」


 時が遅く感じられる。

 圧縮された時間の中、襲撃者が女武闘家になり、剛拳をリゲルへ振りかぶる動作が見える。

 死の前触れ。

 灰色となる世界。

 消える音。

 全てがゆっくりと色あせていく光景の中で。

 リゲルは。


「こんなことで――」


 鋼をも穿つ相手の剛拳が。

 リゲルの顔面に、無慈悲に、真っ直ぐ叩き込まれかけ――。

 彼の前に、死神が舞い降りかけんとした時。

 

〈――――――間に、合え――――――――――――っ!〉

 

 横合いから、閃光のように飛び出した『宝剣』が、襲撃者を吹き飛ばした。

 その威力は凄まじく、女武闘家を紙切れのように飛ばし、砂の壁に陥没させる。


「メア!?」

〈――リゲルさん!〉


 背後から颯爽と参上したゴースト少女は、抱きつかんばかりの勢いで寄る。


「メア、魔石はどうしたんだ! 地上へ――」

〈そんなものより! もっと強い物が手に入ったの!〉


 言われてリゲルは気づく。

 彼女を取り巻くかのように円環状に浮かぶ九本の宝剣。

 紅、蒼、黄、紫、橙、桃、黒、白、黄金……いずれも宝石と見紛うほどの輝きと、業物にしかありえない刃の煌びやかさが砂地に映える。

 壮麗な九本の新たなる力。

 闇を祓う暁の如き輝きの宝剣を従え、メアは叫ぶ。


〈お父様からの贈り物だよ! これで百人力……いや千人力!〉


 砂が飛び散り咆哮と共に襲撃者が飛び出す。

 野獣もかくやというその勢いに動じず、メアは瞑目。九本の宝剣に《浮遊術》を込め、精神を整えると、開眼。


〈行け! 《烈剣クロノス》!〉


 一瞬の閃光と化した宝剣の一本が、襲撃者を石ころのように吹き飛ばす。

 瞬間、細剣の二刀流青年に変じた襲撃者だが、蒼と黒の宝剣に弾かれ地面に衝突。その衝撃も終わらぬまま襲撃者は盗賊の少年になると、リゲルへ突貫した。


〈させないよ! 《魔剣ネメシス》!〉


 脳天から叩き降ろされた黒い宝剣の一撃に襲撃者は陥没。

 即座に、メアの回りで残る宝剣が発光。

 橙の宝剣、黄の宝剣、桃の宝剣が《浮遊術》によって、砲弾のように『射出』されると――襲撃者とその周囲に盛大な爆音と衝撃を撒き散らした。


〈まだまだ! 《天剣ウラノス》! 《冥剣ハーデス》! 《災剣ケイオス》! 行って!〉


 蒼と白と紫の宝剣が、波濤のごとき激しい激奏を奏でた。

 射出され圧倒的な威力を備えた宝剣が、襲撃者を打って打って打ちまくり、砂を炸裂させ何十メートルも弾き返す。

 だが、それでも襲撃者は一流の装備を巧みに操ると、顔を、腕を、脚を、淡い燐光で覆い瞬間移動を果たした。


『短距離転移』のスキルが付与された、高位装備の異能。

 移動場所はリゲルと目と鼻の先。

 翻る二刀のダガー。

 けれどメアは動じない。

 それくらいは予測できた。

 あの日、《錬金王》アーデルの戦いを見た彼女は知っている。

 最上の戦いとはこんなものではないと。

 まだ上があるのだと。

 知っているからこそ、彼女は油断せず、慢心せず、託された父の宝剣を操る。


〈力を貸して! レストール家の名剣! 《烈剣クロノス》! 《魔剣ネメシス》!〉


 紅と黒の宝剣が襲撃者の斬撃を阻み――。


〈《天剣ウラノス》! 《魔剣ネメシス》! 《冥剣ハーデス》! 切り刻んで!〉


 三つの宝剣が咄嗟に下がる襲撃者を包囲し逃げ場を防ぎ、裁断機のように斬りつける。


 さしもの一級装備をつけた襲撃者の鎧も削られ破片が散乱した。

 素晴らしい斬れ味だ。襲撃者がダガーを防御にあてるがたちまち三本の宝剣に斬られ宙に四散する。

 盗賊少年では勝てぬと判るや襲撃者は『鉄球の老人』へ変化――力には力と、真っ向から棘付き鉄球を宝剣に叩きつける。


〈レストール家、護身剣闘術、第四方陣、『流閃の構え』!〉


 メアは九本の宝剣を斜めに配置させることで鉄球の勢いを削ぎ、明後日の方向へ向かった鉄球を、残る四本で裁断する。

 バラバラと空中に散る棘付き鉄球。

 襲撃者は吠えた。金髪の青年、短剣の少年、盗賊の少年へと変じ幻惑すると、そのまま雷のようにリゲルへ突貫してきた。


〈無駄だよ! レストール家護身剣闘術、第三方陣、『牙裂の構え』!〉


 九本の宝剣のうち三本が鏃状に待ち伏せし、残る六本が左右、獣の牙のように襲撃者へ襲いかかる。

 天井や床を蹴りジグザクに走り難を逃れた襲撃者だが、さらにメアの紅の宝剣や蒼の宝剣、白の宝剣が阻害と斬撃を絡め追い詰める。


 リゲルは驚愕していた。

 あの斬れ味、あの強度、どれをとっても一級品、いや超一級品と言っていい。

 おとぎ話や伝承でしか語られないような超強力な宝剣。《六皇聖剣》の聖剣すら比肩し得る。名剣を超えた名剣の乱舞がそこにあった。


 紅、蒼、黄、紫、橙、桃、黒、白、黄金……それ自体が壮麗な様相の宝剣は、まるで流星のよう。

 強さと美しさ。両方を兼ね備えた『九本の宝剣』が、メアの《浮遊術》で舞い踊る。


「綺麗だ……」


 そのリゲルの呟きは、宝剣だけを賛美したものではない。

 メアの凛とした様と、美しく踊る九本の宝剣――二つが互いを共鳴させ、さらなる美しさを醸し出している。


〈《天剣ウラノス》! 《魔剣ネメシス》!〉


 十字に走った壮麗な剣閃が、盗賊少年の襲撃者の背中を裂く。

 襲撃者はその後も金髪の青年、女武闘家、短剣の少年へ変じるがメアの宝剣には敵わない。

 剣を両断され、あるいは拳を斬り裂かれ、その総身に多数の剣傷が刻まれていく。


〈《冥剣ハーデス!》〉


 とどめとばかりに射出した白の宝剣。

 しかし震えながら襲撃者は姿を変じ――最後の切り札を発現する。


 ローブと不覚かぶったフードの女。

『予言師』リーシャに変貌した襲撃者が、冥剣ハーデスの剣筋を完璧に読み、避けた。


〈え!?〉

 続く紅の宝剣と蒼の宝剣も紙一重でかわれ、メアの体が驚愕で一瞬凍る。


「我……負ケヌ……敵……排除スル……」


 初めてその口から発せられた、亡霊じみた襲撃者の声が、メアとリゲルに向けられる。


〈あたしの攻撃を避けた? なにあれ……〉

「臆するなメア! あえて話したということは、余裕がなくなってきた証拠! 畳み掛けるぞ! 僕は援護する! メアはとどめを!」

〈――うんっ!〉


 その時、リゲルの身にミュリーの『加護』が宿る。『腕力の三倍化』、『脚力の四倍化』、『思考の三倍化』、『物理攻撃の限定無力化』、『魔石の威力1・5倍』、『幻影の構築』――。

 数々の超常の『加護』が彼に力を――未来へのしるべを指し示す。


「おおおっ、おおおおっ!」  


 あるいは一人だけだったなら、動揺してやられていたかもしれない。

 しかしリゲルはメアとの約束があり、リゲルにはミュリーの加護がある。

 ――共に、地上へ帰ること。

 ――生きて、無事に帰ること。

 その確固とした意志が、未来を予知するという異能者に、恐怖を呼び込ませた。


「ウ……アア……ッ」


 もう襲撃者に余裕はない。一滴もない。

 空中でリゲルの放った《ウッドゴーレム》の触腕を華麗に『予言』してかわすと、体を労らない過剰な疾走でリゲルへ肉薄。


 しかし迎撃のメアの『裂剣クロノス』の斬撃を受け吹き飛んだところで、それも『予言』していた襲撃者は被弾構わず両手に蛇腹剣を構え、しかしメアの『冥剣ハーデス』と『天剣ウラノス』に砕かれ、しかし『予言』でそれすら予期していた襲撃者は円月輪チャクラムをリゲルへ投げ――

 しかし予言しても予言してもそれらをリゲルの、メアの猛攻が全て上回る。


「アア……アアアッ!」

「これが最後の魔石だ。――凍てつかせろ《スノーホワイト》!」


 第九迷宮《冥府》、六十階層の『階層主』たる雪女の魔物の吹雪が、敵のチャクラムを落とし、襲撃者の動きを束の間、硬直させる。


〈レストール家、護身剣闘術、第一方陣、『飛影の構え』!〉


 そしてメアが全てをこめて射出した『九本の宝剣』が、ついに襲撃者を捉えた。


「はああああああああああああああああっ!」

〈貫けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――っ!〉


 それが、決め手だった。

 いかに『予言』しようと広範囲の攻撃だけは防げない。

 体の九箇所を貫かれ、ぶるぶると身震いする襲撃者。

 断末魔の代わりのように、金髪の青年、鉄球の老人、細剣の二刀流の青年とこれまで変化してきた強者達の姿をぶれさせ、崩れ落ちる。

 そして最後は『白い甲虫』になると、息絶えた。

 その体が、砂のように崩れていく。


「――勝っ、た?」


 疲労と集中力の限界にありながら。

 リゲルは強敵の討滅を確認し、薄く笑うと。


〈勝ったよ! やったよ! リゲルさん!〉

 嬉しそうに叫ぶメアを微笑ましく笑い、長く息をついたのだった。



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