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TSヤクザの異世界生活  作者: 山本輔広
三章∶異世界商売録-元ヤクザだけどプリン屋始めました-
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大人になったら

 オオシマをレストランに残し、三姉妹は宿屋へと戻っていた。

ベッドの上ではミーナが豪快にイビキをかいて開かれた口から涎を垂らして眠っている。

その傍らの床に腰を降ろしたリリアは購入していた紐と道具を取り出すとさっそくブレスレットづくりを始めている。

 

 貝殻の詰まった麻袋から一枚掴むとキリを押し付けて貝の上で回転させて穴を開ける。

開けられた穴と貝殻全体をもらった研磨布で何度も擦る。

床に貝殻の削られたカスが積もるくらいに研磨させると貝殻は凹凸がなくなり滑らかな表面が見える。


「これぐらい磨けばいいかな?」


 磨かれた貝殻に息を吹きかけて削りカスを吹き飛ばす。

翳してみると貝殻は光を反射して宝石のように輝いている。


「きれい! リリーはすごいの。まるで宝石屋さんなの」


 翳された貝殻は姿を変えて本当に貝殻とは思えないほどの質感となっている。

その姿にプーフは目を輝かせながらこれからブレスレットが作られると思うと早く完成しないかと飛び跳ねている。


「こんなに綺麗になるんだね。お姉ちゃんは手先が器用ね」


 シロも貝殻を見てからリリアに微笑みかける。

リリアの前に腰かけた二人は女の子座りをしながら目の前の貝殻職人となったリリアがブレスレットを作る様子を微笑みながら見ていた。

 褒められて満更でもないリリアはニカッと口を開いて笑うと、次の一枚を取り出して同じように穴を開けて研磨していく。


「お姉ちゃんそうゆうのが得意なら、本当にいつかは宝石屋さんになれそう」


 ふとしたシロの言葉にリリアはそういった未来もあるかもしれないと思いを馳せた。

実際花冠作りにはじまった創作はリリアにとって今は趣味の範疇であるが、後々自分が大きくなったのならばそういった商いを始めるのもいいかもしれない。

これからプリン屋をはじめようというオオシマの姿を見ていたし、いつかは自分もそういった商いを始めたいと思える。


「そんなこと考えたことなかった。けど、いつかは私もそういうお店できたらいいなぁ」


「もしお姉ちゃんがお店したら私そこで働くね」


「本当? そしたら皆で宝石屋さんやりたいね」


「じゃぁプーはリリーのお店でなにすればいい?」


 プーフも体を前のめりにして将来の話に突っ込む。

リリアは『うーん』と頭を悩ませるとプーフにはどんなことをしてもらおうかと考えた。


「そうだなー。プーには私が作ったアクセサリーをお店で売ってもらおうかな。売り子さんだね」


「うりこさん! プーうりこさんやる!」


 両手を握り拳にするとプーフは今から売り子をやると息を荒らげている。

そんなプーフにシロは微笑み、いつかは本当に三姉妹でお店ができればと思う。

 

 今までに将来を考えたことなどなかった。

オオシマに出会うまでは未来を想像することなどなかった。どうやって今を生きていくか、どうやって現状から逃げられるかしかなかった。

出会ったことで現状は変わり平穏な日々を送り、温かな家族となった。


 そこから考えられる未来。

ぼんやりとではあるが、いつかは自分たちも大きくなって母のような背丈になったら世の中に出るのだろうと考える。


 そこにあるのは明るい未来。

プーフもリリアもシロも三姉妹は自分たちが大きくなったときの姿を想像した。

きっとリリアがその手で色んなアクセサリーを生み出して、それをプーフとシロが店で販売する。


 ただそこに母の姿はない。

すでに三人は巣立つ姿を想像していた。

三人が働き、家に帰るとプリン屋をする母がいる。

想像の中で母は年を経ても美しい姿のままにいる。そしてその隣には自然とミーナが並んだ姿も想像された。

5人となった家族が団欒している様。

いつかそんな将来がくるのではないかと三姉妹は未来を描いていた。


「そういえばプー少し背伸びた?」


「プーおっきくなった?」


「ちょっと立ってみなよ」


 リリアに言われるがままプーフは立ち上がる。

いつものお気に入りの魚の刺繍入りのワンピースを着ているが、以前は大きく感じたそのワンピースのスカートはプーフの脹脛にかかっている。

買ったばかりの頃は大きくてスカート丈をオオシマに詰めてもらったそれは今では少しばかり小さくなっている。


「やっぱり少し大きくなってるよ」


「プーおおきくなった!?」


「うん、多分大きくなってるよ。スカートが少し上になってるし」


「プーおおきくなった! いつかママみたいになるかな!?」


 さすがにそこまで大きくなるにはまだ時間はかかるとリリアは思ったが、それでも少しずつ大きくなっていく妹を見て成長を感じた。


「ママみたいになるにはまだ時間がかかるよ。でもプー大きくなったよ」


「私は大きくなった?」


 シロも立ち上がるとプーフの横に並んでみせる。

プーフとシロはだいたい同じ背丈をしている。リリアはプーフとはそれなりに長い付き合いになったが、まだシロと過ごした月日はプーフに比べれば少ない。

だが、プーフの身長が伸びているのならばシロも伸びているのだろうと思える。


「シロも少し大きくなってるかも。プーと同じ身長だし」


「私もおっきくなるのかなぁ。大人になったらどうなるのかな?」


 大人といってリリアはベッドでイビキをあげるミーナを見た。

開かれた口から涎を垂らし、寝返りをうつと衣装がはだけて下着丸出しの尻が三人のほうへと向けられている。

ミーナの体は女性らしく上向いた尻と大きな乳房がある。身長はオオシマほどはないが、それでも大人らしい体つきをしている。

いつかはミーナやオオシマのような体つきになるのだろうかとリリアは考える。

きっと身長が伸びて胸が膨らんできて、髪も伸びてくる。


「大人になったら多分ママたちみたいにおっきくなってさ。おっぱいもおっきくなって髪も伸びて女の人らしくなるんじゃないかなぁ」


「プーのおっぱいも大きくなる!?」


 ぺったんこな胸に両手を当ててプーフが叫ぶ。

少女らしい体つきをした三姉妹はまだ女の子であって、女性らしい特徴は未発達だ。

それ故に大人になったら身体も変化するのだろうかと期待が膨らんだ。


「なるんじゃない? 前ママがミルク飲めばおっぱい大きくなるって言ってたよ」


「へぇ……そうなんだ。明日から飲もう」


 ぼそりとシロがつぶやく。

シロもまだぺったんこな胸に手を当てるといつかは母のようなボンキュッボンなスタイルになれやしないかと夢想した。


「大人かぁー。いつかは三人とも大人になるんだなぁ」


 貝殻を研磨しながらリリアはまた三姉妹の光ある未来を想像していた。

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