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TSヤクザの異世界生活  作者: 山本輔広
三章∶異世界商売録-元ヤクザだけどプリン屋始めました-
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新担当女神

 白い空間に浮かび上がるホログラムモニターにオオシマの姿が映っていた。

浮かび上がるのはベヒーモスを素手で倒していく姿だ。鬼姫となったオオシマは映像の中でベヒーモスを倒すと、画面が切り替わって今度は腕相撲をしているシーンに変わった。

細く白い腕からは考えられぬ強力で相手の腕がありえない方向に曲がっている。

次に映し出されたのはバハムートを一撃で殴り倒していく姿、最後に白龍が画面に現れるとまた次のシーンへと映像が切り替わる。

海中にオオシマを誘い込んだはずのクラーケンが今しがた映った白龍によって噛みつかれると海中から引き上げられて空中に舞ったと思うと白龍は一口にクラーケンを飲み込んでいる。


 映像を見終わるとホログラムモニターは消滅し、白い空間には緑色の巻き髪をした女性一人が残された。

古代ローマ衣装に身を包み、開いているのか閉じているのか分からない細い眼をした女。名をリンカという女神であった。

 リンカはミーナに代わりオオシマの担当女神に指名されるとこれまでのオオシマの映像を見ていた。


「ステータスは……やっぱり人間のままか」


 手にしたバインダーにはオオシマの転生後の状態を記す履歴書のようなものが挟まっている。

顔写真のついた履歴書に目を通す。

一枚目の履歴書にはヤクザとして生きていた時代のオオシマの履歴が書かれていた。

鉄砲玉として死亡、人生を終える。最後にそう書かれているのを確認すると一枚捲って二枚目のページに目を通す。

二枚目には金髪美少女の顔写真と転生後の履歴が記されている。


「容姿の変更はミーナが勝手にやったんだ……それにしても能力も容姿もいらないなんて珍しい人間ね」


 さらに下へと目を通す。

身体的、魔力的な数値がリストとなって表示されている。

アルファベット式の評価式となっており、一番最高はSSSランクで下はFランクまである。

映像から見ればそれなりに高い評価だろうと思えるものの、書いてあるアルファベットはどれも低いもので最高評価でもC止まりとなっている。

さらに言えばそのCですら素手での格闘の裏付けになるものではない魔力数値での評価だった。


「おっかしいなー。なんでこの評価なのにこれだけ力が出せるんだろう」


 ページを捲って三枚目に目を通す。

そこに書いてあるのはオオシマに関するレポートである。ミーナが作成したものであるが、オオシマに纏わる評価、感想などが書かれている。

といってもミーナは途中から『かっこいい』『娘ちゃんかわいい』『好き』ということばかりが書いてあってリンカは眉を潜めながら目で文章をなぞった。

すでに読んでいた文章ではあったが、リンカは読み返すたびに同じ部分で目が留まっていた。


“アノマリーの可能性大”


 その一文が示すのはオオシマの力の裏付けである。

アノマリー。これまでに出現数が極めて少ないどの種族にも属さない異端種。

人間でもなければ魔族でもない、そしてミーナやリンカのような神族でもない。

なのに、アノマリーは魔法や筋力を超越した独自の力を持ち、かつては神族ですら脅かしたという過去がある。

ただその資料は遥か昔のもの。詳細な資料はなくただ神族と争ったが幾つかの犠牲と生贄のうえで無力化できたというもののみだった。


「アノマリーねぇ。やっかいな担当任されたなぁ……」


 溜息をついて読み終わった書類を閉じるとバインダーは光となって消えていく。

 リンカは何もない空間から自分の背丈よりわずかに短い長さの先が巻かれた木の杖を取り出すと、杖の先でもう一度ホログラムモニターを空間に浮かび上がらせた。


 モニターにはオオシマの姿が映っている。

くまのレストランでプリン作りをしている様子が流れて、その様子をエルフの少女プーフと熊族のジェニーがカウンターに腰かけて見ている。


「平和そうだし、あんまり恨み買うことはしたくないんだけどなぁ」


 リンカは自分たち神族を統べるムゥによってオオシマの力の明確な測定も命令されていた。

いつかは神族に対しても脅威になるかもしれない存在。そんなものを放置したままにはできない。


 オオシマのその力の秘密に迫るため、リンカはオオシマに向けて刺客を送っていた。

バハムート、そしてクラーケン。その二種の幻獣はリンカがオオシマの数値を測るために送り込んだものだった。

 バハムートを群れで送り込んでオオシマがどのような反応をするか。複数の敵に対してどう処理するのか。

 クラーケンを送り込み、海の中という状況的に不利な場合オオシマはどう動くのか。

どちらもそこそこの強さを備えた幻獣ではあったが、オオシマはそのどちらも軽々と倒してしまった。

せっかく送り込んだ刺客があっけなく倒されてしまう状態に、リンカは面白くない居心地がしていた。

 別にそういった嗜虐的思考があるわけではないが、自分の手駒があっけなく倒されてしまう様は見ていて面白いものではない。

具体的な数値に迫り秘密を探るという名目も得ているリンカは、その気持ちを発散させたいという気持ちが湧きあがっていた。


 次は何としてもオオシマをある程度痛めつけたい。一泡吹かせてやりたい。

そんな邪な気持ちが湧きあがると、リンカはホログラムモニターに映し出される映像に指を当てて画面の端に幻獣の一覧を表示させた。


「次はどの子がいいかなぁ。バハムートもクラーケンもダメだったしなぁ。もう少し知性的なモンスターのほうがいいかな?」


 リストを上から下へとスクロールすると、一体のスライムが目についた。

スライムといっても半透明な水色をした人型の液状モンスターである。スライムは魔族ではあるがリンカが特別に用意した人間レベルの知性を兼ね揃えたハイブリッドモンスターだ。


「多分スライムちゃんだったら殴られてもすぐに死なないしな。それと……体の中にアイテムを忍ばせてと……」


 スライムの画像を選択し、さらにもう一度画像をタップすると付属させる持ち物一覧が表示された。


「無力化のアイテムは……えーと、神族の血と幻獣の牙と巨大な鉱石か……」


 アノマリーを無力化させるためのアイテムを三種選択するとスライムの画像へとスクロールする。


「これで無力化できれば……いいんだけど」


 間があいた言葉にリンカは本当は無力化を望んではいなかった。

できればもう少し遊びたい。色んなモンスターを送りつけてオオシマがどう反応するか見てみたいと思えた。

 用意していたモンスターはまだまだたくさんある。それらをオオシマにあてがえばどのように反応するか見たい。


 担当としてでもアノマリーの資料にするためでもない。ただ純粋にリンカは好奇心でオオシマで遊びたいと思えた。

それ故にここで無力化されても困る。だが、ムゥからの命令もあるためあらゆることを実践しなければならない。


「さて、じゃぁスライムちゃん、私の担当者の相手をしてきてね。んー、どうなるか楽しみだなぁ」


 ホログラムモニターに映るオオシマの姿を見てリンカは蕩けるように笑った。

ミーナとは似て非なる感情がリンカを支配していた。

もっと遊びたい。もっとどんな反応をするか見てみたい。


「オオシマさん。私のことをもっともっと楽しませて」

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― 新着の感想 ―
とても楽しく読ませてもらっています。 少し不満な点を書かせていただきます。 ○ プーフは可愛いけど、しつこすぎて残念。 ○ 神族が俗っぽすぎ。これでは、チート能力を持つ貴族、王族となんら変わらない。…
2025/07/01 10:30 ラノベ好き
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