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TSヤクザの異世界生活  作者: 山本輔広
三章∶異世界商売録-元ヤクザだけどプリン屋始めました-
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白龍再臨

 殴り飛ばしたクラーケンの触手を掴むと一気に引きちぎる。

引きちぎったことで触手の力が抜けるとプーフの体は海面へと落下していくが身体は海面に叩きつけられる代わりに白い両腕の中へと抱き留められた。

 抱き留めたのは鬼姫となったオオシマだった。

プーフの体をその場に降ろすと殴り飛ばしたクラーケン目掛けて海面を蹴って距離をつめる。

クラーケンは咄嗟に海中へと逃げ出すが、オオシマは握りこぶしを海面へと叩きつけるとその衝撃はクラーケンへと直撃した。

全身に浴びせるようなダメージを受けながらもクラーケンはこのままでは命はないと必死になって海中へと逃げ出す。

しかし、娘に手を出された鬼姫も無論そのまま逃がすつもりなどない。

どこまで逃げようとも握った拳を解くことなくクラーケンを追ってさらに深くへと潜り込んでいく。


「鳥だのイカだの最近はやたら俺に絡んでくるじゃねぇか。なんなんだテメェらは」


 先日のバハムートに続く襲撃。前にもベヒーモスに襲われたことはあったが、それにしても今回は狙ったように現れた幻獣たちにオオシマは何かひっかかりを感じる。

ベヒーモスの出現はまだ理由があるが、前回のバハムートも今回のクラーケンも何か試されているような気がしてならなかった。


 まるで自分が試されているような。

その勘を感じさせるようにクラーケンはある程度潜ると旋回して動きを止めると迎え討つようにオオシマに向かって墨を吐きつけた。

海中のため直接攻撃するというよりかは目くらましのような役割となり墨はオオシマとクラーケンのいる海中を真っ黒に染めて視界を奪う。


――なんだってんだ。俺のこと試してんのか?


 墨で真黒になった海中を警戒しながら周囲を見る。しかし墨によって染められた海中はさすがに鬼姫となれど何も見えない。

 力を持つものには敵ができる。

オオシマの頭にはそのことが浮かんでいた。自分が強大な力を使うようになってから度々敵が現れるようになった気がした。

 墨で染め上げられた海中から複数の触手が刺さるように伸びるとオオシマの体を一気に縛り上げた。

触手に抵抗することもなくオオシマは体を縛られる。ギチギチと長い触手が力いっぱいオオシマを締め上げて自由を奪う。絞め殺そうとしているのだろうか力は徐々に強くなっていくが身体には痛みは感じられない。


 墨が薄まって海水に流されていくとオオシマの目の前にはクラーケンの巨大な黄色い目が映った。

絞め殺そうとしているのだろうと分かるように黄色い目は血走ってガンを付けている。


――海中に誘い込んで自分の有利にしたつもりか? 舐めてんじゃねぇぞコラ。


 背に熱さを感じた。何か蛇のようなものが背を這う感覚がする。



「ママだいじょうぶかな」


「大丈夫に決まってるでしょ。ママが負けるわけないじゃん」


 浜辺では母を心配したプーフが海を見つめたままスカートを握ると、隣にいたリリアが腰に手を当てて胸を張っていた。

呼び出しにいったリリアはすでにブチギレていたオオシマに事の次第を話すと途端に鬼姫となって海へと走り出した。

プーフは一瞬だけ海に沈んだオオシマのことを思い出してしまったが、リリアはその考えを払拭するように余裕の表情をしている。

バハムートに襲われたときもオオシマはすぐに助けにきてくれていた。

直接的に助けられたわけではなくリリアの前に突如として現れた巨大な白龍がバハムートを倒してはいたが、それは恐らく母と何かしらの繋がりがあると感じていたリリアはまた白龍が現れるのではないかと海を見つめた。


 視界の彼方から咆哮が聞こえた。

以前町で見た白龍と同じ咆哮。

その場にいた娘たち、ミーナ、話し合いをしていた熊たちの全員の視線が海へと注がれると、海中からは白い飛沫をあげながら巨大な白龍が姿を現した。


「どらごん!」


 プーフが指を差しながら叫び声をあげる。

口にクラーケンを咥えた白龍は長い体を海から現すと天へと向かって伸びていく。


「なんだあのドラゴンは…あんなデカいドラゴンみたことない!」


 熊の一匹が茫然として天へと昇る白龍を見つめた。

白龍は体を蛇のように動かしながらその尾まで全て空中に姿を現すと咥えていたクラーケンを一口に飲み込んだ。


「クラーケンが食べられた……」


 ミーナも茫然としてクラーケンを飲み込む白龍を見ている。

やはりオオシマの入れ墨に何かしらの反応があって現れたのだろうと思えるように白龍が舞った後には蓮の花びらが散っている。

ミーナのもとに落ちてきた花びらを掴み取る。淡いピンク色した花びら。本来海中に咲くはずもない蓮の花びら。

 オオシマの背にある入れ墨を思う。背に彫られた入れ墨は和彫りの龍と蓮だった。

その二つが具現化してミーナの目に映っている。


――やっぱり、あの入れ墨。


 空を泳いでいた白龍はクラーケンを始末すると町にいたときと同じように霧となって姿を消していく。

用を済ますと早々に消え去った白龍のいた空を全員が見上げたままにいる。

熊たちは驚き、娘たちはきっと母が何かしらしたのだろうと思いながら。


 しばらくすると波打ち際にオオシマが姿を見せた。

クラーケンに締め付けられたせいで服はズタボロになり素肌が露出している。

太ももが露わになり、両手で大きな乳房を隠す姿。ゆっくりと浜辺に向かって歩く姿は随分疲れた表情をしている。


「ママ!」


 娘たちが海から出てきた母を熱烈に迎えるとズタボロになった身体に抱きついている。


「ちょ、今止めろ。服が破れて押さえてねぇと乳が見えちまう」


「今ねまた白龍が出たんだよ! ママ何かしたんでしょ!?」


「多分な。ていうか、マジ今抱きつくな」


 オオシマの体から娘たちが離れると白い素肌が露わになる。

触手に締め付けられ吸盤に吸われたせいで服は服の役割をしていない。小屋へと向かうオオシマの背をみると和彫りの蓮と龍がくっきりと浮かび上がっている。


「鬼姫の背にドラゴンがいる……今のドラゴンは鬼姫だったのか……?」


 熊のうちの一匹がオオシマの背を見て呟く。

背に彫られた龍は真っ白で先ほどまで空にいた白龍と同じ姿をしていた。

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