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TSヤクザの異世界生活  作者: 山本輔広
二章:異世界任侠伝ー川の底に咲く花ー
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甘えん坊

 ベッドに仰向けになるオオシマの体の上にプーフがうつ伏せになっていた。

右にはシロがくっつき、左にはリリアが体を拘束するかのように抱きついている。


「オメェら邪魔」


「やー!」


 至近距離で大きな声で拒否するプーフ。顔を胸に埋めたままプーフはしがみついて離れようとしない。

それは他の二人も同じでくっついたままに一切離れようとはしなかった。


 歩いて町までたどり着いたはいいが外はすでに暗くなり、その日は町に一晩泊ることにしていた。

それを聞いたジェニーはレストラン二階の空き部屋に泊まっても良いと勧めたが、さすがに人の家に泊るまでは気が引けたオオシマは近くの宿を紹介されると、そこの一室で身を休めていた。

 大きくはない部屋だが、ベッドは二つ用意されていた。

二人ずつ横になればいいものをオオシマが横になると娘たちは誰も他のベッドに横になろうとはせずにオオシマの傍から離れなかった。

身動きを取ろうにも左右を固められ、起き上がろうにも起き上がれない。


 一度離れてしまった寂しさからか三人の娘はいつまでも離れることなく、常にどこかしらを触っていたり掴んでいた。

どこに行くにもついてくるし、トイレに行こうにもついてくる。

寂しい思いをさせたのは分かるが、トイレにまでついてこられるとさすがにオオシマも居心地が悪い。


 このまま三人が眠ったら隣に移ればいいかとも思ったが、プーフもリリアもシロも寝息を立てる様子はない。

黙ったまましがみつかれてオオシマは表情を作れずにいた。


「ママ、お菓子屋さんするの?」


 シロが顔をみあげて口を開いた。

シロはオオシマの腕に両手でしがみつくと、手のひらすら動かせないように両足でオオシマの手を挟み込んでいた。


「そのつもりだ。うまくいくかわかんねぇが、これからは定期的に収入を得られるようにならなきゃなんねぇからな」


「どうして?」


「そりゃオメェらのためだろうが。そのうち身長も伸びてデカくなるだろうし、大きくなれば必要なものも増えてくる。金がねぇと生きていけねぇんだよ」


 金がないと生きていけないのはどの世界も同じであった。

生きていくには食料がいる、住まいがいる、着るものが必要になる。

すでにオオシマの口は酒を覚えてしまっているし、娘たちも甘いものを覚えてしまっている。

 一人きりでなら取れた魚や森にある果物や野菜を取って生活もできたかもしれないが、今からその生活に戻るなどとてもできるものではない。

 三人はこれから徐々に大きくなるだろう。そうした時、今着ている服は入らなくなるし女の子であるが故に身なりにも気を使いだすことだろう。

それに三人が大きくなったとき、今いる家では狭すぎる。ただでさえ狭いのにもし三人皆がオオシマと同じ背丈にもなったならば、とてもその場で生活することはできない。


「ママまいにちプリンつくるの?」


 谷間から顔を出したプーフが問いかける。


「毎日はしねぇよ。たまには気を抜いて休みもするさ」


「プーまいにちプリンたべたい」


「私も食べたいな」


 すでに味もくちどけの感覚も知っていたリリアがプーフの話に乗ってくる。

毎日甘いものが食べられるとなればそれほど贅沢なことはない。

プリンを毎日口にできるかと期待した6つの瞳は輝いてオオシマを見ていた。


「食いすぎたらデブになる。毎日はダメだ」


「えー」


 ぶーたれながらプーフは谷間に顔を伏せた。

リリアも口を尖らせて肩におでこをつっくけると何度もこすりつけている。


「私は…ママといれればそれでいい」


 唯一文句を言わないシロは目を輝かせたままオオシマの顔を見つめている。

シロにとっては最愛の人たちといれることこそが幸せだった。

人に嫌われ、触れることすらできなかった過去があるがゆえに、今の状態がシロにとっては最高の贅沢で最高の幸せとなっていた。


「オメェらもシロくらい良い子になってくれりゃいいんだけどな」


「えへへ…」


 照れ笑うシロとは逆に二人は口を尖らせている。


「ママはシロばっかりあまやかすの!」


 嫉妬したプーフは谷間に向かって口を震わせながらツバと息を吹きかけた。

谷間に感じたくすぐったさに笑い声をあげるとプーフは楽しくてまた谷間に向かってツバと息を吹きかける。


「くすぐってぇよ! やめろ」


「やー!」


 そう言ってまた吹きかける。

笑い声をあげるオオシマを見てリリアも腕に噛みつくと甘噛みし、手で脇腹をくすぐりだした。


「いーひっひっひっひ! やめろや! 俺であそぶんじゃねぇ!」


「やー!」


「止めなーい!」


 プーフとリリアは手を止めようとはしない。シロもくりすぐりはしないが笑いながら体をよじらせるオオシマに必死にしがみついて離れない。


「もうオメェらそっちのベッド行け!」


「やー!」


「行きません!」


「私は…ママの隣で寝る」


 オオシマは無理やり体を起こすと先ずプーフを抱えて隣のベッドに降ろした。残ったリリアも抱きかかえて隣のベッドに降ろす。

立ち上がってなお腕にしがみついたままのシロを見るとオオシマは『うーむ』と唸った後に元居たベッドに降ろした。


「なんでシロだけそっちなの!」


「無害だから」


「プーもむがい!」


「リリアも無害!」


 隣のベッドに移された二人は立ち上がると頬を膨らませて怒りを表すとオオシマを睨んだ。


「すでにうるせぇ。せっかくベッド二つあんだろ。オメェらはそっち使え」


「やー!」


「あたしもそっち行く!」


 ベッドの間で仁王立ちするオオシマにプーフもリリアも地団太を踏みながら抗議するも、オオシマは受け入れない。

頬を膨らませて怒り出すとプーフはベッドから飛び上がってオオシマに飛びついた。

いきなり飛びついてきたプーフを胸に抱えると、リリアも続いてオオシマに飛び込んでくる。


「いっしょにねるの!」


「寝るの!」


「いつも狭いベッドで寝てんだろ。今日ぐらい広々ベッド使えよ」


「や!」


「嫌だ!」


 二人の娘を抱えながら溜息をつく。いなくなったことで寂しさを募らせたのは分かるが、それにしても甘えん坊になりすぎている。

シロのほうを見ればシロも今にも飛び出してきそうに体を揺らしている。


「はぁ。分かったよ。じゃぁこうしよう」


 抱えた二人をシロの隣に降ろすとオオシマは三人の乗っかったベッドに空いたベッドをくっつけて一つの大きなベッドにした。


「これなら全員寝れるだろ。もうこれで文句言うんじゃねぇぞ」


 言いながらオオシマも横向きになって三人の前に横になる。

しかし、プーフもリリアも目の前に出されたお菓子にがっつくかのようにオオシマの体に飛びつくとまたしがみついて離れようとしない。

シロも飛びつきはしないがそっとオオシマの傍に横になるとまた腕をホールドしている。


「邪魔…」


「じゃまじゃない!」


「今日はこのまま寝るの!」


「…私もそうしたいな」


 せっかく広くしたベッドなのにまた4人がくっついた塊ができるとオオシマは溜息をついた。

甘えられるのは悪くはない。だが身動きを取れなくて正直邪魔で仕方ない。

三人が眠ったら離れればいいかと思うと、オオシマはもう抵抗しなかった。


「ぶー!」


 谷間にまたプーフがツバと息を吹きかける。

繰り返される悪戯にオオシマは自分がオモチャにされていると思いながら笑い声をあげた。


眠ったら移動しようと考えながらオオシマは三人のオモチャになって笑い声を響かせていた。

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