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テントの中にて



「・・・・何であんなところにテントがあるのかしらね?」


「さぁ?、しかし人がいる可能性は否定できないし、せっかくだから行ってみますか」


「それもそうね」


私とルーは洞窟のなかをテントへ向けて歩きながら、自分達のことについてや、私が浜辺で見た都市についての事などの雑談をし始めた。





「・・・・へぇ、木造帆船がねぇ、」


「私にとってはどこに来たのやらと言う感じでなぁ」


「あなたの想定のとおり、私も貴方も異世界から、しかもそれぞれ別の世界からこの世界にやって来たと見て間違いないでしょうね、互いに此処にやって来る直前の出来事をまるで思い出せないし、私も祖国の事とか、乗ってた艦についてとか幾ばくか記憶の欠落があるから互いに記憶喪失なのは間違ってないみたいだし。」


「あ、あんパン食べます?」



「ありがたく頂くわ、日ノ本・・・・貴方の世界だと日本だっけ?、昔そこに行った時、町で売ってたこしあんのコレが好きになってねぇ、つぶあんとか色々パンあったけど、日ノ本で売ってたのだとこれが一番だったかしらね」


「あ、こしあん派なんですかい?私も実はあんパンはこしあんのが好きなんですよ」


「気が合うわね~、にしてもプラスチックを食品梱包に使うとはね・・・・貴方の世界は物質的に豊かだったのねぇ」


「日本が技術的には先進国の部類でしたしね、60年違えば流石に色々違っては来ますよ」


「私の祖国もあなたに話した通り、色々背負いながらそっちと違って何とか平和にやってたから、この発想を知った私が居なくともそう遠くない内ににたような感じになるのかもね」



彼女と話している内に彼女のいた世界に関して色々とわかったことがある。


まず彼女の世界におけるドイツは、第一次世界大戦の初頭から戦車や毒ガスといった大戦中に開発された兵器が各国で使われており、私の知る歴史よりも遥かに多くの血が流れていることがわかった。


ルー曰く、「大戦参加国の内、比較的犠牲が少なかった大国である日ノ本でさえ15万人の死者を出しており、累計死者は2000万人に昇る」とのことで、その世界の日本に該当する日ノ本と言う国が本格出兵していたり、内戦後のロシア該当国が逆にドイツ帝国(当時)側に立って参戦したりと色々と私の知る歴史とは違うことが判明したりした。


まぁ結局は史実よりも犠牲が大きい状態で大体史実通りの勝敗となったらしいが、その後もヴァイマール体制が1945年になっても存続してたりする辺り色々と大きな変化があるらしい。


まぁそのへんの詳細を聞くまえにテントにたどり着いてしまったのだが。


因みに私の世界の同時期の話をしたとき、「私の祖国は難儀な道を行くことになる定めでも持ってるのかしらね・・・・?」と、嘆くように呟いていた・・・・・・。












「さて、テントにたどり着いたわけだけど、やっぱりと言うかなんと言うか、誰もいないわねぇ」


「いた痕跡っぽいのはあるんだけどなぁ・・・・それにどことなく懐かしいような?」


「・・・・・・貴方もそう思う?」


「ルーさんもですかい?・・・・!!?」


たどり着いたテントは、テントと聞くとよく思い浮かぶのと同じ黄色の三角テント、中にはマクラっぽいのと持ち運びできそうな小さな机がある程度であったが、私はこの光景に既視感があった。


そして、このテントの光景に既視感がある事にルーさん(相手が呼元帥なためにび捨てする気になれない)が同意したとたん、急に視界が白くなり、直後にそれまでとは別の光景がみえてきた。



・・・・何処かの森と思われる場所、そこにある黄色の三角テント、入り口手前に私とルー元帥が手に何かの紙袋持ちながらいる。


テントを開き中に入る、二人が話しかけていたのは、何処かで見た覚えがある黒髪長髪の女性であった・・・・・・。











「・・・・はっ!?今のは一体?」


気がつけば視界はもとに戻り、視界が白くなる前の光景と同じものと、今の私と同じように驚いた表情のルー元帥がそこにいた。




「・・・今私と貴方が一緒に誰かのいたテントに入っていったわよね?」


「森みたいな所で紙袋持ちながらですよね?」


「そうね、確かにそんな感じだったわ、何だったのかしら、今の光景?」


「フラッシュバック?しかし私とルーさんはさっき初めて出会ったばかりの筈・・・」


「そうよねぇ、初めて会ったばかりよねぇ、しかもさっきの話からするにお互いそれぞれ別の世界からここに来たっぽいのに何でかしら?」


どうやらルー元帥も同じ光景を見ていたようだ、一体何が起こったのかあれこれ考えているうちに、テント内の机の上に一冊のノートがあることに気がついた。



「ん?ノート?さっき見たとき机の上にはなにもなかったと思うんだけど・・・・!?蒼治!ちょっとこれ見て!」


「どうしました・・・・ふあっ!?」


ノートに気がついたルー元帥がさらりと表紙を見て仰天し私に表紙を見せてくる、そこには「ルール・ラインラントと天城蒼治(仮名)へ」と、おもいっきり私たちの名前、それも私が仮名としてその名を使ってることも見越した状態のが書かれていた。


さらに・・・・


「・・・・ねぇ蒼治、このノート、表紙にはルール・ラインラントと天城蒼治(仮名)へって書いてあるんだけど、そっちはこのノートの表紙、何語で書かれてる?」


「え?日本・・・・日ノ丸語だな、」


「そう・・・・私には母国語・・・・ヴァイマール語で書いてあるように見えるわ、一瞬日本語にもみえたけどね」


「えっ!??!?読む対象の言語にあわせてノートの表記が変化してるってことですか!?!?」


「でしょうねぇ」


・・・・どれだけの代物なんだそれは?


もしもルール元帥の言っていることが事実であるとすれば、このノートの表紙は視点によって見える内容に相違をもたらしている、つまり錯視を用いていることがわかる。


しかし、書き言葉を、しかも一言に近いとは言え、一文丸々を他言語で、同じ内容で錯視させているのだ。


文字を立体視させたり、視点を動かすことで違って見えたり、動いて見えるようになるような、本だとかでよく見る錯視とは次元が違う。


言語が違ければ、同じ意味の表現をするのに必要な文字数や文字の形は違ってくるものだ。



私の知る範囲にそんなタイプの錯視があると聞いたことはない。



「・・・・ま、そんなことより中身よ中身、」


「え?まさか見るの?」


「私たち宛の代物なんだし、取り敢えず読む一択でしょ?」


「まぁ、それはそうなんだけど・・・・」






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