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とりあえず殴っとく?

少しずつブックマークが増えていることが嬉しいです!

ありがとうございます。

「よっと、こんにちはー。あんたがガルレイドね。うわー本物見るとまさに悪役って感じ?あ、でもラスボスっていうより、途中でやられちゃう雑魚よりちょっと上の中ボス的な感じかな?」


いきなり部屋に現れた私たちに、目を白黒させる目の前の少し小太りの中年のおじさん。ついでに言えば後ろにいるアーデルハルトも驚いているのが分かった。城に行くとは言ったけど、まさかいきなりここに来るとは思わなかったらしい。

部屋は執務室なのか、私とおじさんの間にある立派な机の上にはいくつかの書類が置かれている。他に人はいないが、部屋の外に二人いるのが気配で分かった。

入ってこられるのも面倒だし、ちょっと音が漏れないようにしとこう。

私がサッと魔法を掛け終わる頃、ようやくおじさんいわくガルレイドが正気に戻ったのか、目をキッとつり上げて私を見上げる。


「貴様なに「はい、ストップー」っ!?」


私が声を掛けると口をぱくぱくさせ、自分の状態がどうなったのか分からない様子のガルレイド。

音が漏れないようにしたとはいえ、うるさくされるのは私が嫌だったから静かにしてもらった。

ガルレイドは息は吸えるけど声は出ない状態、ついでに言えば体も動かなくしました。

声も出ない、体も動かない状況に慌てていたけど、声も出ない、体も動かないから唯一動く目で私を睨み付けてくる。そして私の後ろにも目をやり、そこにいる人物を凝視したかと思うと数秒後には誰か分かったのかガルレイドは目を大きく見開いた。


「あ、覚えてるんだ。あんまり記憶力高くなさそうだけど、やっぱり自分が恥をかかされたから?それとも自分がやった横領やらの罪を彼になすりつけたから?」

「っ!~っ!!」


ガルレイドは私の言葉に二度、三度、目を更に見開いて口を開くがそれは言葉にはならない。

ガルレイドは無視して、私はクルッと体を半回転させアーデルハルトに顔を向ける。まだ驚いた表情でもしているのかと思えば、その時には表情は厳しくじっとガルレイドを見ていた。


「とりあえず……殴っとく?」

「っ!!っ!!」


私の言葉に息を強く吐く、声にならない声が聞こえる。それを再度無視して私はアーデルハルトの答えを待つ。アーデルハルトは私の問い掛けに答えないまま、ガルレイドへ向かってゆっくり歩き出す。私は何もせずそれをただ目で追っていく。

ガルレイドは初め怒りで顔を赤くしていたが、アーデルハルトが近づくにつれ恐怖に顔を歪ませ顔色も赤から青に変えていく。ついにアーデルハルトがガルレイドの真横に到着すると、とうとうガルレイドは目に涙を浮かべた。

アーデルハルトが机の上に視線をやると今まで使っていたのかペーパーナイフが机の端に置かれていた。アーデルハルトがそれを手に持つと恐怖は最高潮に達したらしい。涙やら何やらを顔から流し必死に体を動かそうとするガルレイド。それに対しアーデルハルトは一言も発せず先ほどの厳しい表情のままガルレイドをじっと睨み付ける。

そしてアーデルハルトはペーパーナイフを振り上げた。


ザッと布を切り裂く音がする。

ペーパーナイフはガルレイドの顔のすぐ横、座っていた椅子に突き刺さっている。

ガルレイドは失神してしまったらしく、白目を剥いている。


「いいの?」


私の言葉にこちらに顔を向けるアーデルハルトはまだ厳しい顔をしている。


「あの時のことを恨んでいないかと言われれば、恨みも憎しみもある。けれどあの時の俺はあまりにも無力だった。そして人を疑うことを知らなかった。いや、知らなかったわけじゃない、目を背けていただけなのかもしれない。……あの人は俺を選んでくれると、信じてくれると勝手に思い込んでいた。コイツを殺してもきっと俺の気持ちは晴れない。元凶はコイツだったが、あのことがなくてもきっと違う形で俺は……それに」


アーデルハルトは無理して笑うように口元を上げる。


「コイツを陛下の前に連れて行くんだろ」

「……ん、王様の所行って、さっさと終わらせよっか!」


私は別になんでも良かった。ぶん殴っても、殺してしまっても。

連れて行くのもアーデルハルトの無実を証明する為の立ち会いぐらいの意味しかなかったし、ぶっちゃければいなくても問題はない。

それに、ここで殺されるより法で裁かれる方がきっと辛い。尋問だってやってきたことがやってきたことだから、逃れられないだろうし。それを分かってアーデルハルトは言っている部分もあると思う。

私はアーデルハルトと絶賛失神中のガルレイドに近づき次へ向かった。





「……と、いうことがあり「はい、ごめんねーちょっとお邪魔しまーす」


私達が現れると一気にその場がざわつく。

そりゃそうだ。おそらく謁見中であろう場に部外者が、しかも王様と今まで話していた男の間にいきなり出てきたら驚かないわけがない。


「何者だ!」


ガルレイドの時とは違い、すぐに反応するのはさすが王様って感じ。それに反応するように私たちを兵達が囲む。

だが、その兵達の中にはアーデルハルトを見て驚く者や戸惑う者もいた。

それもそうだろう、なんせ彼は


「なぜ、ここにいる!アーデルハルト!」

「……」


今まで王様と話していた男は、腰に大層な剣を下げ周りの兵達より立派な制服を着ている。

彼が騎士団長か。

騎士団長の声にも。アーデルハルトは目元を微かに動かす以外は特に反応しなかった。

私が用があるのは騎士団長ではない。王ただ一人。


「私が何者かなんて、どうでもいいの。ただアーデルハルトを貰い受けに来ただけ。ってことで、アーデルハルト頂戴」

「……は?」


さすがの王様も困惑気味。もちろん回りも困惑しているのが分かる。

そこで、空気の読めない男が目を覚ました。


「……はっ!ここは?………へ、陛下!?」


あ、魔法の効果切れちゃってる。

ガルレイドが辺りを見回し、その視線が王様に向くと驚いた後、そこがどこだか分かったようで、すぐに姿勢を正す。

さっきとは違いスピーディーな動き。そして男は私とアーデルハルトも一緒にいることに気がつくと、ベラベラと話し出した。

アーデルハルトが闘技場から逃げ出したとか、あの事件のことで恨みを持ち自分を殺しに来たとか、実際に殺されかけたとか……。しまいには私も共犯者だとか好き勝手話す。

共犯者ってこと間違いじゃないけど。


「ついには「うっさい」げふっ」


まだ終わらなそうな話に飽き飽きした私が、ガルレイドの頭を蹴り倒し床に倒れたところを更に踏みつける。もちろんすぐにガルレイドはわめき散らそうとするが、そこはさっきの魔法で黙らせ、体も硬直させる。


「うるさいから静かにしてて。やっぱり連れてこなくても良かったかも……。んで、さっきの話しだけど良いの?駄目なの?ま、駄目って言っても貰うんだけど」

「……渡す訳にはいかぬ。其奴は罪人。国の金を横領し、何かあれば部下や民間人にまで手を出した重罪人だ」


王様は私に対し何かを感じ取ったらしい。私を危険人物、それも簡単には手を出せない人物だと思ったようで、すぐに兵を動かし捕まえるようなことはしなかった。それでも答えはノー。

今言った罪を本当にアーデルハルトが行ったかを信じているかは分からないが、実際に横領があったり何人もの人が犠牲になっているのは事実。それを真実はともかくとして犯人をアーデルハルトとして終わらせたのだとしたら、それを国外に持ち出すのはあまり得策ではないって感じかな。

でも、私だって断られるのは予想していた。


「ふーん」

「……なんだ」


私は王様に向かって歩いて行く。「待て!」とか「立ち止まれ!」とか兵が私の前を塞ごうとするけれど、私に近づいた瞬間弾き飛ばされ壁にぶつかる。

これは他に聞かれたらまずいのよ、主にあんたらの王様がね。

だからちょっと静かにしてて。


さぁ、王様。交渉といきましょうか?


主人公は神(のようなもの?)ですが、元が人間なので無意識に、王様の事を様付けで呼んでます。


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