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ブロンドの彼

彼の登場です。


話は戻って闘技場です。

うん、繋がらないね。


実はアンディールでは、というかこの大陸では奴隷は国公認でいるんだけど、奴隷って名称で呼ばれることは少ない。大体がこの闘技場とかで剣闘士として見世物にされることが多い。

だから必然的に男性が多くなる。女性も中にはいるが圧倒的に男性が多い。

ちなみに戦えない女性や子供は貴族なんかの屋敷で使用人みたいな感じで使われているとか。もちろん賃金なんて出ない。男の子は大体は成長すれば剣闘士にさせられる。闘技場では勝敗を賭けの対象にもしている。

もちろん死ぬ場合もある。見ていて気持ちの良いものではないが、この国、この大陸では当たり前の光景。娯楽の一種として浸透している。


それで見つけたのが、彼。ここでは名前では呼ばれることはなく、番号で呼ばれる。

呼び名は基本は番号なんだけど勝ち続けていれば、あだ名みたいなものが付く。

彼のあだ名は「ブロンド」理由は髪がブロンドだから…安直過ぎる気もしないでもないけど。

ちなみにそのブロンドの髪も、髭もぼうぼうで顔がはっきり見えない。辛うじて見える目は青かった。身長は百八十後半だろう、この世界の平均身長より少し高い位。昨日絡んできたチンピラに比べれば細身だが、しっかりと筋肉が付いている。つまり細マッチョ。

なんで彼を選んだのかというと、彼が剣闘士、つまり奴隷になった理由からなんだけど……



「あ、始まった」


試合開始のゴングが鳴り響く。彼「ブロンド」の相手はなんと、魔獣。

通常は剣闘士同士で戦うのだが、彼の場合は時折相手に魔獣が含まれる。それも剣闘士になった理由に連なる。

熊のような魔獣で体長は三メートルはあるだろうか、鋭い牙と爪が武器のようだ。

対する彼は身長は人間にしてはある方だが、三メートルの熊に比べればさすがに小さい。武器も鉄の剣一本でしかも彼には更にハンデがあった。それは左腕がないこと。

過去の試合で魔獣と戦い左腕を食いちぎられてしまい左腕が付け根辺りからなかった。

だが彼はそんな魔獣を前に素早い動きと力強い剣さばきで熊の魔獣を倒してしまった。

歓声と暴言が入り交じる。

彼は客席を一回も見ることなく、また勝った喜びを表すこともなく戻っていく。

私はすぐに席を立ち責任者の所へ向かった。もちろん彼を貰う為に。





「だめだめ、彼は売れないよ」

「なんでよ」

「なんでもだ」


さっきからこれの繰り返し。

最初に彼を貰いたいって言った時は、目の前の男は驚いた表情をした後、ニヤニヤしながら売値の金額を提示してきた。それはちょっとした国一つ買収出来ちゃうんじゃないかって金額。普通の人、いや貴族、王族だって準備するには難しい金額。

つまりは売る気はないってこと。


ふふふふふ、神なめんなよ!


私は鞄から中身が詰まった袋を三袋取り出して男と私の間のテーブルに乗せた。どれも袋は口一杯まで入っている。

男は私の行動の怪訝な表情を浮かべていたけれど、袋を見て一変驚愕の表情を浮かべる。


この世界にはマジックアイテムという物がある。

容量制限ありだが、見た目以上の収納できる鞄型のアイテムもある。そういったアイテムが存在している為、小さい鞄から見た目以上の物が出てくることに男が驚いたわけではない。理由は鞄から取り出した袋の中身にある。

テーブルに置いた拍子に袋の口が開け、中身が見えている。

中身は全て白金貨。

通貨はどの大陸でも一緒で白金貨、金貨、銀貨、銅貨となっている。それぞれの価値は、銅貨十枚で銀貨一枚分、銀貨も十枚で金貨一枚分、しかし、白金貨については金貨の百枚分の価値がある。ちなみに銅貨はちょっとした飲み物一杯くらいの価値。

その白金貨が袋の口一杯まで詰まった袋が三つ、つまり提示された金額を私が出したのだ。


ちなみに作ってないからね!

量が量だったから、両替はやったけど!


私がアンディールに来て、まずやったのがこの国にいる奴隷の確認とお金の準備。

そして見つけたのが彼。他にあまりにもって感じなやつは買い取ったり色々したけど。

彼は調べれば、ありがちと言えばありがちな経歴の持ち主。その経歴から提示される金額も大きいだろうと判断し、ちょっと場所移動して魔獣倒したり、奴隷ハンターなんて呼ばれるやつらを倒したりしてお金稼ぎした結果が、こんな感じ。まだ鞄の中には同じ袋が三袋入っている。


そんな大金を前にした男はとても動揺している。まさか本当にその金額を出すとは思ってはいなかったんだろう。

目の前には国が買えるほどの大金がある。無意識に男の手が大金の入った袋に伸びたけど、男はすぐにぐっと堪えるような顔をすると、売ることは出来ないと言ってきた。

そして最初に戻って、売って、売らないの繰り返し。

せっかく穏便にお金で済むならそれで終わりにしようと思ってたけど……。

やっぱり大元をなんとかしないといけないね。


「わかったわよ。じゃあ、彼に会うくらいは良いでしょ?」

「それは………簡単には会わせられませんな」


男はやっと私が諦めたことにほっとした様子だった。だけど私が買うことが出来ないならと面会を申し出ると、少し考える素振りを見せた後、にやっとなんとも人の悪そうな顔で言った。

つまりは簡単じゃなければ会えるのね。

私はテーブルに置いた袋を鞄に戻す際に白金貨を一枚取り出しテーブルに乗せる。それで通じたのだろう。サッと男は白金貨を懐にしまう。


「では、こちらへ」


男の後についていくと、一つの部屋に通される。簡素なその部屋はテーブルにソファ、そして置くには手前のテーブルに比べ少し立派な机と椅子がある。

そこで私は待つように言われる。


それにしても、面倒だなぁ。やっぱり先に大元叩いてからこっちくれば良かったかな。

それにあの男の目も気に入らない。私の髪を見たかと思えば、全身舐めるみたいに見てきて……う、気持ち悪い。

さっきまでよく頑張った私!よく耐えた私!誰か褒めて!

……にしても、やっぱり黒髪って目立つのね。あの男だけじゃなく、他の人もあからさまではないにしろ、チラチラこっち見てきたし。

うーん、髪色変えようかな?

…………ま、いっか、このままで。黒髪好きだし。



暫くすると先ほどの男が戻ってきた。


「なにぶん急でしたから、見た目など整える時間がなくて」

「何でも良いから早く会わせてくれない?」

「……わかりました。おい」


男がごちゃごちゃ言っていたが、そんなことは百も承知で言っているのだ。私が急かすように言うと、男は自分が入ってきた扉に向かって声を掛ける。

扉が開き屈強な男に連れられ先ほどの男が入ってくる。


確かにこれは……。


私は近くで彼を見てその有様に眉を一瞬寄せる。

髪はもうどれくらい洗っていないのか、ブロンドの髪は煤汚れていて髭も同様。服装もぼろぼろのズボンに薄いシャツ一枚、そして首輪がつけられている。これは奴隷に付けられる行動を制限する首輪だろう。風呂なんてものは入っていないのだろう臭いも気になる。事実私と話していた男なんかは袖で口と鼻を隠している。

彼は特に何も感じないのか。部屋に通された時も、私を見た時も反応はなかった。


私は近くで彼を見て改めて思う。

彼を仲間にしたいと。


理由……直感だけど?



通貨について説明がわかりにくくなってしまいました。

すみません。

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