第弐話
気が付くと僕はどこかの森の中に立っていた。
羽馬と狩野の姿はどこにも見えない。2人は自分とは違うまた別の場所に転生したのかな?
周りを見渡してもあるのは木と草だけ。後はたまに鳥が飛んでいたりするくらいだ。
一応、腕を振ったりジャンプしてみたりと軽く動いてみるが体には大した違和感はなく、前世と全く変わっていない。
神様は少しいじるとか言ってたけど何も変わっていない気がする。
今、僕の格好は学ラン、持ち物は時計、財布、スマートフォン、ボールペン、メモ帳、。
「いきなり森の中にほっぽり出されても…、悩んでいても仕方ない。取りあえずは二人の捜索もかねて周りの散策散策っと。」
周りを散策すると程なくして気を失っていた2人を見つけることができた。
「2人とも大丈夫?怪我ない?」
「ああ、頭が少しクラクラするがな。」
「ありがとうございます。問題ありません。」
「しっかし、これからどうするよ?」
「まずは、森から出て街を探しに行かない?」
「そうですね。何をするにしても情報が少なすぎますからね。」
異世界か…、これから何が起こるか楽しみだな!
魔法もあるって言ってたけど僕でも使えるようになるのかな?
「クソ!どこまで行っても森じゃねえか!」
「まあまあ、あともう少しだよ。きっと。」
「2人ともお静かに!何か人の声が聞こえます。」
羽馬に言われて僕も狩野も黙って耳を澄ます。と、誰かが何かを叫んでいる。
声からして…男の人か?
「…れぇ!」
「に…じゃ…え!」
遠くて声がよく聞き取れないが2人の男が叫びながら走っているのがわかる。
目を凝らしてみると走っている2人の男の前の茂みがガサガサと揺れながら移動している。誰か、もしくは何かを追いかけているように見える。
「どうする?近づいてみるか?」
「あの人達の正体を知らないことには何もできないしね。」
「そうですね。移動しましょう。」
僕達は男達がよく見える位置に移動する。
先程と比べると見通しのいい位置で改めて見てみると男たちが女の子を追い詰めているのが見て取れた。
「まったく手こずらせやがって!」
「いい子だから大人しくしてな。」
「嫌っ!やめて!来ないで!」
「もうここでやっちまうか?」
「そうだな。」
女の子は足を挫いてしまっているのか座り込んでしまっている。そのまま、後ずさろうとするが少し下がったところで木にぶつかって震えている。
これは人として助けるべき場面だろう。2人が相手だったら勝てないことないかな?
「待て、コラ!」
どう倒そうか考えていると狩野が茂みから飛び出して手前にいた男に殴りかかる。
いきなりの不意打ちに男は避けることも叶わず殴り飛ばされる。
あー、もう!すぐに決着を付けなきゃいけなくなった。正義感が強いのはいいけど計画に行動してよ!
羽馬と僕はうなずき合うと、茂みから飛び出して殴られてフラフラとしている男に止めを刺しに行く。
「狩野!もう一人も!」
「OK!任せろ!」
「な、何だ!?手前らは!?」
2人目も狩野に任せて、未だ焦点の合わない状態で倒れている男の顔を蹴り飛ばす。そのまま、2人でボコボコにする。
そして、気を失っていることを確かめると狩野に加勢すべく振り向くと
「『ショック・ボルト』!」
と、いう単語が聞こえた。
瞬間、「バチィ!」っと音が聞こえる。
男に掴みかかっていた狩野が体を震わせるとその場に崩れ落ちる。
一体何が起きた?
「クソ!ガキどもが邪魔しやがって!ショックボルト!」
そう言って男が手をこちらにかざす手のひらが光ったかと思うと何かが体を貫き、体中が一瞬で痺れて言うことを聞かかなくなり、意識が薄れていく。
魔法か…?転生した矢先にこれかよ…。