第壱話
「クッ、クガ。ゲホ…ゲホ…。」
僕はどうしたんだっけ?
確か…そう、僕は大学受験も終わって家に帰ろうとしていたはず…。ああ、思い出した。東京から高速バスで家に帰る途中で事故で橋から落ちたんだった。うん?あれは、僕の足…。
2mほど先のところに僕の下半身が転がっている。
僕、死ぬのか…来月からのアニメまだ見てないのに…。
だんだんと意識が遠のいていく。意識が闇に落ちる瞬間、何かが光った気がする。だが、そんな事を考える暇もなく意識が完全に外界とシャットアウトした。
「…お…君…起き…。」
誰かが僕を呼んでいる気がする。でも、そんなはずがないんだ。だって、僕は死んだはずなんだから。だから、ゆっくりさせてくれないかな。
「おい!君!起きてくれないかな!?」
「うわ!?」
さっきから僕を呼んでいた声の主が耳元で大声で叫んで僕を起こした。
「全く、起きてるいるんだったら早く起きてくれないかな?僕だって暇じゃないんだ。」
起き上がって改めて声の主を見ると見た感じ歳は14、5歳といった感じの少年か少女かどちらにでも見える子供が立っていた。
周りを見ると一緒に受験に来ていた友達の狩野と羽馬がいた。表情はとても困惑しているようだ。他は何もなくただ真っ白な空間がどこまでも続いていた。
「え、えーと。君は一体誰なんだい?」
「人に名を聞くときはまず自分から名乗るのが礼儀じゃないかな?」
「あ、そうだったね。僕は…。」
「八坂神威、18歳、勾玉高校3年生。好きな食べ物はカレーライス。嫌いな食べ物はビーフシチュー。趣味はラノベの読書とサバゲーっと。まあ、こんな感じかな?」
「そうなんだよ。ビーフシチューよりカレーのほうが絶対美味しいんだよ。なのに、周りの人は皆ビーフシチューの方がいいって言うんだよ。君はどう思う?」
「ん~、僕もカレーライスの方が好きかな。」
「君!よくわかってる!」
「神威!そんなことはどうでもいいんだよ!」
「あなたは誰でここはどこなんです?」
狩野と羽馬が少年に食って掛かる。
「反応が遅いな~。ま、いいか。僕、神様なんだ。」
は?この子が何を言っているのかちょっとわからない。
これは、あれか?死後の世界って感じかな?
「うん。そんな感じかな。」
「!」
へ~神様は人の心を読むこともできるんだ~。
この状況だともしかして転生させてくれるパターンなのかな?
「おっ、鋭いね。そうなんだ、君達を転生させるつもりでいる。」
「もしかして…剣と魔法のファンタジーな世界なの?」
「オフコース!ま、君の要望があれば他の世界に変えてあげてもいいよ?SFの近未来な世界や中世ヨーロッパみたいな世界、より取り見取りだよ。ただし、元の世界はだめだからね。」
「ノープロブレム。元の世界には大した未練なんてないから最初に転生させようとしてた世界に飛ばしてくれて構わないよ。」
「そう?それじゃそうさせてもらうけど…。あ、転生時は赤ちゃんの状態からがいいかな?」
「う~ん、言葉はどうなってるの?」
「問題なく会話できるようにしとくよ。」
「じゃ、このままの状態でお願いします。」
「OK。君達の体は向こうの世界にあわせるため少々いじらせてもらうよ。向こうでは死んだ時みたいに事故であっさり死なないといいね。」
「ありがとう。努力するよ。」
「それじゃあね~。いってらっしゃい。」
神様がそう言うと狩野と羽馬が倒れてまた意識が深い闇にと吸い込まれていった。
そして、何もない白い空間にソイツだけが取り残されてクスクスと笑っている。
「あの子の介入によってもう少しくらい面白いことになるかな~?魔族、人間、龍人、エルフ、ドワーフ、獣人の6種族…。キーリス公国とアリストル王国の戦争…。イブリースとユニオンか…。ククッ。自分でやっておいてなんだけど多分、もっと面白くなるね!」