お分かりいただけただろうか……(振り向けばヤツがいた!)
ちょっと皆さん聞いてくださいよ。
いやね、先日の、冬の終わりを告げるような少し暖かい風が吹いた日の、そのちょうど日が暮れて暗がりが増したころのお話なんですけどね。
わたくし、友人との小用がありましてその日は出かけていまして。自転車でね。その帰り着いて自宅に自転車をしまった際に……体験、してしまいましてね。
自宅の門扉を開けて通ったとき、そいつはいなかった。それは間違いない。
何度と記憶を振り返っても該当する要素は一切なかったんです。ただ、家族も皆して出かけていたのか電灯のともることもなく暗がりめいていただけでして。自分が帰宅一号だというのなら、あとの皆のためにスイッチを入れておこうかと考える余裕すらありました。
が……。自転車を定位置にしまって、よっこらせと元の方へと振り向きつつ戻ったとき。
その間、十秒もなかったはずなのに。
門扉の、近い側の角上に、一抱えほどもあろうかという黒々とした影が! うごめいて!
「うおあっ」
思わず上がった声がそれです。寸瞬の間の後にようやく認識が追いついてからですけどね。ビックリなんてもんじゃないです。後ろからナニに襲われるのかと。
そいつの立ち位置から私が感じた脅威を言葉にするとですね、
――高さといい。
――角度といい。
――無防備な後ろ首の晒し具合……
――最高じゃあ。(掻き切り暗殺するなら絶好ポジション的な意味で)
まさにそんな感じで狙われていましたよ。間違いない。
で、とっさに私は両腕を構え上げでですね、威嚇というか防御の姿勢をとったらですね。
そいつは門扉の向こう側へぬらりと降りて去りましてね。
おそるおそると追いかけて姿を確かめましたらですね、意外に近い距離にとどまっていてふてぶてしくこちらを見返してやがるのですよ。
ええ……暗がりにとてもよく馴染んで潜む、けっこう大型の黒猫だったんですけどね。
こいつ絶対ニンジャだろ……。刺客として送り込まれた動き方じゃねーか……
まあそんな体験があったせいで心臓がしばらくバクバクしていた一夜だったんですけどね、夕食の豚しゃぶさんが美味しかったです。
結論。夜道の暗がりと猫さまの不意打ちには気をつけよう(約束)
以上、小話御囃、失礼いたしまっした。




