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エクストラ・リンク  作者: チャリアン
一章 五月~それは邂逅の季節~
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六話 基本構造

 何故学生と言うものは、こうも朝が早いものか。いや、社会人の中には学生より早い時間に家を出る人も少なくないのだから、それは偏見と言うものだ。


「センカはどう思うよ」


 隣を歩く妹(または姉)に今感じたことを尋ねてみると、


「ああ、うん。いいんじゃない?」


 適当にあしらわれた。


 俺とセンカは歩調を合わせ、朝日に照らされた街を歩く。その理由は、センカの通う学校が俺と同じ――つまり、レジデント宇宙軍第一士官学校のパイロットコースだからだ。


 現在パイロットコースは一学年に二クラスあって、それぞれ二十五人ずつが在籍している。俺は一組でセンカは二組だ。


 パイロットコースの一日の教練は午前に座学、午後に実技と毎日一定のサイクルで行われている。因みに朝一番の座学は八時半からだが、諸々の時間を考慮に入れると七時には起きなければいけない。朝の苦手な俺にとって、これはかなりの苦行だ。


 そんな事を知ってか知らずか、センカが手のひらを出せと要求してくる。素直に出すと、センカはその上にタブレット菓子を一粒乗せた。


「それ、ミント味だから眠気取れると思うよ」


 こういう細かな心配りの出来る点が、センカの美徳だと常日頃から思っている。


 ♢


「え~、突然だが、ロボット工学(ロボティクス)担当の先生が怪我で入院したので、今日から俺が受け持つことになった」


 一時限目。いつもの教室でロボティクスの先生を待っていると、何故か教官が現れてそんな事を言い出した。


 ロボティクスと題打たれてはいるが、その実BHFの基本構造や仕組みなどを教えるだけの、予備知識程度の内容しか学習しない。そこはバカの終着点だから(一部例外も相当数いるが)あまり複雑な内容をすると生徒側がついて来れないからだろう。因みにこの学校にはパイロットコースのほかにも軍属のBHF技術者を養成するロボティクスコースも存在する。


 いや、そんなことはどうでもいい。もっと大切なことがある。BHFの実技担当である教官(アンタ)がなんでロボティクスを教えることになってるんだ!? 人選ミスってるだろ!


「今、俺がロボティクス教えられるのか? って思ったやつ、心配ないぞー。俺は元々ロボティクスを専攻していたからなー」


 俺の思考を読んでやがる……。


「まぁ、お前等もいきなり担当が変わって困惑していると思うが、そこはもう二年生ってことで頑張って慣れてくれ。……ったく、人事部は何考えてやがんだ……」


 小さく愚痴を呟きながらも授業を開始する教官。


 ……丸投げ授業だけは止めてくれよ、座学なんだからさ……。


 ♢


「――リレイ」


 俺は既に理解している部分の授業だったので半分うたた寝しながらノートを取っていると、突然教官に名前を呼ばれた。ヤバい、話聞いてなかったぞ!?


「BHFの基本構造について、簡潔に述べてくれ。説明が面倒臭い」


 コイツ、本当に教官か? 俺が理解しているのを知ってて言っているんだろうが……。


 しかし、問われた内容は特に問題ないレベルだったので、席を立ちあがり説明を始める。


「え~っと、まずBHFには三つの構成要素があります。フレームと装甲、そして外部武装です。フレームとはBHFの内部骨格、スラスター類、動力炉をまとめて機体としての機能を構築している部分のことで、基本的にBHFはこのフレームさえあれば動かすことが出来ます」


 教官がウンウンと頷くのを横目で確認する。よかった、間違ってはいないようだ。


「このフレームを保護する役割を担っているのが装甲です。BHFの装甲材には主にカーボンナノメタル(カーボンナノチューブ合成金属)が使われていて、その形状は機体によって千差万別、様々なものがあります。ここまででBHFの本体は完成している事になります」


 フゥ、と一息吐く。長時間説明すると言うのは、中々肺活量を要求されるものなんだな。


「BHFのフレーム、または装甲にはマウントレールやマウントポイントと呼ばれる、外部武装を装備するオプションが付いています。規格が合う装備であれば固定して携行することが出来、必要に応じて換装されます。BHFは人の感覚で動かす機械ですから、ほとんどの武装は手で保持して使用するタイプになっています。……っと、こんな感じでよかったですか?」


「うん、上出来だ。――パイロットとしてBHFに乗るからには、基本構造から理解を深めておかないと、機体に不具合が生じた時などに適切に対処できなくなる。しっかり復習しておくように。では次――」


 俺の説明を踏み台にして授業を進める教官。弟子の扱い雑だな、オイ。


 クラスメイトに向かって語り掛ける教官の姿は――意外と様になっていた。


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