表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エクストラ・リンク  作者: チャリアン
一章 五月~それは邂逅の季節~
3/43

二話 EAGLE

 RERC‐A001『EAGLE(イーグル)』。今俺の目の前にある鋼鉄の塊の名前だ。


 全高十二メートルという巨大な物体でありながら、どこか儚さを感じさせるフォルム。背面に取り付けられた無骨なメインスラスター。後頭部から伸びるセンサーブレード。装甲の継ぎ目である各関節部からは内部骨格であるフレームが覗く。装甲色はディープブルーだが、所々塗装が剥げてその下の金属板が日の目に晒されている。


 七年前の誕生日に親父から貰った、俺の宝物。


 感慨深げに眺めていると、教官に肩を叩かれる。


「ほら、はよ乗れ。みんな待ってんぞ」


「……了解です」


 渋々リフトロープを掴み胸部にあるコックピットへ向かう。全く、雰囲気ぶち壊しだよ。


 コックピット内部はシートと操縦桿、無数のスイッチや計器類、そして四方を囲むスクリーンモニターで構成されている。シートの下や裏側には荷物を収納できるスペースも存在し、居住性は意外に高い。事実、俺自身も数日間この機体の中で過ごしたことがある。


 俺はシートに座り、コックピットハッチを閉じる。それと同時に機体のシステムが起動する。


 モニターに光が灯り、外部のカメラが映し出す映像とリンクする。


『よーし、みんな乗ったな? ならしっかり身体を固定してリンクシステムを起動しろ―』


 相変わらずの気の抜けた声が、スピーカーから聞こえてくる。


 リンクシステムとは、人間の感覚を機械に乗せる感覚同調システムだ。カメラが映す映像を視覚とし、手のひらなどに仕込まれた圧力センサーを触覚とする。


 俺はベルトで身体をシートに固定すると、リンクシステムの起動スイッチに手を伸ばす。


 身体から魂が抜け出るような感覚の後、俺は愛機と同化していた。


 いつもの癖として、機体の右手を開閉してみる。そこに誤差などは存在せず、イーグルの手は完全に俺の身体の一部と化していた。


「行くか」


 その声は、無線が拾うことの出来る音量よりも小さかったのか、他のクラスメイトに届くことはなかった。


 ♢


 校庭――というより訓練場と言った趣の土の大地に、俺は機械の足で立っていた。


 訓練場には、俺のほかにも二十機近くのBHFが直立している。その全てが俺のイーグルとは違う機体で、型落ちした軍用機を学校が訓練機として保有しているものだ。


『集まってるな―』


 気の抜けた声と共に一機のBHFが近づいてくる。


『遅いですよ教官』


 みんなの意志を代弁するかのように俺が愚痴を言う。


『いいじゃない、教官なんだから』


 ……意味分からん。


『まあ冗談はここまでにして』


 本当にここまでにする気があるのかどうか疑ってしまう程、それまでと変わらない調子で続ける。


『今日の訓練は非武装時の格闘戦についてだ。というわけで、全機武装解除しろー』


 教官の指示に従い、ここ武装を訓練場の端に置く。


『それでは訓練を始めようか。二人一組で組み手をやってくれ。以上』


『あ、あの、教官。幾ら何でもそれは……』


 いきなり生徒の自主自立性を高めようとしてくる教官に、クラスメイトの一人が抗議の声を上げる。いいぞ、もっとやれ。


『む? そうか? なら――リレイ』


『はい?』


 急に教官に呼ばれる。何だろうか?


 ……嫌な予感がする。


『デモンストレーションするぞ。前に立て』


 俺の予感って、結構当たるんだよね。


『』は通信による会話です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ