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ダンサ

作者: レモン


  この道も何度通ったろう。嫌々通った訳でもない。今日はなぜか長く感じる。昨日毒をつかいすぎたからだろうか。毒といっても人を殺す毒ではない。人を盛り上げる毒。ちょっとした香水である。これを私達は毒、毒と言っている。私の舞台は世界中。たとえどんな演劇でも雄大な映画でも、ドラマでも、私の舞台にしたら嘘である。素でそして裸でなければいけない。                     

                                                 ダンサーの手記


  こうして朝いつも缶コーヒーを飲む。舞台の終った後にこの自動販売機を何度利用しているだろう。私は年を三つの区切でとらえる。晩夏から秋、冬から春の中旬、春の下旬から夏の下旬。この区分で人の様子が変る。盛り上がりが変る。春の下旬から夏の下旬。感情が盛り上がり、無理に盛り上げなくてもいいし、静かにし過ぎてもいけない。そのどちらかを選ぶ。冬から春の中旬は段々と芽吹きに向って進む。流れにのる時期。中間にあるのが、いまこの時期、晩夏から秋の時期。春の下旬から夏の下旬、冬から春の中旬の方法は通用しない。


  朝この通りを眺めるといつも思い出す。陽が上った空を見詰める。

  夏休みが終ってこの間まで外で見かけた少年達が制服を着て学校に通い出す。晩夏から秋にかけた風景が流れる。

  木が変っていく風景。

  交差点を過ぎていく人を見て、彼らと違うのではない自分を思う。

  彼らと並んで歩くと淑やかな存在としての私になる。

  舞台はいつもここでするのにかわりない。

  いつも来てた人がいきなり来なくなる日がある。

  いつもダンスホールの隅で盛り上れずじっとしている少年がある。

  この通りにくるといつも子供達が遊んでいる所に出くわす。

  三人の子供達がピンクのワンピースを着て踊っている。

  缶コーヒーが美味しくて一気に飲み干す。


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