第十回! 事故物件デスゲーム大会!
『これから君たちには怨霊デスゲームの参加者として、ゲームを始めてもらう』
「何を言ってんだ?」
『怨霊デスゲームとは、私が各地から収集した自我のある怨霊たちを集結させて行うデスゲームである。人ではないので殺人が合法!』
「説明はしてくれるんだ」
『しかも後片付けまで簡単! まさに画期的!』
「既に死んでるからデスゲームとしては詰まらないんじゃないかな?」
『人格の消失に興奮するタイプだから肉体の喪失はあまり関係ないんだ』
「そうなんだ」
『個の消失を出来る限りたくさん見たい。失われる間際にしかない魂の輝きを感じたい』
「そっか」
『なので各地から集めた怨霊さんたちにはこれから血で血を洗うデスゲームをしてもらう』
「出るのか? 血」
『怨霊は車に血の色の手形をつけたり札を染めたり出来るので血が出る。これは私が集めた怨霊を使った実験でも明らか』
「なるほどなあ」
『ところでお前はどうして死んでいないんですか?』
「あ。人間とは認識されてるんですね」
良かったな、と思った。もしかして俺も怨霊として収集したつもりでいられたらどうしようかと思っていたので、少なくとも人間であるとは認識されているようで安心した。
コンクリート打ちっぱなしの壁に囲まれた中、地域の無料相談ブースみたいにパーテーションで小分けにされた空間に、それぞれうごめく怨霊達が押し込められている。
前方に取り付けられた大型のスクリーンに映し出された男は、真っ赤な天狗のお面をつけたまま首を傾げていた。
『もしかして心霊スポットか何かと勘違いしてきました?』
「いえ。事故物件で格安だったんで借りたんですよね。今日が入居日って訳でして。そしたらデスゲームが開かれたという次第で」
『なんですって!? 此処は僕が買い取った筈だが!?』
「でもSUU█Oに載ってるんですよ……2LDKで管理費2000円の家賃1万円とか最初は異常おとり物件かと思ったんですけど、事故物件なんで安くって~って言ってましたよ」
『もしや僕は大家の扱いになっているのか? そんな馬鹿な。そもそも許可無く載せるな』
「うーん……多分ですけど、消滅させられた怨霊の怨念が外に助けを求めた結果……とかだと思うんですよね。今思うとサイトも文字化けしてましたし、不動産だったところも後日ごまプリン屋さんになってましたし」
『ア!? 散々人を呪い殺した怨霊のくせに助けを求めるな! おまえらは死ぬまで殺し合うんだよォ!』
「勝ち残った怨霊ってどうなるんですか?」
『次回のゲームに使う』
「なんて酷いシステム」
『怨霊に救済などないのでね。なんたって人を殺してるんですよ。許し難いですよ。僕は我慢しているのに』
「なるほど」
『人の理を外れたというだけで人を殺してもいいような存在がいるのだから、僕がそれを殺してもよいとは思いませんか』
「うーん…………」
『一方的に殺してくるような存在ってずるいと思うんですよ。日々を健やかに生きているだけの存在が脅かされて良いはずがないんですよ』
「言ってることは立派だと思うんですけどね」
『だから全ての怨霊はデスゲームに参加させられるべきなんですよ』
そうかなあ……とは言いたいところだったが、黙っておくことにした。天狗の面の奥から覗く瞳が完全に据わっていたので。こういう顔をした人間には何を言っても無駄である。
「ところで俺は人間なんですけど、出して貰えたりしないんでしょうか」
『今から怨霊になったりしませんか?』
「予定はないですね……」
『殺したいと思っている人とかいませんか? あるいはとても恨まれていたりしませんか?』
「いないと思いたいです」
『事故物件に住もうと考えるような男が本当に人様に迷惑をかけていないと言い切れますか?』
「ひどい偏見だ」
『そもそも貴方が此処で死に絶えれば確実に怨霊となることは約束されているのでこのままゲームに参加していかれませんか?』
「人を殺したい欲求が漏れ出ていませんか?」
『ちょっとだけ』
「ちょっとでも駄目ですよ」
『貴方みたいな人が死に際に何を思うのか、私、気になります!』
「本物の美少女に言われたならちょっとは検討したんですけどね」
『分かんないですよ、天狗の面を外したら美少女かもしれないじゃないですか。ボイスチェンジャーですし』
「肩がいかついんだよな……」
デスゲームの主催者のくせに上腕二頭筋が発達しすぎている。此方側からは見えないが僧帽筋もかなり鍛え上げられていると見受けられる。筋トレをするタイプのデスゲーム主催者だ。いざというときには参加者からの暴動に耐えられるようにしているのかもしれない。
『ところで貴方、なんで死んでいないんですか?』
二度目の質問だった。パーテーションに区切られた怨霊達は各々思うままに怨嗟を吐き散らしている。これはあくまで霊同士を接触させないためのものであり、人間への霊障を抑える効果は一切ない。実際、まともな人間なら避けて通る程には禍々しいので、内見時にも半径百メートルには人っこ一人いなかった。
「一応、副業で霊媒師をしておりまして」
『へえ! 良いですよね霊媒師。強くて格好良くて。憧れちゃいます』
「ありがとうございます」
『そういう人が惨たらしく死ぬ時が一番良いものだと古事記にも書いてありますからね』
「そんな訳なくないですか」
『は? あなた古事記読んだことあるんですか。ないでしょ。書いてあるかもしれないじゃないですか』
「何度読んでもイザナギとイザナミが柱回るところで寝ちゃうんですよね……」
『序盤だなあ』
「あれって何をしてるんですか?」
『えっ?』
「いえ。本当によく知らなくて。ご存じなんですよね」
『あーっ、ま、そっすね……えーっと、今回のデスゲームのルールを説明するぜ!』
ルールは以下の通りである。(全く覚えなくて構わない)
この部屋には5×5で区切られた空間があり、俺が入り込んでいる最前列中央(便宜上Cー1とする)(天狗仮面から見て左をAとした形である)以外には怨霊がそれぞれ収められている。
A-1のプレイヤーから順に6面ダイスを振り、出た目の数に応じて部屋を移動することが出来る。その部屋にいるプレイヤーとその場でバトルし、勝った方が残る、といった寸法だ。
10ターンごとに『虐殺タイム』が挟まり、その時点で特定の部屋(Cー5)にいるプレイヤーは、部屋の中から一つを選んで中のプレイヤーを始末することが出来る。
ゲーム終了時に唯一設置された『出口』の部屋に自分がいること、が勝利条件だ。
ちなみに、振られたダイスの目に関しては自己申告となり、出目にダウトをかけられたプレイヤーは自動でアウトとなり惨たらしい死を迎える。
更に追加ルールとして、自分の〝血〟を支払うことで現在どの部屋にプレイヤーがいるのか一つだけ確認出来たりするらしい――が、とにもかくにもプレイヤーを殺すことしか考えていないゲームでどうも聞くに堪えないほど詰まらなかったので、後半は聞き流すことにした。
25人もプレイヤーがいるのにターン制の時点でゲーム性が酷すぎる。あと10ターンごとに虐殺タイムが来るなら11番以降のプレイヤーは初手で死ぬ恐れがある。酷すぎる。終了時に『出口』にいないといけないのに終了条件は『自分以外のプレイヤーを全て始末すること』なので、『出口』の部屋で決着をつけるために最終プレイヤーは共謀しないとならない。のに、他プレイヤーの位置を正しく知るには〝血〟を支払わなければならない。酷すぎる。
馬鹿でかい声で現在位置を表明しながらゲームしたら駄目だろうか? 駄目なんだろうな。
結局、このルール説明において何が一番重要な情報かと言えば、今現在、この場には俺を除いて24体の怨霊がいる、という事実だ。
「集めすぎじゃないですか?」
『死に絶える怨霊なんて居ればいるほどいいもんですからね』
「あとクソゲーすぎませんか?」
『デスゲームも10回を迎えると新しいゲームを考えるのも大変なんですよ。より多く集めて一気に殺すとなるとゲーム性も限られてきますし』
「ボードゲーム方式じゃなくてアトラクション方式にするとか……」
『あれはねえ! 維持費が尋常ではない! しかも激しい抵抗の末に華々しく散られたりすると設備が壊れたりもする! 賠償金でボーナスが吹き飛んじゃいましたよ!』
「デスゲーム主催者ってボーナスとか出るんですか」
『いえ。本業の方です』
「ああ、副業でデスゲームを……」
『一応、各地の怨霊を除霊しているも同然な訳ですからね。除霊で稼いだ金でデスゲームを運営しているという寸法です』
「あ。じゃあ本業は除霊師なんですね」
『いえ。ジムトレーナーです』
「だからそんなに筋肉が」
いやだな。副業でデスゲーム主催しているジムトレーナー。
副業で除霊をしているジムトレーナーはなんだか頼もしい気すらしてくるのに。
「そもそも、怨霊の方々はまともにゲームしてくれるものなんですか?」
『そういう風に作ってあるので』
「なるほど」
どう判断しても、かなり高位の除霊師だった。なんでこんなところでデスゲーム主催者をしているんですか? もっと他に才能を活かす場面あるだろうに。
いや、活かしているからこそのデスゲーム主催者なのかもしれない。閉じ込めた怨霊を殺し合わせて勝者を決めるという構造は要するに蠱毒であり、最後に残った一体を使わせて欲しい人間は無数にいるだろう。なんだったら、賠償金を補って余りあるほどの報酬を用意する人間だっている筈だ。
いやでもこの人、せっかくの怨霊も使い潰す気なんだよな。やっぱり向いていないのかもしれない。衝動を抑えられていない時点で、分類上はシリアルキラーに近い。
『世間話もそろそろ終わりましょう。明日も早いのでそろそろ殺し合ってもらわないと困ります』
「有給とか取るもんじゃないんですかね」
『三日取ったんですけど、準備に時間がかかりすぎちゃって……』
まあ、これだけ集めればそうなるか。集めた怨霊を各所に配置するだけでも結構な手間である。そもそもこんなパーテーションできっちり仕切ることが可能な時点で、中々に手のかかる仕込みが必要な筈だった。
どうしてこれほどの人の名を聞いた覚えがないのか。いや、まあ、そうか。趣味がデスゲームだから、界隈からも避けられてるんだろうな。
『それでは諸君、ゲームスタートと行こう』
なんだか重厚で不穏なBGMがかかり始めた。実際のデスゲーム会場でもかかっているものなんですね。
さて。ゲーム内容については先ほど言った通りのクソなので省略する。
10ターン目が終了し、一度目の『虐殺タイム』が来た時には六体の怨霊が消え失せていた。バトルの末に空いた部屋に止まることが多いせいか、想定より更に進みが遅い。とりあえずハイライトとしては、『面白半分で川に流されてしまった動物霊の集合体』である怨霊Hさんだとか、『恋人に生きたまま埋められた挙げ句にその上に家まで建てられてしまった女性』である怨霊Rさんだとかが、バトルと『虐殺タイム』の洗礼で亡くなった。
あの男を殺すまでは死ねないのよォ!と叫ぶRさんを前に、主催者のジムトレーナーは大笑いしていた。酒まで飲んでいる。好きなんだなあ……。
『彼女、標的である恋人はとっくに呪殺しているんですよね。それどころか恋人が最終的に娶った奥さんとその息子二人も呪い殺しているのに、恨みが収まらずに似た背格好の男を呪い殺し続けていると来たもんです。死んで当然ですね!』
「なるほど」
どうでもいいが、怨霊は移動の際にはパーテーションをすり抜けることが許されているのに、此方は生身で動かないとならないので結構しんどい。パーテーションの下に開いた30センチくらいの隙間を通って移動している。
「動物霊さんはどういう存在だったんですか」
『川辺に引きずり込んでは溺死させる系怨霊ですが、被害者の味を覚えてしまってからは手当たり次第になってしまいまして』
「ああ……怨霊も人の味を覚えると駄目ですよね……」
『動物霊はあまり面白みもないんですが、もう救いがたいものになってしまったので、まあ致し方なく数合わせに来てもらったという次第です』
人間!肉!人間!肉!と喚きながら消えていった彼らを思うと少し悲しくもなるが、人を食ってしまったからには処分されなければならないのは怨霊界でも同じである。結局、規則というのはヒトに都合の良いようにできているのだ。
その他、大体平均して最低二十人ずつは人命を奪っていそうな怨霊達が、各々クソゲーに巻き込まれて無残にもその命(?)を散らしていった。
そして、あっというまに半日が過ぎた。
『しまった! ターン制にしたばかりにやたらと時間がかかる! 筋肉のためにも寝ないとならないのに! 出勤日になってしまう!』
「一旦中断しときましょうよ」
『でも! これからがいいところなのに!』
確かに、怨霊の中でも特に意識が残っているタイプの狡猾な者達が生き残り始めている。こんなよく分からんゲームでも参加者が怨霊だとそれなりにゲーム性が生まれるのだから驚きである。
「責任持って監督しておきますから、まずは働いてきたらいいんじゃないでしょうか」
『当日欠勤は社会人としてあるまじき行為ですからね……』
欠勤よりもあるまじき行為に耽っている気がするが、余計なことは言うまい。俺はそれからしばらくかけて説得し、名残惜しそうに何度も振り返るデスゲーム主催者を見送った────途端、周囲の怨霊が一斉に騒ぎ出した。
『お前、あの男に一泡吹かせてやりたいとは思わないか?』
『まったくなんて傍迷惑な人間なんだ。非常識すぎる』
『あの男こそ断末魔の叫び声をあげて絶命するべきだ! 血肉を捧げろ!』
『アアアア゛ オォオ゛ ェオオオ……』
『おうちにかえりたいよお おいしいにんげんがたべたいよお おなかがすいたよお』
さて。
どうしたもんかな。
主催者不在でもシステムは変わらず動いているらしい。というより、仕組み上簡単にオンオフなどできないから一度始めたら止めようがないというだけかもしれない。なるほど、俺を帰そうとしなかったのも納得である。中断はそのまま、儀式の破綻を意味する。
三分考えてから、俺はパーテーションの向こうへと語りかけた。
「皆さん、落ち着いてください。良いですか、このゲームには、必勝法があります」
デスゲームでこれを言うやつを信用してはならない。
令和の常識だが、どうやら残った彼らは令和の怨霊ではなかったらしい。
その後。
彼らはものの見事に騙され、俺以外は全滅した。
勝手にゲームを終えたと知られれば何をされるか分からない。もはや役目を終えたパーテーションを押し除けて出口の扉に手をかける。
しかし、勝利条件を満たしたのだから開けられるはずの扉はびくともしなかった。なるほど。あまり誠実なデスゲーム主催者ではないらしい。
しまったな、と思ったところで、オフラインになっていたモニターが明るくなる。
昼休憩の時間に戻ってきたのか、プロテインを飲みながら現れた主催者は、モニターの中で綺麗な拍手を響かせた。
『全て監視カメラの映像で見させてもらいましたよ……素晴らしい……醜く争い蹴落とし合う怨霊達の断末魔のなんと美しいことか……』
「楽しんでもらえたようで何よりです。とりあえず、クリアしたので出してもらえませんか」
『え? 残った貴方は次のデスゲームに使いますよ?』
「怨霊じゃないのに?」
『でも、これからなる予定ですよね?』
まさか、生身の人間を手にかける気だろうか、と警戒しつつ見上げたモニターの中で、赤い天狗の面が真っ直ぐにこちらを見つめていた。
『死ぬつもり活動されてますものね、貴方』
「…………」
『浜津龍史さん、と仰るんですね。少々調べさせていただきました。七年ほど前、購入した一軒家に仕込まれた怨霊のせいで奥さんと娘さんを亡くしていますね。葬式からしばらくして不審火で家屋は全焼、残った瓦礫から出てきた焼死体が貴方ということになっていますが、これは後に貴方の所属組織となる樊明会の用意した別人です。この遺体に元凶の怨霊を閉じ込めた上で焼いた、といったところでしょうか。
以来、貴方は不審物件を専門として仕事をこなしていますが、その解決法のどれもが己の命を顧みないものです。
今回此処に来たのも怨霊の気配を感じてのことかとは思いますが、依頼もないのにやってきている時点で、貴方は職務として命をかけているのではない。自暴自棄に理由をつけるためにそれらしい仕事をし、妻子と同じ苦痛を受けられる死に場所を探している。そうですね?』
参ったことに、界隈の情報を簡単に探れる程度には実力者のようだった。
降参の意を込めて両手を上げつつ、あくまで軽い調子で答える。
「生き延びる気がそんなにないだけで、死にたい訳ではないんですよ」
『でしょうね。デスゲームでも見事に勝ち上がりましたし、素晴らしい戦績です』
「なので出していただけると助かります」
『怨霊になっちゃうのに?』
「予定はないです」
「貴方の奥さんと娘さんだって、予定があったから怨霊になった訳ではないでしょうに」
刺し殺すに等しい俺の視線を受け流すように、主催者は気楽な調子で肩を竦めてみせた。
七年前、新築で建てた一軒家に埋め込まれた遺体による霊障によって、俺の妻と娘は呪い殺された。結末は先ほど、主催者が語った通りだ。
そしてその三年後、すっかり更地となった土地で、幽霊が出る、と噂が広まった。実際、草も生えない土地には、呪い殺された時と同じ形をした妻と娘がいた。つまりは、不格好につなぎ合わされて一つになった八本足の化け物が、上手く使えない関節を奇妙に蠢かせていた。
許し難い暴挙だ。死して尚弄ばれる道理があるものか。愛した人の顔をした化け物が人を殺してしまう前に、俺はそれを始末した。幸いにも、家族の死をきっかけに活動し始めた霊能者としては、かなり筋がいい方だったのだ。だから、妻の顔で咽び泣いて犬の死骸を貪る化け物を殺すこともできる。素晴らしいことだ。自分以外の人間に片付けられてしまったのなら、俺には我慢がならなかっただろう。それこそ自死を選ぶに違いないほどに。
あの日から俺は、二人の名前を呼ぶことが出来ないでいる。
『貴方みたいなタイプって、成長速度は著しいですが予後が悪いんですよね。除霊なんて命賭けてまでやるものじゃあありません、デスゲームやるついでくらいが丁度いいんですよ』
「だからこれからもデスゲーム参加者になれと?」
『少なくとも、貴方が怨霊になってしまったとしても、僕なら対処可能です。そんな精神状態で怪異絡みの仕事で亡くなって怨霊にならない訳ありませんからね、亡くなった奥さんと娘さんに顔向け出来ない結末にはしたくないでしょう? 貴方に相応しい死に場所を探すならうってつけかと思いますよ』
「………………」
見透かすようなことをいう天狗面が腹立たしかったが、反論出来ないのも事実だった。
黙り込んだ俺をモニター越しに見下ろした主催者が、満足そうに頷いてみせる。
『それにそろそろ一人で運営するのにも限界を感じていましたからね! 内通者ってデスゲームあるあるじゃないですか? わくわくしてきましたね!』
「内通者って大体終盤で死にません?」
『いいですよねえ! 出来る限り惨めに足掻いて死んでもらえると助かります!』
晴れやかに響く声を聞く限り、どうやら本気で言っているらしかった。なんだか全てが馬鹿馬鹿しくなってきて、メチャクチャになった室内を振り返る。後片付けが簡単、というのは大嘘だった。
「とりあえず、部屋片すの手伝ってくれませんか?」
霊障由来の賃貸契約なんてあってないようなものだろうが、一応は今日から住むことになった自宅である。
今夜寝る場所もないのでは流石に堪える、と思って目を向ければ、少しの間の後に、天狗の面が画面外へと消えた。
さて。
そういう訳で相棒となった天城爽英は、日頃から赤い天狗の面を着用したがるタイプの不審者だった。職場では面白枠として許されていると言うから驚きだ。
「お祭りが大好きなんですって言うとたまに許してもらえます」
「たまにじゃないですか、やめてくださいよ」
かろうじて常識が残っているのか、日頃はUVカットのフェイスカバーとサングラスを着用して生きている訳だが、当然、顔を隠したムキムキマッチョなんて、歩くだけで五分に一度は職質される。
不審者の仲間としてしょっぴかれでもしたら、それこそ妻と娘に顔向けできない。早急に縁を切って距離を取るべきだとは思うのだが、デスゲームのために怨霊を集める際に、心底救われたと感謝して頭を下げる被害者の方を見ると、決意は揺らいでしまう。
天城の活動は、動機こそあまりよろしくないが、確実に、かつての俺のような存在を救っていた。
俺みたいな思いをするような人間は、出来る限り少ない方がいい。
いない方がいい、と言えるほどの力があればいいが、俺に出来るのは精々が、天城の手伝いをしてデスゲームに参加することくらいだった。
ので、今日も俺は、立案段階でクソゲーとかしている企画を前に頭を抱えるのだった。




