厨抜き大作戦2
おおよそ1時間程した頃、botと化したツキの意識が戻ってきた。
「髪も切らなきゃいけない!」
騒ぎ出したツキの髪に目をやると確かにぼさぼさだった。そういえば自分で髪の色を入れたと言っていたし風貌からも当分行っていないような雰囲気だ。考えているとツキがまた騒ぎだした。
「美容室って予約がいるらしい!」
うるさい、そう言いながら検索してみると確かに近くで予約できそうな場所は無い。だが冷静に見てこの髪は個性的がすぎる、ああ個性的かな。
「ルト、お前器用だったよな!?俺の髪切って染めて焼いて煮てくれ!」
余計なものが多い気もするがまぁいい。それより本当にそれしかないのか。髪と言うのは印象に重大な影響を与える。素人の俺にとっては責任があまりに重い。
「俺に任せろ。お前をかっこよくしてやる」
親友もといルームメイトの初恋、応援する他無い。そう自分を奮い立たせスーパーに行って染料を買いに行った。整えて黒にしてやろうと思っていたのだがどうにも品揃えが良く、凝り性の俺の好奇心を擽った。
全力で思案する。大学生の安牌は茶色。だがあまりにステレオタイプ、だが黒じゃ普通になるだけだ。それでは最低ラインとしか言いようがない。セットしやすく、自分を出してる風のーーー。
「パチッ!」
湧き出てきたアイデアに指を鳴らす。完璧だ。
「ツキ、お前の大学生活に花を添えるのはこの髪だ!」
「変なテンションになってるじゃねぇかよ。ほんとに大丈夫なんだろうな?」
「安心しろ。俺はいつだって最適解に導くぜ」
「どんな髪にしてくれるんだよ。別に普通でいいぜ?」
「それは仕上がってからのお楽しみだぜ」
黒と茶色の染料とラップを買って家に帰った。
そして洗面台の前に座らせ、作業に取り掛かる。ミスター器用貧乏。そう呼ばれた俺の器用さは自認していたより凄いものかもしれない。将来美容師いけそう。そう考えてしまうほどいい手捌きだった。そしてー
「完っ成!!」
「うおぉぉぉぉぉ!!!」
ツキが大声をあげた。