厨抜き大作戦1
「おま、一目惚れってことは、好きな人が出来たってことか?そうだよな?」
驚きで取り乱しながらではあるが、なにか勘違いかもしれないと考えて確認してみると耳を真っ赤に染めて小さく頷いていた。片付け終わった様でツキはおもむろに立ち上がったと思うと
「大学に着ていく服がないから買いに行こう」
そう言って俺を連れ、見知らぬ土地を散策することになった。
「「服って、何買えばいいんだ?」」
2人で顔を見合せた。良く考えればツキはドクロか十字架か訳の分からない英語がプリントされた服、もしくはその全てが印刷された服しか持っていないし、俺はジャージしか着ない。オシャレという観点に置いて底辺も底辺な俺たちに出来る選択肢はふたつだった。
1、店員に聞く。だが好みや種類を聞かれた時に何をいえばいいか分からない。
2、マネキン買い。だがダサかったりもするらしい(ネット調べ)。
どちらも一長一短、二者択一で二つに一つ。俺のジャージを着たツキが歩みを進めた。その先には店員がいる。
覚悟を決めたように、一心不乱と言えるように、俺に任せろと背中で語っているようにも見えた。やはり一皮むけたようだ。
「すみません、おすすめのふ、、!?」
明らかに動揺が見て取れた。やっていることの凄さを自認したのか、そう思っていたが、少し違うようだ。
恥じらいがある。助けなきゃ、そう思ってツキに声をかけようとした瞬間だった。
「塚本くんじゃん、服買いにきたのー?」
のほほーんとした空気に一変、そこでおおよそ把握した。彼女が一目惚れの相手であると。なんともぎこちない受け答えを続けるツキと上手く会話を続ける相手さん。結局ツキはおすすめの服を聞くことにに成功した。加えておすすめされて結局マネキン買いもした。商売上手とはこのことかもしれない。
「よく話せたな」
そう言ったのだが
「幸せだった。」
ツキは店を出た瞬間からそれしか言わなくなった。