8章: 八代山田(ハチロウ・ヤマダ)登場
八代山田の存在が倉庫の空気を凍りつかせた。
彼の姿は、まるで何者も恐れぬ王のように威圧的だった。
一瞬の静寂を破ったのは、濡れた床に響く革靴の音だった。
「俺の縄張りに踏み込み、部下を倒すとはな……。
大した度胸だ、認めてやるよ。」
その声には嘲笑と興味の両方が滲んでいた。
彼の隣から四人の武装した手下が現れ、俺たちに銃を向ける。
だが、ハチロウは軽く手を上げ、制止した。
「撃つな。こいつらがどこまでやれるか見てみよう。」
タケシが笑い、指先でナイフをくるくると回す。
「今すぐ見せてやるよ、クソ野郎。」
次の瞬間、タケシが疾風のように駆けた。
ナイフの刃が、ハチロウの首筋を狙う——
だが、ハチロウはわずかに頭を傾け、避けた。
時間がスローモーションのように感じられた。
タケシは即座に二撃目を繰り出す。
横薙ぎの鋭い斬撃——
だが、ハチロウはすでにそこにいなかった。
まるで**次の一手を読んでいたかのように、軽々とかわした。
「速い……」
タケシが驚愕の声を漏らした、その瞬間——
ハチロウの反撃は一瞬だった。
彼はタケシの腕を掴み、無慈悲にひねり上げる。
ドガァンッ!
タケシの体が宙を舞い、木箱の山に叩きつけられた。
箱が粉々に砕けるほどの衝撃。
「タケシ!」
ユミが叫び、すぐに動こうとする——
だが、その瞬間、ハチロウが彼女をじっと見つめた。
「やめろ。」
ただ、それだけ。
……そして、ユミの体が完全に静止した。
「なっ……!? なんだ、これは……!」
ケンジの目が見開かれる。
ハチロウが不敵な笑みを浮かべる。
「俺はただの犯罪者じゃねえ。
お前らにはない“力”を持っている。」
アイコが焦りながらタブレットを操作する。
「**特殊能力……**普通の人間じゃない……!」
俺は目を細め、冷静に言った。
「……それがどうした?」
ハチロウが低く笑う。
「いいねぇ……。
お前がリーダーか?」
「レンジだ。」
「ほう、レンジか。」
彼は指を鳴らす。
手下たちが、ゆっくりと俺たちを取り囲んだ。
「さあ、お前らの力を見せてみろ。」
本当の戦いが、今始まる。