第6章: 襲撃の夜
時間は思ったよりも遅く進んでいた。
一分一秒が長く感じるほど、俺たちはその瞬間を待ち続けていた。
隠れ家に集まり、装備を確認し、作戦を再確認し、心を戦いに備えた。
アイコはラップトップを叩き続け、第7区の監視カメラをチェックしていた。
ざらついた映像の中、鉄の手の手下たちが倉庫の周囲を巡回しているのが見える。
「予定通り。」
彼女は画面から目を離さずに言った。
「見張りの位置もカメラの動きも変わりなし。でも、あと五分で全て止まる。」
ケンジが戦闘用のグローブを締め、肩を回した。
「手早く、確実にやるぞ。ハチロウを捕らえて、奴らにはっきりとしたメッセージを送る。」
タケシが笑みを浮かべながら、ナイフを器用に回す。
「運が良ければ、少しは抵抗してくれるだろうな。ウォーミングアップにはちょうどいい。」
「調子に乗らないで。」
ユミが太ももに固定したホルスターを調整しながら注意する。
「目的は効率的な制圧よ。無駄な見せ場はいらない。」
俺は仲間たちを見渡した。
この作戦の重圧が、俺の肩にのしかかる。
「持ち場につくぞ。アイコが電力を落としたら、すぐに行動開始だ。」
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計画通り、俺たちは二手に分かれた。
ケンジとユミは下水道を通り、
俺、タケシ、アイコは倉庫の西側へと忍び寄る。
夜の闇は俺たちの味方だった。
気配を殺し、影に溶け込むように目標へ接近する。
アイコがイヤホンをつけ、カウントダウンを始めた。
「3… 2… 1… 今!」
倉庫の明かりが一度だけチカッと点滅し、完全な闇に包まれた。
警報が鳴る。
だが、それもアイコのウイルスによって一瞬で沈黙した。
「行くぞ!」
俺は低く囁き、前進する。
タケシと俺は、入口の見張りを音もなく仕留めた。
一撃で静かに倒し、無駄な音を出さない。
通信機からケンジの声が聞こえた。
「下水道クリア。これより突入する。」
アイコはタブレットを叩き続けながら言った。
「敵の通信をブロック中。奴らは応援を呼べない。」
俺たちは倉庫の中へ進んだ。
鉄と火薬の匂いが鼻をつく。
積み上げられた荷箱には、違法武器のマーキングが刻まれていた。
中には、何のラベルもない不審な箱も混じっている。
廊下の影から、二人の手下が姿を現した。
奴らが銃を抜くよりも早く、タケシが二撃で沈めた。
二階の扉が勢いよく開く。
「敵が来るぞ。」
通信機越しに、ケンジの警告。
直後、銃弾の雨が俺たちの足元を貫いた。
俺たちは反射的に物陰へ飛び込む。
暗闇の中、鉄の手の兵たちが四方から押し寄せる。
待ち伏せだ。