12 hugs (like butterflies)
●「売れ線」から距離を置いた作風で、ヒットシーンの中で異彩を放つ。
【収録曲】
1.Hug.m4a
2.more than words
3.Addiction
4.GO!!!
5.永遠のブルー
6.countdown
7.Flower
8.honestly
9.深呼吸
10.人魚
11.つづく
12.FOOL
最近、この「羊文学」というバンドが人気を集めているようで、今作で初めて彼女達のアルバムを聴いてみたのですが、内容自体はその状況と裏腹に、「売れ線」から随分距離を置いた作風のように思えました。全体的にシューゲイザーの要素が強いギターロックといった感じで、メロディはあえてポップな方向性を避けている印象があり、サビで分かりやすく盛り上がるような雰囲気ではありません。アニメのタイアップが付いてヒットした『more than words』においても例外ではなく、「こういった曲でもアニメソングになるんだ」といった感想を抱いてしまうくらいです。
言い換えると、「瞬間的なインパクト」よりも「曲全体を通した空気感」を重要視している感じでしょうか。『GO!!!』は軽めなサウンドと激しいサウンドの対比が興味深いですし、『深呼吸』は淡々としておりながらもどことなくメランコリックな雰囲気が印象的。『FOOL』は途中でサウンドが激しくなってそのまま駆け抜けていくさまが耳に残りました。一部分だけ切り取ると地味でぼやけている面が否めないものの、全体を通して聴くとくっきりと輪郭が見えてくる……そういった楽曲を届けようとする姿勢を見て取ることができます。
個人的にはメロディが弱い印象があり大きくはまることは無かったのですが、いわゆる「キャッチー」な面が重要視されるヒットシーンの中で異彩を放つバンドであることには違いないでしょう。そういう意味では、現在の音楽シーンの「懐の深さ」というものを実感できた一作でした。
評価:★★★★