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87 ドヤるメガミ

「無自覚?」


「そう無自覚。律樹君は薫が悪意を持って精神か何かをコントロールしていると思ったんだよね」


「悪意とまではいかないけど、意図的に何かしてるなとは思ってました」


「ねえまたその話? 何度も言うけどアタシにはミヨちゃんや輔のような変な力なんて無いって言ってるじゃん」


「薫は少し黙ってようね。今は律樹君とお話ししたいの」


「えー・・・まあいいっか。輔ゲームやろー」


「一人で勝手にやってていいよ。僕もりっくんに興味あるしね」


「りょうかーい。んじゃ格ゲーやるかなー」


 言いながら棚にしまってあったゲーム機を取り出し手際よくセットしていく祭主先輩。まるで何処に何があるのか完全に把握している動きだ。


 ていうか今時格ゲーなんて珍しいな。まあ何となく祭主先輩に似合っている気もするが。

 

「この話をするにはもう少し薫の力について説明する必要があるね。まず薫が持っている能力は霊的なものや怪異的なものなどの部類には属さない。そしてその力は神託や予言と呼べるものなの」


「もしかして神様?」


「そだよーアタシは女神さまー、なんちゃって   いたっ!」


「えへへ」とおどける祭主先輩を望月先輩がペチッとチョップし「あなたはゲームに集中してなさい」と窘める。


「神託と言うのはものの例えだよ。薫は直感だって自分で言っているけど、的中率100%の直感なんてあると思う?」


「あり得ないですね。ていうか何を直感してるんですか?」


「その人の進むべき道、と言えば格好良く聞こえるけど、実際は相談してきた相手が誰に相談すればいいのかが分かるらしいの」


「つまり今回俺のことを波子屋さんに紹介したのは祭主先輩の神託が降りてきたからってこと?」


「そう言うこと。昨日私が聞いたのはまさにそれだったの。ここからがおそらく律樹君が懸念している部分だと思うのだけど、その神託を聞いた人はそれが完全に正しいことだと思い込んでしまうのよ。君の時のようにどうしてこの人が適任何だろう? って考えることすらしなくなる。でも当の本人はそんなつもりで言ったつもりはなくて、気軽に紹介しただけって思ってるの。そうなんでしょ薫・・・・・薫?」


 ゲームに夢中のなっているのか「キャッハー」とか「うわヤバイ!」とテレビの画面に向かって叫んでいて望月先輩の声は全く届いていないようだ。


「・・・・まあそんな感じかな。とにかく相談者が妄信的になっているのは本当のことだけど、別に騙しているとか悪だくみをしているとかそう言うのではないから、それだけは信じてあげて」


 それは祭主先輩を見れば分かる。今日初めてあったとはいえ、騒がしくて面倒な人なだけでとても人を騙すような人間には見えない。完全に信じることは出来なくても一先ずこの問題は保留にしてもいいくらいの信憑性は今の話にはあった。


「とりあえず、ですが。ところで今の話を鵜吞みにするなら波子屋さんが抱える問題を俺が解決できるってことのいなりますよね? でも普通ではないことだけは分かったるけど、正直それ以外のことは全くなんですよね。だから先輩を頼ろうとしたんですが・・・・」


 バリバリ助けてもらう気満々でいた。しかし根拠は無いのだがその望みはなんとなく叶わなそうな気がする。


「それは分かってる。だけど薫だけでなく私も円城君も君を手伝うことが出来ないかな」


「それは先輩たちがイレギュラー的な存在だからですか?」


 仮に祭主先輩の能力が本物で俺が波子屋さんの助けになるのだとして、望月先輩はそこへ訳知り顔で割り込んできた状態だ。この筋書きが祭主先輩が示した道標の範疇であればこのまま助力を得て進めば良いだけなのだが、事情を知っている彼女らが手を貸すというのはどうも違う気がした。


「イレギュラーかあ・・・・・・そういう見方もあるかもしれないね。本当は別の理由があるのだけど、その解釈でも間違ってないと思う。でも勘違いしてほしくないのは、私達が手を出すことで失敗してしまうとかそういうことじゃないの。多分私達が手伝っても問題を解決出来る可能性は高いはず。だけどね、その結末が依頼者の望む形になるとは限らない。このことは覚えておいて」


「ちまり俺主体で動いた方がハッピーエンドになる可能性が高い、そう言いたいんですね?」


「ハッピーハッピー って輔アンタそれ禁じ手じゃん! この卑怯者ー」


「よく言うよ。薫が今使っているキャラ自体禁じ手みたいなものでしょ」


「ぐぬぬぬぬ、あーだったらアタシももう遠慮しないからねー」


「そのキャラ使っている時点で何を遠慮しているっていうんだい? ていうか僕の勝ちだね」


「くっそー・・・・・・よし、輔アンタは課題でもやってなさい。おーいりっくーん、アタシと勝負しよー」


 ついさっき俺に興味あるから一人で勝手にやってろとか祭主先輩に言ってたくせに、いつの間にか円城先輩もゲームしてるし・・・・・・


「いや俺格ゲーとかあんまやんないし。それで先輩たちも望月先輩と同じスタンスって認識でいいですか? ていうか話どこまで聞いてました?」


「僕は成り行きに任せるよ。りっくんが手伝ってくれって言えば場合によっては手を貸すし、構わないでくれと言われればその通りにするよ。でも望月さんの言う通り今すぐは無理かな」


 つまり積極的ではないものの状況によってはさもありなんってことか。


「アタシはムリー。そもそも輔やミヨちゃんみたいな力持ってないもーん。あーでもアタシが暇な時は相手してねー」


 うんうん、手伝う気ゼロですね。一応俺はアナタから厄介な問題を丸投げされてしまった被害者なんだけど、このことを言っても意味なさそうだし納得はできないけど胸にしまっておくかあ。


「でもそうだな、ここは先輩として助言の一つくらいは与えてもいいかな」


「もしかして円城先輩は波子屋さんの身に何が起きているのか知ってるんですか?」


「いやまったく。だけどりっくんが選ばれたってことにヒントがあるんじゃないかなって僕は思うよ。だからまずそこから考えれば解決に繋がるんじゃないかな」


 俺が選ばれた理由かあ。まあ確かに考慮する価値はあるかも。と言っても今のところ俺の手札はそう多くない。現状一番解決出来そうなのはやはりガラス渡りの力を借りることだろう。今回カギとなりそうなのは波子屋さんの失った記憶だ。アイツは記憶を消すことは出来ないが追加は可能。直接解決は出来なくても何らかの役には立つかもしれない。


 思慮に耽っていると「だったら私からも一つだけ」と望月先輩が口を開いた。


「あの公園で起きた例の件の影響をここ一週間私は調べていたのだけど、今のところ大きな問題は何も起きてないのだけど・・・」


 それは俺がいくら夏鈴さんに訊ねても教えてくれなかった情報だ。


「何も起きてないなら良いことなのでは?」


「そうだね。だけどこれから先起こらない保証はどこにもないの。夏鈴さんは私のことを高く評価してくれているけど、私だって万能ではないし見逃すことだってあるから。それに調べるにしても限界があるのよ」


「正直先輩がどの程度の力の持ち主か全然知らないから限界とか言われても全く想像出来ないんだけど、まだ油断は出来ないってことですよね?」


「そう言うこと。あの公園の周囲に住む人全員を調べることなんて不可能だし、一応うちの生徒に異常がないか毎日観察はしているけれど、先生も含めれば六百人以上でしょ? こんな時に限ってあの子もいないし・・・あっ、最後のは聞かなかっったことにしてね、こっちにも事情があるから。それで私が言いたかったこと分かってくれたかな?」


 あの子がどの子なのかスゲー気になるが、この様子ではどうせ教えてくれなさそうだし頭の隅にでも置いておくか。


「あの公園の出来事が関係している可能性があるってことですよね。正確にはそれが引き金になって起きてしまったって感じみたいですけど」


「もちろん私が先に何か見つけたらちゃんと報告してあげるから安心して。私からはこれくらいかなあ」


 霊的なエネルギーが関係しているのなら俺にどうこう出来る問題ではなさそうな気もするが、とりあえずやれるだけやれってことだよな。


「アタシもりっくんにアドバイスいい?」


 格ゲーを止め今度は乙女ゲーのようなものをやり始めていた祭主先輩が少し上から目線で俺に言う。


「あー祭主先輩は結構です」


 先輩のことだしどうせ碌なことでは無いんだろうなあ。


「な、何でよー?」


「だって丸投げしてきた人が何言ってるんだって感じじゃないですか。それと二人が作った流れに便乗して先輩面ムーブかますのやめてもらえません?」


「うぅぅ・・・・りっくん酷い、この小鬼! 小悪魔!」


「なんでちょっと可愛いくしちゃってるんですか? まあ半分の半分くらい冗談なんで続けてください」


 これはいきなり厄介ごとを丸投げしてきたことに対してのちょっとしたただの意趣返しだ。別に祭主先輩のことを恨むつもりはない。


「寝顔は可愛かったのに今のりっくん全然可愛くなーい」


 寝顔? あーさっきペロ氏の威圧にあてられて気を失ったときに見られたんだったけな。


「可愛くなくてすいません。それで今のがアドバイスってことですね? なら少しでも先輩に可愛くみられるよう今後とも精進してまいる所存です」


「全然ちがーう! ていうかなんか喋り方ムカつくし。いい? 確かにアタシは相談されたことを他人に丸投げすることしか出来ない無能だけど、それでも一つだけ確実に言えることがあるの」


 問題を解決してくれる人物を的確に示せる時点で無能というのは違うと思うけど、もしかしたら祭主先輩はその辺りのことを結構もどかしく思っているのかもしれない。人任せではなく自分の力で助けてあげたいと考えていても不思議はないしな。


 先輩は続ける。


「アタシに相談を持ち掛けて来た人はね、みんな最後はハッピーになるんだよ」


「・・・・・つまり、お前しくじりやがったらぜってぇ許さないからな! と俺に釘を刺したいと?」


「だから全然ちがーう! 何でそうネガティブな思考になるかなあ・・・・・・アタシが言いたいのはね、気負わなくてもいつも通りのりっくんでいれば大丈夫ってことなの! いい、分かった?」


「なんすか、その全く根拠のない自信は。一体どこから湧き出てくるんだか・・・」


「だってミヨちゃん言ってたじゃん」


「ああ確か祭主先輩のこと残念で仕方がない子だって言ってましたね」


「ちっがーう! まったくもってちがーう!」


 両手を交互に突き上げながらプンスカと喚く祭主先輩だが、今度は座った状態なので天井に手が当たることはなかった。だが代わりに持っていたゲーム機のコントローラーを投げ飛ばしてしまい円城先輩から背中に水平チョップをくらっていた。


「イテテテ・・・・・・まったく輔は手加減知らないんだから」


 苦悶の表情で背中をさすりながら祭主先輩は言った。



 アタシって女神らしいじゃん



 苦悶からドヤ顔へと変わる先輩の表情を見ながら思った。



 ・・・・・・・・・・いやそれ自分で言ってなかったか?











 

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