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78 拒絶とかみ合う身勝手な都合

「どうやら律樹に騙されたようだね」


「その認識で合ってるわ。ここには高遠君はおろかヘイ太や比呂斗も来ない。ついでに言うとここは、この辺りに住む人が皆恐れ敬遠する曰く付きの公園だってこと、一也も知ってるでしょ?」


「そんな所になんで集まるんだって思ってたけど、モンちゃんが現れてすぐに理解したよ。売られたってね」


「このことについては謝らないわよ。高校になってさんざん私から逃げ回ったんだからお互い様だし」


「逃げ回ってかあ・・・・追いかけまわされなきゃその必要もなかったんだけどなあ」


「うるさい!」


 思わず昔の勢いで一也の膝目がけて蹴りを飛ばしてしまったけど軽く躱されてしまったわ。相変わらず無駄に反射神経が良いわね。


「あっぶねえ。そのすぐキレて蹴り入れるのホント勘弁してほしいよ」


 なに飄々としているのかしら? まあ事件以降しばらくの間見せていたあの死にそうな顔と比べれば全然ましなんだけど、なんかムカつく。


 って、こんなことするためにわざわざ高遠君を利用してここへ呼び出したのではないわ。


 一也が不遇な中学時代を送ることになってしまった原因は他でもない私なのだ。その全てを清算、とまではいかなくてもケジメはしっかり付けるべき。


 自分の罪を偽善という仮面を付けて覆い隠し、あの四人が事実を喋らない事を良いことに何事もなかったかのように振舞っていた中学時代。そうしているうちにいつの間にか私の罪の意識が薄れていき、気付くと罪悪感から始まった偽物の友情と恋慕は次第に本物に変様していった。


 ズラではないけれども、私も都合のいいように記憶を変えてしまったみたいね。


 でも高校に入ってすぐに現実を突きつけられた。いいえ、あるべき姿を思い出させられた、という方が正しい認識かも


 何故だか分からないけど急に一也が余所余所しいを一気に飛び越え拒絶してきた。


 理由は分からない。だけど思い当たることがないでもない。だってそもそもの原因は全て私なのだから・・・・・・



 高遠君とズラズラ煩いガラス渡りとか言う妖怪が図らなくても、いつかはこうやって打ち明けるつもりでいた。その覚悟と機会が少々早まっただけのこと。本当は一也と付き合って私に完全に惚れさせてからカミングアウトする自分本位で稚拙で打算的な計画だったけど、返ってこれで良かったのかもしれない。


 もし付き合ってから打ち明けたとして、一也が許してくれれば全てが丸く収まる。だけどそうじゃなかった場合、間違いなく私は天国から一気に地獄へと落とされることになり、それは同時に一也も同じかそれ以上に心に深い傷を負い、もしかしたら中学時代よりつらい生活を余儀なくされたかもしれないわ。


 そう考えるとやっぱりこれで良かったのだと思い直す。罪人は私。一也はただ巻き込まれただけの被害者。罰を受けるとしたら私一人であるべきだ。



「ねえ、もし私が中二の夏休み前に起きたアレの犯人を知っているって言ったらどうする?」


 ダメだな私。覚悟していたつもりなのに、肝心なところで弱腰になってしまい、自分らしくない言い回しをしてしまったわ。


「それはどういう・・・・・」


 無理もないわ。今更『私犯人を知ってます』とか突然言われたら私だって困惑する。


「言葉の通りよ。あの事件の本当の犯人、それと何でそれが起きたかのも全部知ってる」


 そうよ、その勢いで全部話しちゃいなさい私。


「あの時教室にいてガラスを・・」

「待った!」


 どうして? あともう少しだったのに何で止めるの? それになんか怒ってる? ああでもそれは仕方のない事なのかもしれない。一也にとっては思い出したくもない過去。例え真相が分かったとしても今更どうしようもないと思っているのかも。だとしたら私が今やろうとしていることは、一也の不快を産むだけの行為に他ならないわ。


「・・・・・・どうして今更」


 やっぱりか。一也が望まないのならこのまま・・・・


「自分が犯人だって自白しようとするんだよ!」


「えっ? それって・・・」


「知ってたんだよ、最初から何もかも全部。あの滅茶苦茶になった教室を見た瞬間モンちゃんがやったんだってすぐに理解したさ」


 待ってほしいのはこっちの方だわ。それってつまり事件を起こす前から私の力のことを知っていたってこと?


「その顔は理解したけど理解できないって感じだな。分からないのは何で俺が事件が起きる前からモンちゃんの超能力のことを知っていたかってことか?」


「・・・ええ。私はあの力を好んで人前で使ったことはないし、見られてしまったのはあの時と小学校の時の一回だけなはず。でもその時見た人物が誰かに喋ったとは考えられないわ」


 小学校の時にバレたのは当時一緒に住んでいた楓紀だけ。彼は見た目と違い口は堅い。その証拠に今まで私の力について噂が広まったという話は聞いたことがない。だとしたら考えられる可能性は一つ。私が知らないだけで実はどこかで一也は目撃してたということだ。


 だけどそんな心当たりは全くない。


「もっと前は?」


「もっと前?」


「言い方を変えるならモンちゃんのあの力って小学校に上がるより前から使えたんじゃないのか」


「・・・どうしてそれを?」


 一也の言う通り初めて使ったのは・・・・いえ、あの力は使うより暴走や暴発と言った方が正しいかも。今まで自発的に使えたのはたった一度きりだし、それ以外は意図せぬ形で現れていた。それは初めてのあの時も例外ではない。


「少なくても五歳の時にはもう使えてた。違うか?」


 ドンピシャだわ。私の力が覚醒したのは五歳の時。そしてその場所は・・・・


「間違ってないわ。全然覚えてないのだけれど、一也はあの保育園に通ってたってこと?」


「まあね。でもモンちゃんはやっぱり俺がいたこと覚えてなかったかあ。まああの後すぐモンちゃんは居なくなっちゃったし、仕方がないと言えば仕方ないか」


 そうだった。あの後私の力云々ではなく家の事情で引っ越しを余儀なくされあの園を去った。しかも在籍してたのは二週間くらいだった気がするので誰がいたかなんて殆ど覚えていない。その時は事情を知らされていなかったけど、理由は父親絡みだったことを後になって母から聞いた。でも確かあの時だって誰にも見られてはいなかったはずなのだけど・・・・・・


「それであの時一也は見てたの? みんなで植えた鉢植えが飛ばされていくところを」


「遊戯室の窓のすぐ近くだったからね。なんであんな雨の中モンちゃんが一人で外にいたのか知らないけど、かくれんぼをしてる時カーテンの中に隠れながら外を見たら偶然見ちゃったんだ。誰も触れてないのに鉢が一斉に飛んでいく光景に幼かった俺でもそれが異常なことくらいは理解できたよ」


「最初から最後まで?」


「思い出せる範囲ではそうだったと思う。たぶん衝撃的な光景を目の当たりにして釘付けだったんじゃないかな」


 見られていなかったていうのは私の勝手な思い込みだったようね。初めてのことで驚きのあまりすぐにあの場所から逃げ出したし、確かに誰にも見られていないというのは虫のいい話だわ。あの時は激しい雨の音で中にいた大人たちも帰りになるまで気付かなかったから私が疑われることもなかった。そのことが余計思い込みに拍車をかけたのかも。


 でもまさかあの時の目撃者が一也だったなんて、運命の悪戯にしては笑えない話だわ。


「そうだったの・・・・でも一也は誰にもそのことを話さなかった。そうでしょ?」


「実はあの時親には話しちゃったんだよね。ほら子供だったし喋ったことでモンちゃんがどうなるかなんてそこまで考えられることなんて出来ないだろ? 実際嘘吐くんじゃないってこっぴどく怒られたけどね」


「ねえ嘘を吐くなって言われたのはどういうこと? まさかあの時も・・・」


「あの時は大丈夫。疑われたのは俺だけじゃなかったし、結局確たる証拠も出てこなかったから最終的には野良犬か何かの仕業だろうってことになったはず」


 ホッ。二度も一也に冤罪を掛けたとなれば私は死んで詫びるしかなくなるところだったわ。


「とにかく親以外には話してないし、その親もとっくに忘れてるはずさ」


「そのまま中二のあの時まで知らない振りを?」


「というより半分忘れてたって言う方が正しいかな。正直幼かった時のことだしあの時のことがなければ今頃は完全に忘れてたかも。でもあの光景を見て何故だかモンちゃんの仕業だってすぐ分かったんだよなあ。そう考えると不思議だよな、共通点は物が散乱したことだけなのに、どうして直感したんだろ?」


 そんなこと私に聞かれても答えられるはずもないわ。でも私でも気づけない他の何かを一也は無意識に察知した可能性はある。あくまで憶測の域は出ないけど。


「じゃあ直感だけで私が犯人だと最初から気付いてたのね。私が言うことではないことは分かってて聞くけど、何で私が真犯人だと知りながら拒絶しなかったの?」


「まず俺の言い方が悪かったから一つ訂正するけどさ、犯人がモンちゃんだって確信したのは実は事件の少しあとなんだ」


「でもさっきは最初からって・・・」


「疑ってたのはホントだよ。それにそれ以外の可能性を考えたことはないしね。だけど確信したのはモンちゃんが俺に近づいてきた時。こう言えば分かるだろ?」


「・・・・罪悪感から孤立していた一也に私から近付いた。そのことが疑惑だったものを確信へと変えた、そう言いたいのね」


 罪悪感から近付いた。それは紛れもない事実で否定する材料は一つもないわ。


「それと何で拒絶しなかったかって言う質問だけどさ、本当に孤独な時って例え相手がどんな奴であろうと、相手にしてくれる、ただそれだけで嬉しくなってしまうもんなんだ。まあヘイ太や比呂がいてくれたおかげで完全な孤独にはならなかったけど、辛かったことには変わりないからね」


「・・・・・・本当にゴメンなさい」


 自分も似たような経験したくせに私ったら何でそんな簡単なこと気付けなかったのよ。孤立している時に話し掛けてくる相手がいる。例え相手の下心が見え透いたとしても、それを許容してしまうのは心が弱り切っているからに決まっている。


 当時の私もそれを本当は理解していたはずなのに、贖罪という免罪符に取り憑かれ、結局は自分の為に行動していたに過ぎなかった。


 そこに一也に対する思いやりは一切なく、いつの間にか同情に変換されてしまていたのかもしれない。一応今でも罪悪感はあるはずだけど、もしかしたらそれは思い込みで、自分の都合のいいように書き換えられた偽物の感情なのかもしれないわ。


「当時は恨まなかったか? と聞かれればNOと答えるしかないけど、でも今は全く恨んじゃいないから」


「本当に?」


「最初は恨むどころか復習しようかとも考えたよ。だけど辛かったのは俺だけじゃなくてモンちゃんも一緒なんだろうなあって思ったらそのうちモヤモヤは消えてったけな」


「恨むのは当然の事よ。それだけのことを私は一也に対してやってしまったんだし、なんなら今からでも制裁を受けたって構わないと思ってる。だけどその前に一つ教えて。どうしてあの時私を問い詰めなかったの?」


 私が犯人だと訴えても事件当時でさえ一也の話は誰も取り合わなかったはず。反対に『戯言を言う頭のおかしい奴』と言うレッテルが追加されるだけ。だけど少なくても私には何かしらのアプローチをしてもおかしくはないはずだったのに、どうして彼はそれをしなかったのだろう?


「誰も俺の話をまともに聞いてくれなかった。そんな中モンちゃんの話をしても無駄だろ?」


「それは分かるわ。でもそれだけ? 私が近付き始めた時に問い詰めることは出来たはずよ。でも一也は一切そのことは何も言わなかった。それが不思議でたまらないのよ」


「・・・・・・男ってバカなんだよ」


「はあ?」


 何それ、自分がバカだから何も言わなかった? そんなことあるわけないでしょ。何かを隠したいのかもしれないけど、だったらもう少しまともな嘘言いなさいよ。


「だから男って言うのは可愛くて綺麗な人が向こうから近付いてきただけでバカになっちゃう生き物なんだよ」


「えっ?」


「俺って事件関係なく好きな子に振られただろ? そりゃあショックだったしあんなことがなくてもしばらく落ち込んでたのは間違いない。でもそんなとき学校で一、二を争う美人が近付いてきたら男なら間違いなくその幸運を自ら手放そうとはしないもんなんだよ」


「ちょっと待ってそんな理由で私を知らない振りしてまで受け入れたって言うの? だとしたらあんたホントにバカじゃない」


「だから自分でもバカだって言ってるだろ。それにさっきも言ったけどモンちゃんだって辛いのは分かってたし、冤罪を吹っ掛けられたけど、それだって結果的にそうなっただけでわざとじゃないことも分かってた。それに・・・」


「それに何よ? 他にもまだあるのかしら?」


「モンちゃんが罪悪感から俺に近付いてきたことはすぐに分かった。だから俺はそれを利用したんだ。上手くいけばこれを機にもっと仲良くできると思ってね。もちろんあの時好きだったあの子のことをすぐには忘れられなかったし、そう割り切れるものでもなかったけど、心の奥底では既にモンちゃんというワンチャンを狙ってたんだ。どうだ? バカどころか相手の想いを悪用する最低な男だろ?」


「じゃあ何で高校に入ってから私のこと急に避けるようになったのよ?」


 もしかして私に気が無いと勝手に判断して他の女を好きになったとか? だとしたらそんこと・・・・・・そんなこと・・・・・・絶対に許さないわ!


「いつまでもモンちゃんを騙していることが辛かったんだよ! それに未だに俺に対して罪悪感感じてるだろ? 本当はもっと偏差値の高い高校行けたはずなのに行かなかったことが何よりの証拠だ!」


 このバカ一也が! どこを選ぼうとそんなの私の勝手じゃない。それにコイツは何で逗麻高に私が進学したのか全く理解してないわ。


 それにそれにそれにそれにそれに・・・・・・・・・


 アナタは何でもかんでも中途半端すぎるのよ! 


 こうなるんだったら最初から拒絶しなさいよ! 


 罪悪感なんて簡単に消えるもんじゃないくらい理解しなさいよ! 


 私が落ち込んでいた時に優しい言葉なんてかけないでよ!


 私が嫌がらせを受けていた時自分が悪役になってシレっと解決しないでよ!


 バレンタインのお返し、ネットを真に受けてホワイトデーに三倍返ししてくるんじゃないわよ!


 服のセンス無さすぎ!


 箸の持ち方もおかしい!


 たまに体臭きつい!


 私は犬より猫派なの!


 途中から自分が何を考えているのか分からなくなってきたわ。こうなると必ず私は・・・・・・





 ああ感情を突き抜けたこの衝動はもう私には制御できない


 ゴメン一也。また迷惑かけちゃうかも


 バカバカって言ってしまったけど本当の大バカはどうやら私の方だったみたいね


 それとね・・・・・・・・ちょっとムカついてたからいい気味かも、ふふふ・・・


 でもやっぱりゴメンなさいかしらね


 だからこの衝動を全て吐き出したらちゃんと言うわ、


 



 好きよ 一也




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