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73 決断からの・・・・

 押切たちの姿が消え俺とガラス渡りが文字さんに対し姿を現す。自由自在にガラス渡りはこの空間内を操れるようで、舞台もいつに間にか高校の教室に戻っていた。


「アナタがズラさん?」


「そうズラ。望み通り出てきてやったズラ」


「それでそこにいる高遠君は本物なのかしら?」


 まあ今までの流れからそう疑うのは無理がない。俺としても今話している文字さん本物なのか正直懐疑的に思っている。


「今まで見たものは全部本物であり偽物でもあるズラ。ただし魔女と律樹、そしてそのほかの人間では取り出した記憶の時期が違うズラ」


 ガラス渡りの事前説明によると彼の任意で記憶の時期を選んで取り出せるようだ。取り出すと表現しているが、実際はその人の記憶をコピーし、それを元に作成する。因みに十才の記憶をコピーした場合、それ以降の記憶の情報はコピーされない。なので先ほど出てきた押切たちは中二当時の記憶を元にしているので現の記憶は持っていないことになる。


「良くわからないけどそこにいるあなたは今の高遠君ってことでいいかしら?」


「ああそういうことだ。それと実感がないかもだけど実は俺達はあくまでコピーでしかないんだ。だからここで経験したことはただの記憶として本体に刻まれるだけで、現実の俺達は何もしてないことになる」


「それはちょっと違うズラね。本体に記憶を入れることは出来るけど自然に戻ることはないズラ。オラが操って初めて本体に記憶が刻まれるズラ」


「そう言えばそうだったな。じゃないとこの後の計画が変わってくるし」


「計画?」


「こっちの話だから気にしないでくれ。もうこの話は一旦終わりにしてどうするか決めてくれ」


「ズラさんが言ってた選べっていうやつ? 一体何を選べと言うの?」


「文字さんがどうしたいかだよ。事件のことをこのまま隠しておくか、それともみんなに本当のことを話すか。もしくは一也だけに本当のこと伝えるとかね。ああそうそう、さっきは何も起こらず現実とは違う結果になってたけど、実はあの時実際に何があったかはガラス渡りにお願いして俺は先に見せてもらってるから」


 「人殺しの子供のくせに」と小山さんが文字さんを罵った後、実際はの直後一瞬で教室がメチャメチャになった光景を見た。アレは明らかに文字さんを中心に発せられたものでサイコキネシスと呼んだらいいのか分からないが、とにかくアレで軽傷者一人で済んだこと自体が奇跡だと思える。これを見せてもらったのは俺と文字さんが最初にこの空間で会話をした直後、つまり文字さんにあの時の光景を見せる前のことだ。


「それであの時先に謝っとくと言ったのね」


「謝った理由はそれだけじゃないけど、人のプライバシーを勝手に覗いてしまったことは重ね重ね謝るよ」


「それはもういいわ。つまり高遠君は事件のことだけじゃなく私のあのことも含めて全てを知った、そういうことで良いかしら?」


「その認識でいいよ。でも俺は誰かにこのことを喋るつもりはないし、文字さんが何を選択しても口出ししないことは約束する。ついでに言っておくけど文字さんと押切が一時事的とはいえ義理の兄妹だったことも聞いた。これはこの空間を通じてじゃなくて押切本人から聞いた話だから、文句があるならアイツに行ってくれ」


「彼が・・・・・」


「正直そっちの方が驚いたけどな。すぐに結論は出せないだろうからいくらでも待つよ。便利なことにこの空間内の時間の流れは現実と比べかなりゆっくりらしい。そうだろ、ガラス渡り」


「そうだけどあまりこの空間に長居していると現実に戻った時に弊害が出るかもしれないズラ。そこだけ気を付けるズラよ」


「実際あとどれくらいなら大丈夫なんだ?」


「そうズラな・・・・・長くてこの世界の一日ってところズラね。それ以上いると現実世界で幻覚を見るかもズラ。なんなら結論は戻ってからでも良いと思うズラ」


「そうなると場合によってはまたここに来なきゃいけなくなるよな。妖力とかよく分らんけどそのあたりのことは問題ないか?」


「一日太陽の光を浴びさえすればオラは回復するから平気ズラ」


 まさかの太陽光発電ときたか。もしくは光合成?


「その必要はないわ。結論ならもうとっくに出てるもの」


 早えな。もしかして今回のこととは関係なしに以前から考えてたのかもしれないな。


「・・・・・聞いてみても?」


「ええ。全部話すことに決めたわ」


「全部って全部?」


「全部と言ったら全部よ。一也だけでなく他の全員にありのままを伝えるつもりよ」


「そうか。ならまた選んでくれ」


「はあ? もう答えは出したはずだしこれ以上何を選べって言うの? それにこれ以上は口出ししないと言ったのは何処のどなたかしら」


「まあまあ落ち着けって。今度選ぶのは伝える方法だよ」


「伝える方法って、そんなの直接話すかRhineで伝えるくらいしかないじゃない。それとも他に何か?」


「あるんだなあこれが。ほらさっきコイツが言ってただろ、任意の記憶を取り出し、そしてこの世界で起こったことの記憶を本体に刻めるって」


「ええ言ってたわね。でもそれがどうかしたの?」


「少し複雑な話になるからよく聞いてくれ。文字さんが最初に見たのは文字さんの記憶を文字さん自身が映画を鑑賞する感じで見てただけなんだ」


「それは何となく感じてた。そこに今の私の意志の介入は出来なかったし、そもそも見ているって意識もなかったわ。まるで夢を見ている感覚って言ったらいいのかしらね」


「捉え方はそれで合ってると思う。そんでもって二回目は少し違う。厳密にいうと文字さんが力を暴発させる直前までは事実だけど、そこから先は役者や舞台はそのままだけど脚本だけが変わったっていうのかな。文字さん以外は事件当日の記憶を元に作られた役者だから「暴発しなかった未来」を彼らは演じていることになるんだ」


「その理屈は理解できたけどその未来を私に見せてどうしたかったの? ここで起きたことがそっくりそのまま現実世界で過去改変されるのなら話は分かるけど、そうではないのでしょ? やる意味が分からないし意義も感じられないわ」


「文字さんが誰にも話さない道を選んだのなら確かに意味はなかったかも。だけどカミングアウトすることを文字さんは選んだ。だとすれば決してこれは意味のないことではないんだ。まあ全部が丸く収まるわけでもないからあまり期待されても困るけど、少なくても一也の置かれた状況はそれなりに改善されると思うぜ」


「私が事実を伝えることで一也の立場が良い方向に変わっていくことは異論ないわ。でも私があの力を使わなかった未来との繋がりが全く見えてこない」


「そりゃまだ何もしてないから当然だな」


「何もしてないって・・・・私を揶揄ってるの? いい加減にしないと本気で怒るわよ」


 揶揄っているつもりは一切ないんだけどなあ。 


「そうだ、この世界であなたをそこの窓から突き落としたとしても現実のアナタは無傷なんでしょ? もしかしたら地面にたたき突き付けられた時に激しい痛みを感じるかもしれないけど、その記憶ごと消してもらえば大丈夫なはずよねえ」


 窓の方を見ながら恐ろしいこと言わんでくれ。それとガラス渡り、「痛いけどなかったことに出来るズラ」とか言ってんじゃねえぞ。彼女なら本気でやりかねんから黙ってろ。


「謝るから絶対に止めてくれな」


「冗談に決まってるじゃない。いくら大丈夫だって言われても流石に三階から突き落とすマネなんてしないから。ハァ、だからそんなに怯えなくてもいいって言ってるじゃない。男のくせに情けない。そんなのですみれを守れるの?」


「いま河島さんは関係ないと思うんだけど・・・・・それより説明するより体験してもらった方が早いな。ガラス渡り、予定通りさっきの続きで頼む」


「任せるズラ。オラの好きなようにやっていいズラね?」


「ちゃんと加減はしろよ。あと現実ではありえないことはなしな。じゃないとかなりカオスになりそうだし」


「二人は何を言ってる・・・・の・・・また・・・・意識が・・・・・」


 困惑していた文字さんの姿がスッと一瞬で消えていく。


「何度見ても慣れないな。あんな風に消えられるとまるでその人が最初から存在しなかった感じがするし、ある意味ホラーだよ」


「何ってるズラ。ここにいる律樹も魔女も最初からここには存在してなかったのだから当たり前ズラ」


 そんなもんかねえ・・・・・って俺も消えてくじゃん。





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