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7 彼女が本気を出したら

 コンビニに到着すると中ではなく外の駐車場の端っこの方で文字さんは待っていた。今日は二、三年生も登校していたためここまで来る間に多くの生徒の姿を見た。店の中にもうちの制服を着た生徒が居る。


「よう、待たせたな」


「お願いしたのは私の方だし別にいいわ。はいコレ」


 差し出してきたのはペットボトルの炭酸飲料だ。


「おーサンキュ、じゃあ遠慮なくもらっておく」


 買ったばかりなのかまだ冷たさがかなり残っている。文字さんは紙パックの野菜ジュースを飲んでいた。


「ここなら大声で話さない限り誰にも聞かれなさそうだな」


「ごめんね、別にどこかでお昼を食べながらでも私的には良かったのだけど、教室内で流石に『はい』とは言えなくて」


 恥じらっている感じではなく、単純に申し訳なさそうにしているように見えた。これに関しては俺が完全い悪い。あんなところで平然と女子を飯に誘えば誰だって邪推したくなるだろう。まあコンビニで待ち合わせしていることは聞かれていたのだから大して変わらない気もしなくもないが・・・・


「今からどこか入る?」


「ううん、今日はやめとく。それより初めましてじゃないよね私たち。覚えてるかな?」


「同じ小学校だったしな。でも同じクラスにはなったことないし、あんま話した記憶もないと思うんだけど」


「私も同じ。でもちゃんと高遠君のことは覚えてはいたよ。まさかこんなに大きくなって戻ってくるとは思ってなかったけどね」


「ははは、それは昨日比呂斗にも言われたばっかだ」


「・・・あーやっぱり昨日ヒロやヘイ太達と会ったんだね。その時何か聞いた?」


 何か、というのはやはり一哉の事だろうか? だとしたらどうして彼女はそのことを気にしているのだろうか? 


 それにしてもヒロにヘイ太か。あいつらも文字さんのことモンちゃんって呼んでたし、割と仲が良かったりしたのかな? それがきっかけで一哉は文字さんに恋をしたという流れが俺の予想だ。


「一哉のこと?」


「うん」


「そうか・・・・。それなら大まかな話は聞いたかな。でもどうしてそれを俺に聞くの? もしかしてあいつはヤバい奴だからこれ以上関わるなって忠告したいとか?」


「そんなことしないわよ!」


 同時に彼女が手に持っていた紙パックがグシャッと握りつぶされストローから中身が俺に向かって放射された。だがほぼ飲み切っていたのか大した量ではなかった。「大してかかってないから」と言おうとしたらそれどころではなさそうだった。彼女の表情は一気に青ざめ何故か辺りをキョロキョロしている。


「いやこれも冗談だから大声出すなって。まあ誰も俺達のこと気にしてないようだしそんなに慌てなくても平気だろ」


 諭すように言うと落ち着きを取り戻したたのか、今度は俯いてしまう。

 

 「ゴメン・・・」


「いや俺も言葉を選ぶべきだった、わりー。それでどうしてそのことを?」


 直ぐに言葉は返ってこない。俯いたまま何かを思案しているようにも見えたので少しの間様子を見守っていると、顔を上げ話し始めた。


「私もヒロ達と一緒で一哉があの事件の犯人だとは思ってないの。でも何も知らない高遠君が聞いたら鵜呑みに信じ込んでしまうと心配になって・・・・」


 そういうことか。でもちょっと気になるな。


「その根拠って聞いてもいい?」


 考えられる可能性は二つ。単純に一哉の人柄からそう思っているのか、それとも事件の真犯人を知っているかのどちらかだ。前者なら全く問題ないが、校舎なら大いに問題がある。だって真相を知っていながら、一哉が冤罪を掛けられてもなお、今日の今日まで黙っていたことになるのだから。


「・・・言えない」


「え?」


「ゴメン、言えないの」


 まさかの回答拒否。


「あ、ああ了解した。まあそうだよな、ほぼ他人みたいな俺に言えないことって普通にあるだろうし」


「そういうわけでは・・・」


「いいのいいの、別に深堀したいわけじゃないから。それと文字さんの懸念は心配ないから安心して」


「じゃあ高遠君は一哉を信じたの?」


 んーどう答えたもんかな? 別に信じたわけでも疑っているわけでもないんだよなあ。


「何ていうか、ぶっちゃけ他人事? みたいな感じかな。一哉のことは軽蔑したりしないけど、かと言ってアイツを信じられるほど付き合いが深いわけじゃない」


「そうなの? でも二人って教室では仲良いし友達だと思ってた」


「間違いが二つ。まず仲が良いからと言って相手を信じられるかどうかは別の話。二つ目、そもそも俺と一哉は友達ではなくただの知り合いだ」


「は?」


 何言ってんのコイツ? みたいな顔をされても困るんですけど。あと元から鋭い眼光が更に磨きがかかってとっても怖いです。


「説明するのメンドイから省くけど、とにかく俺と一哉は友達じゃないから。それは向こうも同じだし、信じられないなら直接本人に確認してみればいい」


「何それ意味わかんない・・・・・私はてっきり二人が仲良がいいのかと思ってたのに」


「あー仲は良い方じゃないかな? まだ再会して二日しか経ってないけど」


「・・・・ますます意味が分からないんだけど、省かないでちゃんとした説明してよ」


 昨日の恥ずかしいプチ青春を赤裸々に話せるほど俺の心臓は強くないんだよ。なので・・・・


「言えない」


「え?」


「ゴメン、言えないの?」


「は? あんた私の真似してバカにしてるの?」


 決して馬鹿にはしてない。ちょっと意趣返ししただけなんだからそんなに怒らなくてもいいじゃん。


「してないしてない。お願いだからそんなに睨まないで」


「・・・・ハァ。まあいいわ、高遠君と一哉がそれで上手くやれるなら私が口を挟むことでもないし。ねえとりあえずIDだけ交換しておこうか」


「あー結構です」


「あ?」


「ウソウソ、交換させていただきます」


 ヤベー、今のが一番怖かった気がする。


「あのさ、冗談でも私に対して怒らせるような真似はして欲しくないの。私って結構短慮なところもあるし、友達も少ないからそういうノリって慣れてなくて苦手なのよ。それに私を本気で怒らせたら・・・・・、ううん何でもない。早くスマホ出して」


 怒らせたらどうなるんだよ? そこでやめたら余計こえーじゃねえか。ていうか教室でも俺の冗談に対して結構ノリノリだったような気がするんだが・・・・・・女の子はよくわからん。


「お、おう」


 いそいそとアプリを起動させ交換を済ませる。気のせいかもしれないが結構な数の生徒が近くを通り過ぎ、その度にジロジロ見られていたような気がする。俺自身少し身長が高いから目立つというのもあると思うが、文字さんの容姿も人目を惹くものがあるのでそのせいかもしれない。


「一つ聞いてもいいか?」


「何?」


「まだ二日目だけど一哉と文字さんが話しているの見たことないんだよね。もしかしてあまり仲が良くないの?」


 今までの話の流れからしてそれは考えにくいと感じていたが、実際二人の様子を見た限り疑問を持つのは仕方がないと思う。


「そうね、今の私たちならそう見えるかも」


「じゃあ実際は違うと?」


「・・・・これは私が勝手に思っているだけなのかもしれないけど、私は友人だとちゃんと思ってる。一哉だけでなくヒロやヘイ太もね。あと・・・・・あ、いや何でもない。とにかく中学時代の私たちは普通に話していたし、と言ってもみんなが居る前では大ぴらなことはしなかったけど、それ以外の時はちょくちょく遊びにも行ってたわ。三年の後半は私以外受験勉強で大変そうだったから回数は減ったけどね」


「はは、最後は上から目線になってるし。もしかしなくても自分は頭が良いとでも思ってる?」


「事実なんだし仕方ないじゃない。それと特に一哉は人が変わるほど勉強してた。何もそこまでやらなくても一哉の成績なら余裕で合格できるはずだったんだけどね」


「あいつの場合内申点のこと考えたらしょうがなかったんじゃない?」


 ガラスと少年事件があったからな。


「そうか、あなたは最近の中学の時の一哉を知らないんだったわね。彼は成績だけだったらうちの高校より二つくらい上の学校に行ける実力があったのよ。だから内申が悪くても本番の結果さえそれなりに良ければ余裕だったはず。しかもここ数年定員割れもしていたから尚更ね。まあ私はそれ以上の高校狙えたけど遠くなると通うの面倒だったし。それに私の性格じゃ新しい友人が出来るとは思えなかったし、遠くに行く意味なくない?」


「なくない? と言われてもな。大学進学のためにレベルの高いところに通うとか他に理由あるだろ。それに仲の良い友達が行くから、じゃなくて、どうせ友達が出来ないからって、ある意味高校を選ぶ時によくある友達基準が逆になっているのがなんかウケる」


「勝手にウケないで。まあそんな感じだから私的には今まで通りにしたいと思ってる。でも・・・」


「一哉は文字さんを巻き込まないようにするため、学校では関わろうとしてこない。文字さんもそれを分かってるから動けないってことだろ?」


「だけど高遠君、何故かあなただけには話し掛けた。それが腑に落ちなくて・・・」


「つまり俺に嫉妬したわけだ。最初はあいつの心配する振りをしていただけで、結局は俺が羨ましいからシメるために呼び出したってことだな・・・・・てウソウソ冗談です。ただ気になったから確認したかっただけだろ? だからそんな目で見るなって」


「ハァ・・・で、理由は知ってるの?」


「さあ? それは本人に聞かないと分からないな」


 実際昨日の時点でその理由を聞いてはいたが、それが全てだと俺は思っていない。確かに俺という

立場の人間に対して声を掛け易かったというのは嘘ではないだろう。だがそれ以外にもっと大きな理由があるのだと俺は踏んでいる。中途半端な答えを伝えるのは後々のことを考えるとあまりよろしくないと思い、だったら最初から知らない振りをするのが賢明だと判断した。


「そう・・・・。悔しいけど、ううん、屈辱的なくらい悔しいけど一哉のことはしばらくあなたに任せるわ」


「別に言い直す必要なかったよね。普通に悔しいだけでいいじゃん。あと学校ではNGだけどそれ以外は構わないんじゃないの? とりあえずRhineしてみるとか電話するとかさ」


「既に試みたけど反応なしよ、春休みに入ってからずっとね」


「あー、さいですか・・・・何ていうか頑張れ」


「あなたに言われなくても頑張るわよ。ハァ、あなたと話していると疲れるわ」


「ヒデー言い様だな。でもそろそろ帰るか、また明日な」


「そうね、そうしましょうか。じゃあさようなら、顔見知りさん」


「おうじゃあな、人見知りさん」



 めでたく知り合いが新たに追加されました。




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