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60 未來視?

「ねえこっちからは校舎の中に入れないと思うんだけど何処に向かってるの?」


「少しだけ先に確認しておきたい場所があるんだ。見たらすぐ校舎に入るからちょっとだけ付き合ってくれ」


 着替えを終えた河島さんと体育館を出た俺は本来の目的地ではなく別の場所に足を運んでいた。どの道夏鈴さんと合流しないことには妖や幽霊の存在を確認できないので、彼女が来る前に以前から気になっていたことを先に確認することにした。


 場所はトウラから聞いていたし体育館からさほど離れていなかったので一分もかからず到着する。


「池かあ。あっほら見て、綺麗なコイが泳いでるよ」


「みたいだな。水も澄んでいるしちゃんと管理されているっぽいな」


 俺達がやってきたのは校舎の裏手にある池だった。ここには托卵ガエルと言う妖がいるらしいのだが目的はソイツではない。


「どうやら勘が当たったようだな・・・・」


「もしかしてここに何かあるの?」


 俺の独り言に近い言葉を河島さんは拾い、その場でしゃがみこみ池の中をジッと観察し始める。俺とは逆で文字さんから借りたジャージは当然ながら河島さんには大きすぎたため、しゃがむその姿はダルマのような丸っとしたフォルムを形成させていた。


「あるにはあるんだがそうじゃなくてさ、この場所自体が当たりだったって感じかな」


「うーん、ちょっと理解できないかも」


 そりゃそうだ。逆に理解出来たら絵スーパー的な能力を疑ってしまう。


「これは俺の力なのかまだ分からないんだけど、数年前から同じ夢を見ることがあるんだ。その多くの内容を忘れたことは覚えているって言う変な感じなんだけどさ、それでも写真で撮ったような景色を目が覚めてもいくつか覚えてるんだ」


「それがこの池だったってこと?」


「正解。因みに言うと逗麻高もその一つかな」


「いくつかってことは他にもあるんだよね。そこは見つかったの?」


「今のところその二カ所だけかな。思い当たる場所はなくはないんだけどまだ確認してない」


「そっかあ・・・・ねえ夢に出てきたって言うけど高校とここの池には以前来たことあるのかな? ほら夢って大抵一度見た場所が出てくること多いでしょ。もしかしたらここも訪れたことあるのかなって」


「どうだろ? 高校は外からの風景だったし引っ越す前に何度かその辺りに行ったことはあると思うけど、流石にここはないと思うぞ。この学校の敷地に入ったのは今日が初めてだし、敷地外からは木が邪魔でここは見えないから記憶の片隅にすら残ってないはず」


「と言うことは高遠君は未來視の力があるのかもしれないね」


「未來視? そんな能力があったら今頃俺は大金持ちだな」


 確かに一理あるかもだけど果たしてそうなのだろうか?


「でも同じ夢を見るってことは何か意味があると思うの。それが何なのかは分からないけど、もしかしたら高遠君の未来に関わる何か重要なことが示されてるのかもよ」


「俺もその線は考えたさ。だからこそこっちに進学したって言うのもある。だけど今のところ何もわかっちゃいないんだけどね」


 現状何か危険が迫っているとかそんな感じではなさそうだし時間がある時にゆっくり調べようとは思っている。


(妙な気配がすると思ったらお前さんはあのカエルもどきの知り合いのようさね)


 すると何処からか聞き覚えのない声が聞こえてきた。


「誰だ?」


 辺りを見回しても河島さん以外他の姿は見えない。それどころか、


「どうしたの高遠君?」


「今女の人の声が聞こえなかったか?」


「ううん、何も聞こえなかったけど・・・」


 どうやら聞こえたのは俺だけの様で河島さんには今の声が聞こえなかったらしい。


「もしかして高遠君は見える人なの?」


 見える人・・・・・


 言うならば河島さんはじいちゃんズや夏鈴さんのようにこっちの世界側の人間だ。その彼女が指す『見える人』とはつまりはそういうことなのだろう。


「いや俺は見えないはず。ていうか今まで一度も見たことないし」


「でも私には聞こえない声が聞こえたんだよね? もしかしてここから離れた方がいいんじゃない?」


 スッと立ち上がり不安そうに周囲を警戒し始める河島さん。その行動は至極正しいと思うし、俺も事前情報がなければ直ぐにこの場を立ち去っていただろう。


 しかし俺の考えが正しいのであれば・・・・・・


「もしかしてあなたはトウラが言っていた托卵ガエルなのか?」


(その呼び方は少し間違っているけど概ねその通りさね)


 やはりそうだったか。カエルもどきと聞いてトウラしかいないと思ったし。だとしたらこの存在は俺達を害することはないはず。もし何かされたら後でトウラには文句を言わねば。


「ど、どう? やっぱり何かいるの?」


「いるのは間違いないないんだが・・・」


 声だけでその姿は見えない。


「何故か声だけしか聞こえないんだよな」


(あら、こちらの姿が見えないのかい? 変さねえ、どうやらカエルもどきも居ないようだし・・・・あんたあのカエルもどきから何か受け取ってないさね? 微かにアイツの妖力を感じるさね)


 カエルもどきってトウラのことだよな? 


 アイツとは学校の敷地に入ってから別行動してる。文字さんがいたので入るまでは俺の鞄の中で大人しくしてもらっていたが、適当なところで開放してあった。今頃は校舎内をウロついて妖の居場所を探しているはずだ。


 それにしてもトウラから受けと言ったものと言えば・・・・・・


「これのことか?・・・・・うおっ!」


 持っていた鞄のなかからマジカルな巾着袋を取り出すと、いきなり目の前に大きなカエルが現れた。大人の人間でもペロッと丸呑みしてしまいそうなくらい大きいそれは水の上で鎮座している。


「どうやら妖力はその巾着から発せられているみたいさね。おそらくそれを持っている間はアッチの姿が見えるみたいさね」


「ど、どうやらそうみたいだな・・・みたいですね」


「ケッケッケ、アッチにそのような言葉遣いは不要さね。ところで隣にいるお嬢ちゃんが心配そうにしているがいいのさね?」


 横を見ると河島さんが不安そうに俺が着ているジャージの裾を掴んでいた。


「このトウラから貰った巾着を直接触ると声だけじゃなく姿も見えるみたいなんだが、河島さんも触れてみるか? かなり驚くと思うし無理強いはしないが・・・・」


「き、危険はないんだよね?」


「とりあえずな。トウラも言っていたが目の前にいる妖は人の害をなすものではないらしいぞ」


 実際見た目の威圧感はあるものの嫌な感じはしない。


「・・・・・なら試してみる」


 顔は強張っているがどうやら覚悟は決めたようだ。


「一つしかないから河島さんはこっちの端を持って。俺は反対側持つから」


 一つの巾着袋を二人で掴む。カエルの姿がまだ見えているので俺の方は問題なさそうだが、河島さんの方は・・・・・・


「どうだ?」


「・・・・・・・・」


「どうした、もしかして見えないのか?」


「う、ううん、ちゃんと見えたよ。見えたんだけどあまりにも大きすぎて言葉が出なかっただけ。た、食べられたりしないよね?」


「向こうがその気なら今頃はもう胃の中だと思うぜ」


「そう・・だよね」


「安心するさね。アッチは人間はおろか生きたものは食わんさね。ところで二人は何しにここへ来たんだい? もしかしてお嬢ちゃんのお腹の中には二人の子供が居ってアッチの加護をもらいに来たのさね?」


「お、お腹にはいません!」


「河島さん、いくらテンパったとはいえその答えはおかしくない?」


 その言い方だとお腹にはいないけど他のところには居るって聞こえるんですけど?


「ケッケッケ冗談さね。仮にもアッチは孵化を司る存在、身籠っているかそうではないかくらい一目見れば分かるさね」


「あんまシャレになってないからやめてくれな。それとここに来たの理由なんだが、本当はさっきの会話聞いてたんじゃ?」


「ケッケッ、その通りさね。だが本当にこの場所を確かめに来ただけかい?」


「まさかこうして話が出来るとは思ってなかったし、そもそも本当に存在しているのか眉唾ものだったからな。でもこうして会話ができるなら話は変わってくる。いくつか質問していいか?」


「何でも聞くがいいさね。アッチに答えられることならいくらでも答えるさね」


「なら早速。二年前の七月に校庭側の校舎の三階にある教室の窓ガラスが割られた事件は知ってるか?」


「二年前の夏ねえ・・・・その頃は確か卵を託されていたからここから動けなかったはずさね。だから知らないとしか言えないさね」

 

 ああそういうことか。このカエルの妖は卵を託すのではなく託される方だから托卵ガエルと言う呼び方は違うと否定したのか。確かによく考えれば分かることだったな。


「そうか」


 ならやっぱり他の妖に接触するしかなさそうだな。


「ところで聞く話によるとこの学校にはあなた以外にも妖が二体いるらしいんだが、そいつらのことは知ってるか?」


「それなら知ってるさね。鉈を持ち歩いている奴と透通る綺麗なものが好きな奴のことさね。ああ思い出した。二年前の夏と言えば珍しくそいつがここにやってきた時さね。何かもの凄い剣幕で怒っていたのを覚えてるさね」


「どっちの妖だ?」


「透通るものが好きなほうさね」


 俺がガラス渡りと名付けた方か。そう言えばトウラも人間に対して怒ってるポイとか言ってたし間違いなさそうだな。


「そいつに正式な名前はないのか? なんか呼びにくくて面倒だし」


「アッチもそうだが基本妖には親が居ないから名前を持っている方が稀さね。周りから好き勝手に呼ばれてそれが定着する者もいるけど、自分からは名乗らないさね」


「なら仮にそいつをガラス渡りとしようぜ。トウラの話だと主にガラスを渡って移動しているみたいだしな」


「ケッケッケーアイツにはもったいないいい名前さね」


「しっくりくるだろ。それでガラス渡りは何に怒ってたんだ?」


「いきなり人間に建物から追い出されたと言っていたさね。おそらくさっき言っていた割られたガラスの中にそいつは偶然入っていて、運悪くガラスとともに外へと放り出されたのではないかと思うさね」


 なるほど、それなら辻褄は合うしガラス渡りが人間に対して怒っている理由にも納得だ。


「えーと大きいカエルさん。そのガラス渡りさんは今は何処にいるんですか?」


 俺達の会話を聞いていて目の前にいるカエルは安全だと認識したのか、ここで河島さんが話に加わってくる。


「また建物の中で暮らしているさね。なんだかんだ言ってここを気に入っているみたいさね」


「人間に対して怒ってるんですよね。危害を加えたりしないんですか?」


「ケッケッケ、あやつは透明な物を行き来するだけの小物の妖さね。人間に対して何か出来るほどの力は持っていないから安心するさね」


 トウラも同じようなことを言ってたっけな。実害がないならそれでいい。大体ほとんどの生徒や教師は最初からその存在に気付かないわけだし居ないも同然だ。


「ならもう一体の鉈を持ち歩いている方は? 確か合わせ鉈とか呼んでいた気がする」


「あやつはまあまあの力を持っているが人間に対して危害を加える力はないさね。それにしても合わせ鉈とはあやつにはぴったりの名前さね。その名の通りあやつは割れた物を治す能力を持っていて時折気まぐれでこの学校の物を直しているみたいさね。ただし粉々になったり複雑なものは直せないようさね」


 逆に良い妖なんじゃないか? 気まぐれってところが如何にも妖っぽいし。


「この巾着袋を持っていればその妖さんともお話が出来るんですか?」


 おおグットクエスチョン。確かにそうだったら進んで使うつもりはないが便利は便利そうだ。


「それはおそらく無理さね。もどきと言えども一応体は本物のカエルの様だからアッチの姿が見えただけさね。その巾着はあのカエルもどきの体の一部から出来ているはずさね」


 夏鈴さんが言っていた魔調ではないけど、カエル特有の波長とかそういうのが関係してそうだな。


「えっそうだったの? トウラさんの体の一部って・・・・・一体どこの?」


「えーと胃袋」


「・・・・・・・・」


「だ、大丈夫。匂いもしないし汚くないから」


 カエルの胃袋。普通は馴染みないし一生触れることのないものだから驚くのも致し方ない。しかも内臓の一つだし気持ち悪いと思うのは当然だろう。


「ケッケッケー、どうやらその巾着は一つしか持っていないようだからお嬢ちゃんには特別にアッチの体の一部をプレゼントするさね」


「えっ・・・大丈夫です」


「プレゼントするさね」


「そんな大そうな物貰っても・・・」


「プレゼントするさね」


「ワタシには必要が・・・・」


「プレゼントするさね」


 壊れたロボットのようにエンドレスに同じセリフを言い続けるカエル。これはもう選択肢を一つしか与えていないのと同義だ。


「どうしよう高遠君」


「貰っておくしかないんじゃね?」


「そんな人事だからって適当な事を」


「でも受け取らないと反対にどうなるか分かんねえぞ」


「・・・・・・分かった。えーとカエルさん、ありがたく頂戴いたします」


「それでいいさね。ではお嬢ちゃんにはこれを、んぐー」


 半開きになった口からピンク色の長い舌がスッ伸び河島さんの目の前で止まる。よく見ると下の先端にリンゴくらいの大きさの白い物体のようなものが見えた。



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