51 36番目
「それにしても噂の中で目ぼしいのは三人だけかあ・・・・」
「他のは全く根拠が無かったり逆恨みっぽいものばかりだったもんな。SNSだとここいらが限界だと思う」
「だけど知らない情報も結構あったし無駄ではなかったさ。それでもう一つの方は?」
もう一つの本題。それは中学校の時に何かおかしなことが起こらなかったか? ということ。つまり今までは常識の範囲内で調べていたのだが、範囲外の視点からも調べてみることにしていた。今のところ常識外な事象は見受けられないが、可能性としては視野に入れている。もちろん可能性だけで考えたらキリがないので、取り敢えず参考まであの中学校で何か不思議なことが無かったかを調べてもらっていた。
「最初に言ったけど本当に意味あるのか?」
「俺も答えたはずだぞ、ヒントになるかもってな」
「・・・・・・ったく、あとでちゃんと教えろよ。んで過去三年間くらいを調べてみたんだが、一応あるにはあった。だけどぶっちゃけ学校の七不思議や都市伝説と変わらんレベルだぞ」
「それでいいんだよ。信憑性があるとかえって嘘くさいからな」
科学的に証明されるような情報は今はいらない。とにかくぶっ飛んだ話の方が俺としてもありがたい。
「もしかしてオカルト研究部にでも入ったのか? なら自分で調べろって言いたくなるが、夏休みのこともあるしそこは我慢するか。まず一つ目なんだが、これは傑作だぞ。何だと思う?」
「ノーヒントで分かるか!」
「ははは、冗談だよ。でも真に関連してるっていったらどうだ?」
「真に? んーカエルしか思い浮かばんな」
「その通り。実は校舎の裏に池があるんだけど、そこに大きなカエルが住み着いていて生徒の一人が飲み込まれてしまったって話があってな、実はこれ去年の話なんだよ」
「飲み込まれた奴はどうなったんだよ?」
「当然ながら実際はそんなことはなくてな。一個下の奴だったんだが、数日間家出してただけって話。だけど最後に目撃されたのがそこの池の前で、でかいカエルの話も昔からあったこともありそんな噂が流れたってのが真相だよ」
まあそんなことだろうとは思った。本当に飲み込まれて行方不明にでもなっていたらい大騒ぎになってるはずだし。しかし一瞬トウラが本当に食っちまったかと想像してしまったよ。実際あの不思議なマジカルな巾着袋も存在しているわけだし、あり得ない話ではないからな。
「ダメとは言わないが出来れば今みたいな種明かしがない話が欲しい。本当にあり得ないような話とか、なんならお前の頭の中を疑われるくらいのレベルの話なら尚いいな」
「まあ今のは不思議でも何でもないからな。でも心配するな、そう思って他のもちゃんと調べてあるから。今度は幽霊騒動の話なんだが、もちろん今もなお真相は明らかになってないやつだぞ」
「おお、いいじゃん。そう言うのを期待してたんだよ」
「OK。騒動があったのは三年前の文化祭。俺達が一年だった時の話な。一個上のクラスで実際に起きた話なんだが・・・・」
中学生の文化祭と言っても模擬店などは禁止だったので、大半のクラスは演劇や合唱などの出し物をするか、展示物で済ませる。その年も例年通り各クラスは出し物か展示発表をした。問題が起こったのは二年のとあるクラスで、そのクラスは習字を展示物として選んだ。テーマは自由で各自一点ずつ展示する流れになったのだが、文化数日前に事件は起こった。
文化祭準備時間という通常授業を削って与えられた時間を使い各自が準備した習字を展示することになった。そのクラスの生徒は全員で三十五人。しかし文化祭の展示物として教室内に張られたのは三十六枚だった。そして一人の生徒が言った。
「どうせ誰かが間違って二枚出したんだろ。書いてある名前見たらすぐ分かるんじゃね?」
その後数人の生徒が一つ一つ作品に書かれた名前を確認する。しかし何度確認しても同じ名前は見当たらず、それどころかクラスの生徒以外の名前も無かった。つまり今まで存在していなかった三十六人目の生徒が突然現れたのだ。段々と教室内に何とも言えぬ異様な空気が流れ始める。
「ちょっと待て、私達が勘違いしてて本当は最初から三十六人だったんじゃないかな・・・・」
一人の女子生徒が恐る恐る発言する。皆がそんなバカな話あるかと思いつつも各々教室に置かれている机を数えてみる。しかし誰が数えても横は六列、縦は窓際だけ五列で残りは六列だった。やはり机は三十五人分しかなかった。
やっぱり何か勘違いしているだけだ。だけどその間違いが見つからない。全員が思っていた通り机が三十五個しかなかったことでホッと胸をなでおろす者もいたが、まだ教室内に平穏な空気は戻っていない。
「な、なあ面倒だけど張った作品を本人が剝がして自分の席に座るってのはどうだ?」
「なら確実性を保つため最初に自分の席に座って一人ひとり剥がしていき、また自分の席に戻った方が良いと思う」
誰もがこの方法なら確実だと思った。しかし・・・・・
「おい嘘だろ!」
「キャー! や、やっぱりこのクラスには何かが・・・」
「ちょっと止めてよね。どうせ誰かの悪戯でしょ」
「でもみんなが見ている前で二枚剥がすのはどう考えても無理だろ!」
全員が見守る中一人ずつ順番に剥がしていったのに、最後の一人が剥がし終わると三十六枚あった展示物は全て無くなっていた。
「意味わかんねーよ。おい誰か説明しろよ」
「説明できるくらいならそいつが犯人よ」
「もうやだあ帰りたいよぅ・・・」
教室内は混乱に陥り泣き出す生徒まで出た。するとここで普段は大人しく寡黙だった一人の女子生徒が席を立ち言う。
「それならこうしよう。小さくてもいいから自分の出席番号を習字の左下に書くの。和山君、あなたはこのクラスの一番最後の三十五番で間違いないよね?」
「あ、ああ」
「なら三十六番は存在しないはず。それで今度は最初みたいに好きなところに張るんじゃなくて、ちゃんと順番に張っていくの。そうすれば前後の人が誰なのかも分かるし、得体のしれない三十六番目は出てこないと思う」
発言した人物が普段人前に出て喋る様なタイプではなかったせいか、クラス中の誰もが彼女のその行動に驚いた。しかし状況はそれどころではなく、全員一致で彼女の提案を実行に移した。
「おお、三十五枚だ」
「やっぱり誰かの悪戯だったんじゃないの?」
「でもどうやって? アタシたち全員お前でそんなことできるかなあ?」
「ったく騒がせやがって。まあいい暇つぶしになったからいいか。どうせ張ったらやることなくなってたわけだし」
「そんなこと言って、あんた男子の中で一番動揺してたじゃん、ウケる」
「な、なんだとー」
「いやでも実際マジヤバかったでしょ。悪戯にしては度が過ぎてるけど、やった奴ある意味尊敬するわー」
「でも望月さんのほうが上だったねー。ホント感謝だよ」
そして文化祭が終わるまで三十六枚目の作品が現れることはなかった。
「とまあこんな感じの話だったんだけど、どう考えても不思議だろ」
「クラス全員が嘘を吐いていないならな。本当にあった話なのか?」
「このクラスに親しい先輩がいたんだけど、その人から詳しく教えてもらったんだから嘘ではないぞ。何よりその当時は学校中で話題になってたから間違いねーよ」
「三十六人目ねえ・・・・幽霊騒動ってことはそう結論付けられたってことだよな。何か根拠みたいなのがあったのか?」
「根拠はないけど、どう考えたっているはずもない三十六人目とか普通幽霊が居たんじゃないかって思うじゃん。実際そういう話にもなってたし」
「だったら実はそのクラスが作った作り話って可能性は?」
「疑り深いなあ。その後誰かが実は嘘でしたって話は聞いたことないぜ。一応SNSも確認してみたけど、その騒動の話は結構上がってたけど、内部告発的なものは見つからなかったぜ」
なら本当に幽霊か何かがいたかもしれないな。三十五人もいるなら一人ぐらい嘘だったとカミングアウトしても良さそうだし。
「因みに一哉が二年の時の教室ってその幽霊騒動があった教室と同じか?」
「いや校舎自体が違ったな。まさかとは思うけど幽霊の仕業だと考えてるのか?」
「そうじゃないけど何となく気になってな。それにしてもやけに具体的だったよな」
「さっき言った先輩から同じ話を何度も聞かされたから覚えちまったんだよ」
「それはご愁傷様なこって。でもいい感じの話だったぞ」
「なら今日はもうやめるか?」
「意味わかんねえ、全部聞くに決まってるだろ」
「決まってるのかよ・・・・まあいい」
その後剛志は自分が調べた逗麻西中のオカルト情報を全て教えてくれた。ポルターガイスト現象や三階の窓の向こう側に人が浮いていたなどの幽霊系の話が多かった。それ以外で一番印象に残ったのは二年の春頃に起きた現象だ。
でかいカエルが住むと言う池の近くの木が三本折られていたというものだ。直径は五十センチ程あった杉の木らしいのだが、切られてたのではなく折られていたのだ。折れていることを発見したのは早朝で、その前の数日間に木が折られるような風は吹いてい。一本ならいざ知らず三本同時となると自然現象とは考えにくくましてやノコギリやチェーンソーを使った形跡はない。つまり他の道具か何かを使って折ったか、もしくは別に何かの力で折ったことになると言うことだ。
流石に生徒の仕業とは考えにくく、学校は警察に被害届を出したものの未だに犯人は捕まっていないらしい。
「どうだ、何か参考になったか?」
「思ったより収穫はあった気がする」
何がどう繋がるとかは今のところ全く分からないが、少なくとも数件、普通ではない何かの力が働いていた可能性があることは分かった。
「なら何よりだ。それでこれからどうするんだ? まさか中学校に行って現場を調べるとは言わないよな?」
それはトウラに任せる予定になっている。今日うちの高校に来たくらいだからまだ調べ始めてはいないと思うが、今聞いた話をトウラに話せば明日以降何かしら見つけてくるかもしれない。
「卒業生でもない俺が入れるわけないだろ。それに調べるってなんだよ、霊能探偵じゃあるまいし」
トウラならノーマークでいつでも好きな時に入れるけどな。それに俺が行ったところで何かを見つけるとか無理だし。
「霊能探偵ねえ。そう言えば一昔前に怪しいい探偵事務所があったっけな。今はもうなくなったみたいだけど」
「それってこの辺にってことか?」
「この辺ではなかったけどそう遠くなかったぜ。厳密に言うと駅を越えて坂を上りきったところの脇道に入ったすぐ先あたり。ほら整形外科病院があるだろ、あの近くにあったんだよ」
そこの病院は俺にも分かる。昔上り棒の天辺から落ちて左足にヒビが入った時そこの病院に通っていた。
’「でも今はないんだろ。んでどう怪しかったんだ?」
「一言で言うと胡散臭い人の集まりみたいだったらしいな。俺は見たことないけど当時はもっぱらの評判だったぜ。まあ気付いたら無くなってたって感じかな。たぶん律樹がいた当時からやってたはずだぞ」
「その頃の行動範囲にあの辺は入ってないからなあ。それに子供が行くような場所でもないしな」
「現実の探偵何て浮気調査とか身辺調査が主な仕事だって聞いたことあるな。そんなところ確かに子供が行くわけねえな。それはそうと俺はそろそろ帰るかな。一応もう少し調べてはみるが俺もそこまで暇じゃないんでね、期待はしない方がいいぞ」
「いや取りえずここまでで大丈夫だから調べるのはここで終わりにしておこう。ありがとうな。もしかしたらまた別なことを頼むかもしれないからそん時はまた頼むぜ」
「そうか? でも当時学校にいなかったお前には知らないことも多いだろうし、いつでも気兼ねなく聞けよ、遠慮は無しだ」
「最初からしてねーし」
「はは、そうだった、昔からお前はそういう奴だったな」
遠慮するくらいなら剛志にここまでのお願いはしていない。こうやって互いに気軽に話せる奴ってやっぱいいよな。




