表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/103

39 未知の

「実際会ってみないことには何とも言えんが可能性は低いな」


「そうね。ワタシが居た世界でも似たような奴はいたけど、その多くは生まれ育った環境が大きく影響してたし、その土井って子も同じだとワタシは思うわ」


「ゲコッ、そんな奴さっさと始末しちゃえー」


「だ、ダメだよトウラ、そんなことしたらお兄ちゃんが捕まっちゃう」


 光男さんを除くメンバーと夕食をとっていた最中、俺は今日起きたことをみんなに話していた。光男さんは外で夕食を済ませてくると連絡があったのでまだ帰ってきてはいない。今のところ彼には夏鈴さんやトウラの正体を話していないのだが、これは孫七さんの提案でもあり俺も光男さんを変な事に巻き込みたくなかったのでその提案を了承していた。


 因みにトウラはお猪口でビールを飲んでおり、中身が空になる度に真が注いでいる。見た目は甲斐甲斐しくペットの世話をしている小学生の構図だが、実際は中身がおっさんのカエルにいいように使われている哀れな少年だったりする。


 まあ本人が好きでやっているみたいだし現状何も言うつもりはないけど、余ろ飲ませすぎないでほしいものだ。


「だが律坊と同じクラスなのだろ? もしその類のものであれば担任である勝道が気付くはずじゃ。あやつが何も言ってこないということはつまりは何も無いってことだろうな」


 勝道というのは大竹先生のことだ。下の名前で呼んでいる辺り俺が考えていたものより二人の付き合いは深いのかもしれない。


「でも先生は見えない人なんでしょ、だったら気付けないんじゃないの?」


「見えないからと言って無力という訳ではない。特にあやつの場合少し会話をしただけで見抜くことが出来る技術を持っているからその可能性は低い」


 技術ねえ・・・それって特別な力とはまた別なものってことなのか?


「それって昨日教えてくれた言霊というやつが関係しているのかしら? 確かあの先生はそれを操ることが出来るからこそ異質な者と対峙できるって言ってたわよね」


 孫七さんの答えに少しモヤモヤしていたところに夏鈴さんが孫七さんに対し質問した。ていうか言霊って何だよ、初耳だぞ。


「それとは違う。あくまでも勝道が今まの経験をもとに習得した完全なる技術的なものじゃ」


「ちょっと待って、言霊ってどういうこと? 先生ってやっぱり特殊な力を持っているの?」


「今日話した時本人から教えてもらわんかったのか?」


 そんな話は一切していなかった。しかし今になって思い返してみると誤魔化されていた感はあった気がする。


「見る力は持っていないとだけ」


「それはそうだろ、実際あやつは見えんのだからな。仕方ない少しだけ教えてやろう。勝道の言葉には自然の摂理や物事の理に反さない範囲で他者に影響を与える力がある。と言っても無理やり何かを命令したりすることは出来ん。あくまでもさり気なく相手を誘導する程度のものだ」


 使い方によってはそれでも十分有用な気がする。

 

 もしかして俺も誘導されてたりしないよな? なんか怖くなってきたんだけど・・・・・


「それって相手には気付かれないものなの?」


「それは相手次第だな。しかし普通の人間の場合ほぼ間違いなく気付くことはできん。逆に、とは少し違うが、強い精神力を持つ相手には効かないとも聞いておるぞ」


「そこはワタシの世界の魔法も同じよ。物理的なものは別として、五感や意識に悪影響を及ぼす魔法に関しては魔力量よりも精神力の強さで左右されるの。因みに私はあまり得意ではないので使わないけど、掛けられたとしても大抵は跳ね返す自信はあるわ」


 俗に言う状態異常・精神攻撃耐性って奴だな。さすが異世界人、期待を裏切らないな。


「理屈は理解したけどまさか精神論とは・・・」


「オレッチの世界ではそんなものは存在しなかったけど、この姿になってこっちの世界に飛ばされた後は嫌でも信じるしかなかったぞー」


 そう言えばトウラが居たところってこの世界がただ反転しただけの世界みたいだし、基本的のはこっちと同じで異能力はないと言ってたっけな。


「僕もトウラと出会う前は同じだったよ。今はトウラや夏鈴お姉ちゃんのおかげで損じることが出来るようになったけど」


「真はトウラと出会ってから家族以外のことで何か変な事に巻き込まれたりしたのか?」


「ううん、特にはないかなあ」


「何もないのが一番じゃ。しかしこれからはそう言ったものに関わる機会が必ず訪れるだろう。その覚悟は出来ているか?」


「その時はきっとトウラが守ってくれるから平気だよ。あっでも僕だってやれることはやるんだからね」


「その気構えがあれば心配はいらんな。それに夏鈴もついておるしのう」


「そのためにマコトをここへ連れてきたのだから任せて」


「オレッチに任せろー。こう見えてもカエル拳法免許皆伝だぞー」


 スゲー弱そうな拳法なことで・・・・・まあ実際高校生四人を撃退した実績もある訳だし口先だけではないのかもな。


 そう言えば昨日、トウラが合流してからの酒盛りの途中で言ってたっけな。真をここに連れてきたのはあの家族から隔離する目的とは別に、出来るだけ真を近くに置いておきたいと。なんでも異質な存在は他の異質な存在を呼び込む可能性があるらしい。まさしくトウラが異質そのものであり、これから起こり得るトラブルに備えるために保護したようだ。


「それよりも土井って子じゃなくて石渡だっけ? そっちの子の方がワタシは気になるわ」


「石渡がですか? 確かに行動は問題ありまくりだけど、でもそれだけだしなあ」


 実は土井のことだけではなく、一哉の中学時代の件から昨日の体育倉庫の件を掻い摘んでだがここに居る全員に話はしてあった。


「ワシもそっちの方が気がかりじゃな。と言っても個人がどうというより事件そのものが気になると言った方がいいかもしれん。律坊の話し振りからして何か裏があると睨んでいるのだろ?」


「まあそうだけど。だからと言って一哉の事件が所謂怪異とかその類が関係しているとかは考えてないよ」


 もしそうだったとしたら俺の手に負えなくなるだろうし、無関係であることを願いたいものだ。


「ワタシもお爺ちゃんの考えと同じよ。それと昨日マコトを連れてきた目的の話を覚えてる?」


「他の異質なものが寄り付く前に保護するって奴でしょ、ちゃんと覚えてますって」


 ついさっき反芻したばかりだしな。


「分かっているならそれでいい。ワタシもこの世界に来て日が浅いから断言はできないけど、事件そのものに関わっていなくても影響を与えてた可能性は十分考えられると思う。しかもそれは一つではなく複数のものによってね」


「複数ですか・・・・イメージ湧かないけど化学反応みたいな感じってこと?」


「上手い例えじゃな。もしくは連鎖反応の場合もあるかもしれん。当然ながらそう滅多に起こることではないが、だからと言って無視できる話でもない。当然ながら単独でも大きな影響を与えることもあるのだが、それだけで説明が出来ない時はやはり他の存在を疑うことがこの業界の常識じゃ」


 常識じゃ、とか言われても足を踏み込んで二日目の俺にとっては未だ非常識なんですが・・・


「じゃあどうすればいいんんです? まさか中学校に忍び込んで形跡を探せとか言わないですよね?」


 そもそも今の時代そう簡単に学校の中に忍び込めるとは思えない。


「今の律樹が現場に行っても何もできないと思うわ。それより今以上に情報収集に力を入れた方が得策よ」


「それは考えてるけど・・・・でも集めたとしてもそっち方面に疎い俺には判断できないと思うんだけどね」


「そのためにワタシやお爺ちゃんがいるんじゃない。なに? もしかしてワタシ達では頼りにならないと言ってるの?」


 フン、と胸を張りながら腕組みをし俺を睨みつけてくる夏鈴さん。本気で怒っているわけではなさそうだが、急いで訂正する。


「そうじゃなくてですね、今の俺じゃ何もできないってことです」


「何もできないことはないわ。現にあなたは動き始めているわけだしね。とにかく律樹は出来るだけ情報を集める。集めた情報はワタシかお爺ちゃんに報告する。取り敢えず今はその二つだけで十分よ」


「それってつまり・・・」


「当然今あなたがやっていることを手助けすると言ってるのよ。最初から言ってるんだけどもしかして理解してなかったの?」


「いや理解してたよ。してたけど何と言うかやろうとしていることに現実味が持てなくて・・・・」


「ははは、そういうところは昔の源六に似ているな。じゃが手伝うのはあくまでもワシらの領域までだ。それ以外のことは余程のことがない限りこちらからは手を出さん。原因はどうあれ根本的なところはガキ同士のいざこざだからな。そこに無関係の大人が割って入る道理はない」


 それはご尤も。俺としても二人にそこまでしてもらうつもりはない。


「何ができるか分かんないけど僕も手伝うよ。ねえトウラもそう考えてるんでしょ?」


「ちっ、面倒だが真が手伝えって言うなら吝かじゃねえぞー」


「二人ともサンキューな。それと夏鈴さんと孫七さんも」


 相談するつもりだけだったのにまさかこんな展開になるとは予想していなかった。

 しかし本当に一哉の事件は怪異的な何かが絡んでいたのだろうか? まあそれをこれから調べていくわけだが、そうなるとアプローチを変える必要があるかもしれないな。


 食事の後自室に戻り数人にメッセージを送る。送った内容は相手によって違うが、その全てはある一つのことに帰結する、はずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ