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17 カエルと少年

 タイミングよく缶ジュースを三つ持った剛志が戻ってきた。三つあると言うことは結局楓紀の分も買って来たってことか。


「呼んではないが聞きたいことはあるな。太田って奴は俺が転校してから逗麻小に転入してきたのか?」


「俺の名前を読んでおいてそれかい! まあいいけどさ。律樹の言う通り石渡は五年の時に引っ越して来たぞ。クラスは違ったけど逆の意味で目立つ奴だったしよく覚えてる」


「目立って立って?」


「んー何ていうか変わってるんだよなアイツ。いきなり『お前は呪われてる』とか『窓の向こうに制服を着た女子高生が浮かんでる』とかたまに変なこと言うんだよ」


 なんだそれ、ただの中二病系霊感少年じゃん。


「女子高生の話僕も聞いたことあるな。確か中一の時じゃなかったか?」


「そうだったか? 他にも似たようなこと言ってたから何時のことなのかは忘れちまったよ。あー、そう言えば律樹と同じ逗麻高じゃね?」


「まさしくその話をしてたところだ。それと石渡は俺と同じクラスだぞ。でも今のところそんな気配は微塵もないんだけどなあ」


 俺や一哉と同じでクラスで浮いている存在と言った方がいいかもしれない。パッと見はオタクっぽい感じもあるが、それ以上にいつもムスッとしているので周りから敬遠されている感じだ。


「いつからかあんま変なこと言わなくなったけな。まあ自分がイタイ人だって気付いただけなのかもしれんが。ほい、仕方ねえから楓紀の分も買ってきてやったぜ、感謝しろよな」


 買ってきた飲み物をそれぞれに手渡し、自分の分を直ぐに開けゴクゴクと飲み始める剛志。なんだかんだ言って楓紀の分まで買ってきたようだ。


「サンキュ。やっぱ女の子と遊びに行きたいんでよ?」


「いらんわ!」


 もったいない。剛志が行かないなら俺が・・・・・という訳にもいかないよな。なんか楓紀はあまり一哉の事件のことを話したくないような感じだったところを無遠慮に聞いたもんだから、俺の評価値は低いと思われるし。


「でもどうせなら僕は『いつもの』が飲みたかったなあ」


 楓紀は渡されたコーラを開け口を付ける前にそんなことを言う。


「要らないなら返せ、俺が飲む。それとぶっちゃけお前のために買ったわけじゃねえ」


「何それ、照れ隠しのつもりかい?」


 ハハハと笑いながらフタを回しコーラを口にする楓紀。それを見ながら俺も剛志にお礼を言ってから飲むと剛志の表情が何か憂いがあるようなものに変わった。


「照れ隠しでもなんでもねえ。実際そのコーラはお前のためじゃなくて自販機の近くにいた子供に買ってあげたやつなんだよ」


「子供? まさかお前その子を誘拐しようと思って・・・」


「んなわけねえだろ!」


 冗談のつもりで言っただけだったのだが、マジトーンで怒られてしまった。


「実は前々からその子のことが気になっててな、ぶっちゃけいうと少し心配でもあった。だから声を掛けるきっかけと思って買ったんだよ。でもまあ逃げられちまったけどな」


「一応聞くが男か女か?」


「十歳前後の男の子だよ。まさか俺のことロリコンだとでも思ったのか?」


「まさか。でも安心した、お前を通報しなくて済んだからな」


「そうだね。でも剛志の理想のタイプは一個上のお姉さんだから僕は最初から心配してなかったよ」


「おい楓紀余計なこと言うな。それと別に年上が好みって訳じゃねえし」


「知ってる。まあこれ以上言うと本気で怒られそうだからもう言わないよ」


 なんかよく分らんけど二人だけが知っている秘密ってやつだな・・・・・・女子か!!


「逃げられたってことは声は掛けたんだよな?」


「それが話し掛けようとしただけで逃げられちまった。俺ってそんなに怖い顔してるかなあ?」


 剛志の場合、怖いと言うよりそのに狐のようなニヤケ面が気色悪いと思ったのかも。


「剛志は怖くないよ。それでどうしてその子が気になったんだい?」


 そうそう、俺もしれが気になってた。まさか友達になりたかったとかそんな理由ではないと思うけど、普通は見知らぬ子に声を掛けようとは思わない。


「最初に見かけたのは去年の夏休みだったんだけど、その時は少し変わった子なのかな? くらいにしか思わなかったけど、何度も見かけるうちに気になってきてね」


「変わって何がどう変わってるんだ?」


「いつも大事そうに虫かごを抱えているんだが・・ああ今日も持ってたぞ。そんでその中には一匹だけカエルが入ってるんだ。たまたまその子の目の前を通りかかった時に見えて、その後も何度か見てるから間違いない」


「クワガタとかカブトムシじゃなくてカエル? まあ好みは色々だしそんなに珍しいことでもないんじゃないか?」


「そうだね。でもカエルって確か冬眠するはずだし年中虫かごに入れているのは少しおかしい気もするね。本人がそのことを知らないのであれば仕方がないとは思うけど、対策とらないと寒さで死んでしまう。流石に冬は見なかったんじゃないかな?」


「いや正月にこの公園で見かけた時も確かにカゴの中にカエルがいたぞ」


「なあそのカエルってパッと見て直ぐ分かるものなのか? 余程近づかない限り分からないような気がするんだが」


 楓紀も同じことを思っていたのか「うんうん」と頷いていた。そして剛志は自分の右手を差し出し握りこぶしを作る。


「これくらいあるから近づかなくても分かるって。でも色がなあ・・・」


「そんなにでっかいのか!? そりゃあ確かに分かるかも。そんで色がどうしたって?」


「なんつーかたまに色が違う時があるんだよ。一番多いのは濃い緑なんだが、たまに赤み帯びていたり、白っぽいときもあったな。ああそうそう、金色に見えた時もあったな」


「何それ、変異種か何かか?」


「少し前ネットニュースで白いオタマジャクシを発見されたっていう記事を見たことあるから、その類なのかもしれないね。そう言えば発見したのは小学生の男の子だったかな」


「じゃあそのオタマジャクシが成長したのがその少年のカエルとか?」


「それは違うと思うよ。発見された場所って九州の方だったのは覚えてるし」


「じゃあ関係なさそうだな。それで変わった子だと言うのは分かったけど、気になったのはそれだけじゃないんだろ?」


 いくら変わったカエルを抱えていたとしても心配する理由にはならない。


「その子っていつ見ても一人でいるんだ。そんでたまに同い年くらいの子供たちに揶揄わられていたりもしてる」


「要はイジメられてるってことなんだろ?」


「イジメって言う程ではない気もするが、まあ小学生にありがちな感じだな。俺が見た限り暴力を振られたり酷い仕打ちをされたりはいてなかったし、精々小バカにされてるくらいだったな」


 イジメの境界線は確かに難しいところがある。だけど被害者がそう感じたら間違いなくそれはイジメなのだ。おそらく剛志もそう感じている部分があって声を掛けようとしたのかもしれない。


「そう言うことかあ。まあでもあまり関わらない方がいいんじゃないか。変質者に間違わられるとは言わんけど、せめて学校に伝えるとかそれくらいにしておくんだな」


 今のところ大事になりそうな感じではなさそうだし、一介の高校生が何か出来るわけでもない。それどころか下手なアドバイスをして事態が悪化する方が怖い。


「それを君が言うのかい?」


 俺のその言葉に対し楓紀が「フッ」と鼻で笑いながら言う。


「どういう意味?」


 俺が聞き返すとヤレヤレといった表情で続ける。


「そのまんまの意味だよ、分からないはずないと思うけどなあ」


 いとも簡単に老若男女問わず何人もたらし込んできたような優顔の、その視線だけが一瞬鋭くなった。


 そんなこと言われなくても当然分かってるよ。楓紀が言いたいのは、


『自分とは無関係なことに首を突っ込んでいるお前が剛志に対してそんなことを言えるのかい?』


 と言うことだろ?


 だけどこれではっきりしたことがある。楓紀はほぼ間違いなく一哉の事件を掘り返されることを嫌がっている。言葉を換えれば警戒しているともいえるだろう。従って彼から有益な情報を得るのは難しい。なので今度は別な人物から話を聞く必要があるのだが、その最有力はやはり同じクラスの石渡だろう。それとSNSの掘り起こしも同時にやらなければならないし、場合によっては小嶋さんに手伝ってもらうことになるかもしれないな。


「二人が何のことを言っているのかよく分らんけど、また今度あの少年を見かけたら同じように話しかけてみるつもりだ。と言っても心配するようなことにはならんと思うぞ。無理やり話を聞き出そうとかじゃなくて、普通に世間話するつもりだ。あとカエルのこともな」


「僕はそれでいいと思うよ。その上で何か助けが必要なら手伝うし、律樹も同じでしょ?」


 最後に「ねっ」と俺に視線を送ってくる。その視線にさっきのような鋭さは無かったが、有無を言わせない何かがあった。


 ああなんか俺、楓紀のこと苦手かも・・・・・



 その後偶然剛志や楓紀の後輩が現れたので、昼過ぎまでそのメンバーと一緒に試合形式で汗を流すことになった。


 そして週が明けた月曜日、ちょっとした事件が学校で起こった。


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